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【第15回】「ポスト・コロナ」の世界はどうなるのか?

■膨大な情報に流されて自己を見失っていませんか?
■デマやフェイクニュースに騙されていませんか?
■自分の頭で論理的・科学的に考えていますか?
★現代の日本社会では、多彩な分野の専門家がコンパクトに仕上げた「新書」こそが、最も厳選されたコンテンツといえます。この連載では、哲学者・高橋昌一郎が「教養」を磨くために必読の新刊「新書」を選び抜いて紹介します!

国連で採択された「持続可能な成長目標」

西暦元年の世界人口は3億~4億人にすぎなかったが、20世紀初頭に4倍の16億人となり、20世紀末には60億人にまで膨れ上がった。2020年時点の世界人口は78億人、10年後の2030年には10%増の85億人と推計される。

1900年かけて約4倍になった世界人口が、最近の100年で、そのまた約4倍と爆発的に増加したのである。1970年、この状況に危機感を抱いた世界屈指のシンクタンク「ローマ・クラブ」は、マサチューセッツ工科大学の環境学者ドネラ・メドウズに「人類の未来」をシナリオ化する研究を委託した。

彼女は、多彩な分野の専門家17名によるプロジェクトチームを結成し、「人口・農業・工業・汚染・天然資源」の5つの要素を状態変数とする世界モデルを構築した。そのモデルに基づくコンピュータ・シミュレーションを2年間繰り返し、結果を1972年の『成長の限界:ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』に発表した。彼女の結論は「100年以内に地球上の成長は限界点に到達するだろう。最も生じる可能性の高い帰結は、世界人口と工業力が突発的に制御不可能な減少に転じることである」という悲観的なものだった。

その後もメドウズらは、新たな情報を加えてシミュレーションを繰り返し、最新版の2005年版『成長の限界:人類の選択』には、11種類の未来のシナリオが示されている。その中には、2030年までに成長の限界点を迎え、資源供給が行き詰まり、経済破綻と人口減少が始まるというシナリオもある!

2015年9月、国連は「持続可能な成長目標(SDGs: Sustainable Development Goals)」を掲げた。ここで重要なのは、この「SDGs」(「エス・ディー・ジーズ」と読む)が、国連加盟の193の国と地域すべての賛同によって採択された「国際目標」だという点である。その詳細かつ明快な解説書が本書である。

本書の著者・蟹江憲史氏は、1969年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、同大学大学院政策・メディア研究科博士課程修了。北九州市立大学講師、東京工業大学准教授などを経て、現在は、慶應義塾大学環境情報学部教授。専門は、国際関係論・環境政策学。著書に『地球環境外交と国内政策』(慶應義塾大学出版会)や『環境政治学入門』(丸善)などがある。

さて、「SDGs」には17の「目標(Goals)」が掲げられている。貧困・飢餓・健康と福祉・教育・ジェンダー平等・安全な水とトイレ・エネルギー・働きがいと経済成長・産業と技術革新・不平等の是正・都市と居住・消費と生産・気候変動・海洋生態系・陸上生態系・平和と公正・パートナーシップ……。

これらの「目標」は、2030年までに169の「ターゲット(target)」を具体化すれば達成できるという。ターゲット間には、「農業従事者の所得拡大」と「化学物質の削減」のように、両立が困難に思える組合せも見られるが、その改善策も世界中で研究が進められているそうで、実に壮大なプランである。

本書で最も驚かされたのは、新型コロナウイルスによるパンデミックが「SDGs」に貢献する面もあるという点だ。たとえば、観光客のゴンドラが激減したヴェネツィアでは、水路が透明になり水底が見えるようになった。人間社会と経済は大打撃を受けたが、地球の環境は改善されているというわけである!


本書のハイライト

個別の現象のように見える課題が、世界各地で固有の文化や地域的要素にのっとりながら現れる。気候変動、エネルギー、ジェンダー……根っこは同じことでも、違う時間や場所で違うかたちで、しかし同じように複雑にからみあいながら、現われてくる。逆から見れば、現象としての現れ方に差はあっても、課題の本質は同じといった問題が、世界各地で同時多発的に発生する。(pp. 7-8)

第14回はこちら↓

著者プロフィール

高橋昌一郎_近影

高橋昌一郎/たかはししょういちろう 國學院大學教授。専門は論理学・科学哲学。著書は『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』『ゲーデルの哲学』『自己分析論』『反オカルト論』『愛の論理学』『東大生の論理』『小林秀雄の哲学』『哲学ディベート』『ノイマン・ゲーデル・チューリング』『科学哲学のすすめ』など、多数。

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