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エンタメ小説家の失敗学 by平山瑞穂

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本連載は小説家の平山瑞穂さんが、自らの身に起こったことを赤裸々に書き綴ったものです。 平山さんは、2004年に『ラス・マンチャス通信』で第16回日本ファンタジーノベル大賞を受賞… もっと読む
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2022年6月の記事一覧

編集者と作家の特異で不思議な関係性――エンタメ小説家の失敗学19 by平山瑞穂

編集者と作家の特異で不思議な関係性――エンタメ小説家の失敗学19 by平山瑞穂

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第4章 編集者に過度に迎合してはならない Ⅰ編集者との特異で不思議な関係性

 一八年間に及ぶ作家生活の中で、文芸誌に短篇を寄稿したとか、アンソロジーに参加したといった細かい仕事も含めれば、かれこれ一五社ほどの出版社と関わりを持ってきた。その間、担当になった編集者の数も、試みに数えてみたらざっと三〇人ほどにまで上り、少し驚いた(オファーはあったもの

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「設計ミスが原因の大手術」は尾を引く――エンタメ小説家の失敗学18 by平山瑞穂

「設計ミスが原因の大手術」は尾を引く――エンタメ小説家の失敗学18 by平山瑞穂

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第3章 作品の設計を怠ってはならない Ⅵ「設計ミスが原因の大手術」は尾を引く

 しかし、そうして結果として広く読まれたこの本が、読者にすんなり支持されたかというと、その点はきわめて微妙だ。事実、ネット上では、手放しで共感を表明してくれるレビューもある一方で、かなりあしざまにけなしているものも少なからず見られた。

 もちろん、万人に受ける作品など

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なぜ売れたのかわからない。いまだに――エンタメ小説家の失敗学17 by平山瑞穂

なぜ売れたのかわからない。いまだに――エンタメ小説家の失敗学17 by平山瑞穂

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第3章 作品の設計を怠ってはならない Ⅴなぜ売れたのかわからない

 発売当初は、目立った動きもなかった。だから僕も、「いつものことだ」と受け流していた。それが、半年ほども過ぎた頃を境に、いきなり火がついたように売れはじめた。最初、四〇〇〇部の重版の連絡を受けたときには、かつがれているのではないかと思ってしまったほどだ。それほどまでに、「重版」とい

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思いがけないヒット――エンタメ小説家の失敗学16 by平山瑞穂

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第3章 作品の設計を怠ってはならない Ⅳトラウマ

 この本(『冥王星パーティ』)を書くことにおいて僕が犯した失敗とは、これに尽きる――作品をあらかじめ入念に設計することを怠り、プロットらしいプロットを組んでいなかったために、執筆中に際限なく物語世界が膨張してしまい、結果として苛酷な原稿削減作業を余儀なくされたこと。

『冥王星パーティ』改題『あの

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過酷な改稿作業――エンタメ小説家の失敗学15 by平山瑞穂

過酷な改稿作業――エンタメ小説家の失敗学15 by平山瑞穂

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第3章 作品の設計を怠ってはならない Ⅲ言われてみれば、なにもかもがもっとも

 一瞬、何を言われているのかわからなかった。三〇〇枚削る――? 三〇〇枚といえば、短めの長篇小説一冊分にも相当する量ではないか。僕にしてみれば、「半分削れ」と言われているのにも等しいほど、理不尽で無理無体なリクエストに感じられた。

 しかし、彼女がそれを求めるのも、当

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