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オリーブの丘で待ってます|パリッコの「つつまし酒」#187

そんなにだったの!?

 関東地方を中心に展開する、「オリーブの丘」というイタリアンチェーンがあります。
「ある」ということはずいぶん前から知っていました。ところが失礼ながら、今まで一度も、興味を持ったことはなかったんです。すいません……。だって、あまり駅前にあるイメージがなくて、用事で車でちょっと遠出をしたときなどに、街道沿いに見かけ、「あ、あるな〜」くらいの存在感だったんすもん。僕にとって。それに、気軽に飲めるイタリアンチェーンだったら、誰もが知る「サイゼリヤ」があるじゃないですか。
 ところが先日、知人がSNSに、そのメニューの一部をアップしていたんですね。そしたらまぁ、「え、オリーブの丘ってそんなに!?」っていう価格設定で。しかも、当然ながら見慣れたサイゼリヤとはまた違った雰囲気のラインナップで、どれもこれも美味しそう! 行きたい! と思って調べたら、我が家からそこまで遠くない場所に「ほう店」があるじゃないですか。保谷と言いつつ最寄りは西武新宿線の東伏見駅っぽいけど、とにかくぜんぜん行ける行ける。
 翌日には、店内にいましたよ、僕。もちろん、オリーブの丘の。

「オリーブの丘」

 午後のアイドルタイムで、人のまばらな店内。さっそく案内されたボックス席に着く。さっそくメニュー表を開く。わくわくわく。するとやっぱりこれがまぁ、どれもこれも驚くほどにリーズナブルなんです。

本当に
こんな値段で
いいの!?

 前菜のページにずらりと並ぶ、税込み319円の一品料理、どれもいいな〜。え! 「ムール貝の白ワイン蒸し」、写真を見る限りずいぶんボリュームあるように見えるけど、これで429円!? そしてそして、え〜! 期間限定の「銀鱈のトマト煮込み リヴォルノ風」、こんな凝った料理が374円!?
 いや〜、たまらんすな、こりゃ…… 。

ムール貝に驚き

 実は今日は、朝も昼も食べずにきっちりお腹を空かせてまいりました。というのは、せっかくだからこの豊富なメニューのなかから、自分なりのコース料理を組み立てて、初めてのオリーブの丘、略して「オリ丘」を心ゆくまで満喫してやろうという魂胆なわけです。
 まぁ、イタリアンのコースというと、食前酒である「アペリティーボ」から始まり、「ストゥッツィーノ」「アンティパスト」「プリモ・ピアット」……などなど、厳密には相当な品数があるようですが、そもそもその名前を言われてもなんのことだかよくわからない。なので今日は、前菜〜魚料理〜肉料理〜いければパスタかリゾットなどの主食〜デザート、くらいのシンプルな構成でいってみましょう。
 なにはともあれ、まずは一杯。

「ハウスワイン白(コルテフェデリコ ビアンコ)110ml」(209円)

 キリッとよく冷えた白ワインを飲みつつ、まずは前菜のページを検討していると、メニューのタッチパネルに「スープバーがご自由にご利用いただけます」の文字。え? いいの〜? 

コンソメスープ

 ベーコンっぽい肉と刻み玉ねぎの入ったコンソメスープ。初めにお腹を温めつつ、しかも前菜が届くまでの間のワインのつまみにもなるという、心憎いサービスですね〜。
 そしてあれこれ悩み、どうしても絞りきれずに選んだ前菜は、「フィレンツェ名物 鶏レバーパテのブルスケッタ」と「ムール貝の白ワイン蒸し」の2種類。

「フィレンツェ名物 鶏レバーパテのブルスケッタ」(319円)と「ムール貝の白ワイン蒸し」(429円)

 さっそく運ばれてきたその2品に、いきなりテンション上がりまくり! メニューの写真と比べて、さてどんなもんかな〜なんて、ちょっと疑ってしまっていたところもあるムール貝の、この盛り盛りっぷり! オリ丘、半端ないって!

