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エンタメ小説家の失敗学 by平山瑞穂

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本連載は小説家の平山瑞穂さんが、自らの身に起こったことを赤裸々に書き綴ったものです。 平山さんは、2004年に『ラス・マンチャス通信』で第16回日本ファンタジーノベル大賞を受賞… もっと読む
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2022年7月の記事一覧

僕はもっと闘うべきだったのではないか――エンタメ小説家の失敗学23 by平山瑞穂

僕はもっと闘うべきだったのではないか――エンタメ小説家の失敗学23 by平山瑞穂

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第4章 編集者に過度に迎合してはならない Ⅴ悔恨

 なお、この作品(『株式会社ハピネス計画』)が今現在もアクティブな状態にあるとはもはや思えないことからいっても、ネタバレに配慮することにもあまり意味はないとは思うが、以下、それに相当する記述があるので、一応注意を促しておく。

 藤原たまりは、過去にいっとき不幸な時期はあり、あれこれと苦労はしてき

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「だったらどうして僕に依頼したのか」――エンタメ小説家の失敗学22 by平山瑞穂

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第4章 編集者に過度に迎合してはならない Ⅳ外されたハシゴ

 しかし、原稿が七、八割まで達した段階でつけられた次の意見には、率直にいって、大きな疑問を感じずにはいられなかった。

「このままだと、けっこう悲惨なバッド・エンディングになるような気がするんですが、あまりそっちの方向に行かないようにしていただくわけにはいきませんでしょうか」

 明瞭に

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「縛りはいっさいない」はずが……――エンタメ小説家の失敗学21 by平山瑞穂

「縛りはいっさいない」はずが……――エンタメ小説家の失敗学21 by平山瑞穂

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第4章 編集者に過度に迎合してはならない Ⅲ「縛りはいっさい設けない」

 そのうちのひとつは、二〇〇七年八月に小学館から書き下ろしとして刊行した五作目の小説、『株式会社ハピネス計画』である。似たような失敗は他の作品でも犯しているのだが、象徴的な例として特にこれを取り上げることにする。

 小学館といえば、長らくコミックの出版社というイメージが強く

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「こうすれば必ず売れる」という鉄則は存在しない――エンタメ小説家の失敗学20 by平山瑞穂

「こうすれば必ず売れる」という鉄則は存在しない――エンタメ小説家の失敗学20 by平山瑞穂

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第4章 編集者に過度に迎合してはならない Ⅱ決定権があるのは作家?

 小説家デビューしてまだ日が浅い頃、「書こうとしている新作について自分はこう考えていたが、新潮社の担当編集者であるGさんに却下されたのであきらめた」「これこれについて、Gさんと意見が合わず、取り下げざるをえなくなった」といったことをブログに縷々綴っていたら、次に打ち合わせで顔を合

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