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【第76回】驚くべき「大絶滅」が現在進行中!

光文社新書

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★現代の日本社会では、多彩な分野の専門家がコンパクトに仕上げた「新書」こそが、最も厳選されたコンテンツといえます。この連載では、高橋昌一郎が「教養」を磨くために必読の新刊「新書」を選び抜いて紹介します!

人類が引き起こす「大絶滅」

約46億年前に「地球」が形成された。約40億年前に最初の「生命」が誕生し、約12億年前に最初の「多細胞生物」が出現した。現在の地球上に生息する生物種は約10億~60億と見積もられ、その数値は過去の地球上に表れた全生物種の1%と推定されている。つまり、これまで地球上に約1,000億~6,000億の生物種が誕生し、その99%が絶滅したとみなされているのである。

生物種の絶滅と新たな種の誕生は常に繰り返されているが、古生物学においては、「絶滅率」(単位時間あたりに絶滅する生物種数)が「種分化率」(単位時間あたりに種分化により誕生する生物種数)を遥かに上回るケースを「大絶滅」と呼ぶ。多細胞生物が出現して以来、これまでに5回の「大絶滅」が生じたことが地質調査や気候変動モデルの分析などから明らかにされている。

第1回の約4億4,400万年前(古生代オルビドス紀末)には、地球寒冷化により全生物種の85%が絶滅した。第2回の約3億7,500万年前(古生代デボン紀末)には80%、第3回の約2億5,200万年前(古生代ペルム紀末)には90%、第4回の約2億年前(中生代三畳紀末)には60%、第5回の約6,500万年前(中生代白亜紀末)には60%が絶滅している。第5回の大絶滅は、小惑星の衝突による大規模気候変動が原因で、恐竜やアンモナイトが絶滅した。

本書の著者・高橋瑞樹氏は1973年生まれ。筑波大学生物資源学類卒業後、東京大学大学院農学生命科学研究科・メンフィス大学大学院生物科学研究科修了。現在はバックネル大学生物学部准教授。専門は保全生態学・動物行動学。多くの論文の他、本書は初めての一般向け新書である。

さて、約1万5,000年前(更新世末期)にも、多くの「メガファウナ(巨大哺乳類)」が絶滅している。この時代までには、立ち上がると体長6メートルになるオオナマケモノ、20センチの長い牙を持つサーベルタイガー、3メートルを超える巨大な角を持つギガンテウスオオツノジカなどが存在していた。

ここで重要なのは、その絶滅の原因が、それまでのように大規模気候変動などによる地球規模の生態系への影響ばかりでなく、人類の狩猟の影響が含まれている点である。アメリカ大陸では、人類がマンモス狩りに用いたクローヴィス石器が発見される地層の時期以降、マンモスの生息数が明白に激減していく。フランスのショーヴェ洞窟には、人類によってさまざまな動物の壁画が描かれているが、その大部分は現在の地球上に存在しない絶滅種である。

2020年の段階で、地球上のコンクリートやプラスチックや金属加工品といった「人工物」の総重量が1兆トンを超え、「生物」の総重量を上回ったという。これは、20世紀初頭には「生物」の3%に満たなかった「人工物」が、指数関数的に増加した結果である。2040年の「人工物」は、さらに現在の約2倍になると予測されている。地球上が「人工物」で埋め尽くされていく……。

本書で最も驚かされたのは、現在の地球上で「毎日150種の生物が絶滅している」という国連生物多様性条約事務局の推定である。つまり、実は6度目の大絶滅が現在進行中であり、その原因は「自然」による淘汰ではなく、「人工物」で地球上を埋め尽くし、戦争や環境汚染によって地球を破壊し続ける全生物種の中のたった一種の生物すなわち「人類」にあるというわけである!


本書のハイライト

大絶滅は、自然界の生きものだけでなく私たち人間の生活にも悪影響を与えます。なぜなら人間も地球上の生きものたちの一員として、他の多くの生きものがつくる「生きものの輪」に支えられながら生きているからです。私たちは食べ物をはじめ、生活に必要な多くのものを自然界から得て生活しています。現在進行中の大絶滅は、人間の未来を考えるうえでも避けては通れない、解決しなければならない課題なのです(p. iv)。

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著者プロフィール

高橋昌一郎/たかはししょういちろう 國學院大學教授。専門は論理学・科学哲学。著書は『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』『フォン・ノイマンの哲学』『ゲーデルの哲学』『20世紀論争史』『自己分析論』『反オカルト論』『愛の論理学』『東大生の論理』『小林秀雄の哲学』『哲学ディベート』『ノイマン・ゲーデル・チューリング』『科学哲学のすすめ』など、多数。


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