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世界から最も受け入れられている日本人

日本人が知らない「パスポートを持つこと」の意味

wasabiです。
私は2015年からドイツ・ベルリンに移住して以来、ブロガーとして「海外移住する方法」を軸としたトピックを発信してきました。

その中でも、最も読まれているのはズバリ「ビザ」の話です。
海外移住をするとなれば、まず必要になるのがその国で滞在するための「資格」ですよね。

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ビザ以外には、継続的に現地で生活するために必要な「仕事」も読者の関心は非常に高いです。

私はまず、ワーキングホリデー制度(通称ワーホリ)を利用してドイツに渡航し、1年間をワーホリのビザで過ごしました。

この制度というのは、日本と相手国との2国間の協定に基づいて、18歳~30歳の青年が相手国の文化を理解する目的で、その間の滞在資金を補うために就労することを認めるものです。

この制度は日本人だけが海外に行けるというものではなく、協定を結んでいる国の青年も日本にワーホリで渡航することができます。

日本が協定を結んでいるのは、イギリスやオーストラリア、ポルトガル、私が現在滞在しているドイツを含め全24か国です。(参照:JAWHM https://www.jawhm.or.jp/visa/visa_top.html)

ドイツの場合、ワーホリは1年間有効ですので、それが切れるタイミングで私は「フリーランスビザ」に切り替えを行いました。この手続きは現地で完結するため、ビザ更新のために日本に帰る必要はなくそのままシームレスにドイツに滞在することができました。フリーランスビザに必要な条件はここでは省略しますが、私のブログで分かりやすく紹介しているので興味のある方はご覧ください。https://wsbi.net/freelance_visa_issuances

(ただし、私のブログは情報が古くなっていますので、概要をつかむための参考程度と捉えてください。)

フリーランスビザを初めて取得した時は、1年間の滞在資格を得ることができました。その1年後はまた現地で更新をして3年間の滞在資格を得ました。ドイツにはフリーランスビザという更新が可能なビザが存在していたことも、ヨーロッパに長く住みたいと考えていた私がドイツを移住先として選んだ理由です。

前置きが長くなりましたが、実は今年2020年の年末に私の3年間のフリーランスビザが切れることになっており、また更新の時期がやってきます。

海外に住んだことのある方なら分かると思いますが、ビザの更新というのは非常にストレスフルです。更新には条件があって、ドイツであればきちんと継続的に売上を出しているかとか、税金をきちんと納めているかとか、ドイツ語能力がきちんと身についているかどうかなど、様々な要因とその時の運によって今後滞在できるのかどうかが決まります。ドイツのビザ申請は、その時の担当官によって裁量が大きく左右されるというのは有名な話で、日本のお役所仕事の常識とはかけ離れている部分があるのも不安材料です。

私は過去に運に恵まれず、きちんと条件を満たしていたにもかかわらず担当官の裁量でビザの更新を4回失敗するという経験をしているため、なおさら「ビザ更新」という言葉には敏感で、その単語を聞くたびに苦い思い出が蘇ります。

以前、在独の日本人の方やこれからビザを申請する方からたくさんの相談メールや問い合わせがブログに殺到したことがあり、それだけ多くの方がビザについて心配しているのだなぁと感じています。

海外に住む日本人の間では、ある意味ビザが最大の関心事になっている気さえします。海外在住の日本人と会うと、必ずと言っていいほどビザの話で盛り上がるからです。

でも、海外で出会う日本人以外の人たちにビザの話をすると反応が全然違って面白いのです。

ある日、私がビザのことで悩んでいるという話をイラン人の友人にしたところ、彼は不思議そうな顔をしてこう答えました。

「でも、君は日本人だろう? Japan is very good!」

どうして日本人はどこにでも行ける権利があるのにビザのことなど気にするのか? という態度なのです。

同じことをインド人の友人にした時も「君は日本のパスポートを持っているんだから、何が問題なのか?」と言うのです。

また、インド人、ポルトガル人、ロシア人、ブラジル人、日本人の私というメンツで飲んでいる時に、ロシア人にも同じことを言われました。

そこで興味深かったのは、インド人とロシア人が自分たちの政府が腐敗しているという話題で仲良くなっていたことです。

「君の国は、あのプーチンだもんな。君がビザに対してそういう考え方で、Yukoにそう言う理由がよ〜く分かるよ。僕も同じ意見だ」と。

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話を聞いていると、彼らがそもそも「政府は信用ならない」と考えていることがよく伝わってきました。その時、私が気がついたのは「日本は平和なのだ」ということです。