数える気もおきないくらい入ってる

 ぷりぷりのムール貝の海の香りと強めの塩気。その余韻を感じながら飲む白ワインの爽やかさ。なんて優雅な午後なんだ。とても保谷にいるとは思えないぞ。
 鶏レバーも、こってりとした旨味と甘味にオリーブオイル風味が加わり、それをたっぷりガーリックバターの染み込んだバゲットと合わせちゃうんだから、そりゃあもう罪深い味わいです。すっごく本格的ですね、オリ丘の料理。あらためて、この値段は信じられない。

次回も絶対頼むやつ

巨大スペアリブ登場

「ハウスワイン デキャンタ赤(コルテフェデリコ ロッソ)440ml」(759円)

 さてさて、白を飲みきったところで、ワインを赤のデキャンタに切り替え、続いて魚料理もいってみましょう。ここはもちろん、期間限定の「銀鱈のトマト煮込み リヴォルノ風」で!

これが……374円!?

 驚きましたよ。銀鱈。香ばしく揚げられた大ぶりの切り身が2切れ入って、そこにたっぷり野菜のトマトソースがかかっていて、仕上げに効かせてあるローズマリー風味がたまらないんだ。ふだんのちょい飲みだったら、これとワインだけでもいいくらいですよ。もちろん、そのうまいソースはきっちりとぬぐいきって食べないと後悔するに決まってるので、フォカッチャをいただいて。

「たっぷりガーリックのフォカッチャ」(286円)

 続いて肉料理だ。これまた、ハンバーグにチキンソテーにビーフシチューにと、リーズナブルにいろいろ揃ってますね〜。そのなかから、今日は最高級品いっちゃおうかな。よし、「ほろほろスペアリブ ~モデナ風~」だ!
 ……って、最高級ったって税込で869円なんですけどね。

「ほろほろスペアリブ ~モデナ風~」(869円)

 ところがこれ、届いてみていちばん驚いた。見てくださいよこの肉の標高! もはや巨大隕石!

食べごたえ満点

 でまた、このスペアリブが、絶品にもほどがある! こんなにもばかでかいくせして、包丁がすっと入ってしまう。そこに甘酸っぱいバルサミコベースのソースを絡めて食べると、とろりと柔らかく火が入っていながら、僕の大好きな豚肉の旨味がまったく抜けていないんです。ちょっと今、目の前で起きていることが信じられません。
 それにさ、スペアリブといったら、骨×肉というイメージが強いじゃないですか。でもね、オリーブの丘のスペアリブ、ほぼ肉なの! たらふく肉を堪能して、お皿の上を見たら、細〜い骨が3本、カラ〜ンと残ってるだけなの!

食べ終わりの写真で失礼します

 予想を超えた巨大肉を食べきり、もはや満腹。こりゃあパスタだリゾットだは無理だな。せめて、デザートだけでも食べて帰るかと、選んだのは「2種ジェラート~バニラ&ピスタチオ~」に「蜂蜜ナッツ」のトッピング。

「2種ジェラート~バニラ&ピスタチオ~」(264円)「蜂蜜ナッツ」(99円)
ときめく!

 あ〜、いいな。たまにはデザートで締めるのも。ふだんあまり甘いものを食べないので、蜂蜜ナッツの甘さはちょっと過剰だったかもしれないけど、でもこの見た目がかわいいからよし。
 と、大満足してお会計をすると、今日はあきらかにちょっとやりすぎてしまいましたね。税込み合計、3608円。ぜんぜん“つつまし”くない。けれどもですよ、同じ内容をそこらの個人店で食べようと思えば、その倍くらいはかかってもおかしくないし、そもそも料理がめちゃくちゃ美味しいからね。つーか、もっと気軽に飲むなら、それこそ1000円台でもぜんぜん満足できそうだし。あらためて、おそれいりました。
 残念ながらまだ関東地方にしか店舗がないようですが、全国のみなさまも、お近くにお立ち寄りの際は是非。
 私、オリーブの丘で待ってますので。


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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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