他人の国にお邪魔するためには、きちんと手続きを踏んで「許可」を得る。

日本人にとって「当たり前」と思われるこの「常識」は、私が日本というある程度安全が担保された社会を「信用」してきたからこそ成り立っている習慣なのだということに。

もちろん日本にだって問題は山積みで、「政府を信用できるかどうか」についても、言いたいことがたくさんあります。

でも、ロシアでは知らない間に人が消えるし、インドでは権力があれば人をひき殺したセレブだって無罪になる。毎分レイプが発生しているのに多くは闇に消え去る。夜中に歩くなんてもってのほか。これは全て、「ニュースで見た話」ではなくて「自分の知り合いにこんなことがあった」という距離感なのです。このように日本のリアリティとは全く異なる世界がたくさんあるのです。

そんな「自分の国のヤバさ自慢」を披露するみんなの横で、私はいかに自分が安全で恵まれた国の出身なのかを痛感しました。ここには書けないほど、もっと痛烈な話が飛び交っていました。仮に日本で同じことを飲み会の席で話したら、確実に全員が閉口してしまうようなことです。それを、肩に虫が止まったくらいの感覚で笑いながら話しているのです。

だから、みんなこんな自国から離れたいがために「ビザ」を得るのです。私のように「海外移住してみたい」ではなくて「出ないとヤバい」から必死になっている人がとても多いのです。

彼らにとって、ビザを取るということはイコール「自由」と「安全」を得ることなのです。ビザに対する考え方が、日本人のそれとはまるで違います。

彼らは自国のパスポートだけで行ける国がものすごく限られています。だから、ヨーロッパのどこかの国でビザを取得し、そこを拠点に他の国々へアクセスしようという考え方なのです。

だから、彼らからすると日本という安全な国から来た私が他の国のビザを欲しがっていることが不思議で仕方がないのだそうです。

各国のパスポートの他国へのアクセス度を測定するHenley&Partnersの「パスポートインデックス」で日本は昨年も1位を取得しました。(https://www.henleypassportindex.com/global-ranking)

「世界最強のパスポート」でありながら、日本人のパスポート保有率は約23%、つまり4人に1人しかパスポートを持っていないことになります。

日本は世界平和指数を見ても、163か国中9位という安全性の高さを記録しています。経済的には弱くなってきていますが、それでもまだ差し迫った危機が生じているわけではないという状況を、この数字は示しているのではないでしょうか。

しかし、現在の世の中の流れはとても早く、私がこのように記事で書いている間にも情勢は刻々と変化しています。その証拠に外務省が平成30年に出したデータによると平成27年以降パスポート発行率は増加傾向にあり、世界の動きに敏感な日本人はどんどん外に出ています。(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000447940.pdf)

日本以外の国々には、見知らぬ土地で「ビザ」を取得し、場合によっては「国籍」まで変えるというものすごく面倒くさいプロセスを踏まなければ、自由と安全が得られない人たちがたくさんいます。彼らにとっては、それができてはじめてビジネスや自己投資など自らの可能性を広げる行動ができるのです。

かたや、日本人は日本人であるというだけで全員日本のパスポートを得ることができる。厳しい環境におかれた人々が何年も奮闘した結果得られるような権利が、すでにすべて揃っているのです。

これが一体どういうことなのか、その真の意味を理解できるかどうかで、大きく差がつくでしょう。なぜかというと、それは世界における日本人のポジションを正確に認識することと同じだからです。グローバル化を生きるということは、そういうことなのです。

日本のパスポートを持つということはどういうことなのか。それをこの記事1つで書くには到底文字数が足りません。なぜなら、日本のパスポートはそれほど広大な可能性を持っているから。

だから私は自分の経験から、これだけ恵まれているにもかかわらずパスポートを持たないことがいかにもったいないかを伝えるために、この連載を書いていこうと思っています。

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