見出し画像

おおたとしまさが全中学受験親に贈るファイナルアンサー! |『なぜ中学受験するのか?』本文公開①

こんにちは。日に日に気温が下がってきて、冬はもうすぐそこですね。受験生を持つ親御さんにとっては緊張感が一層高まる季節がやってきます。特に中学受験は、主役がまだまだ「子ども」な我が子ゆえ、親の心配は計り知れません。そんな受験親&プレ受験親にお贈りする11月の新刊が、教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏による”中学受験本の決定版”とも言える本書です。迷ったときにこそ「なぜ中学受験するのか?」という根本の問いに立ち戻ることで、我が子の受験に対して取るべきスタンスがはっきりするのです。本記事では「はじめに」および詳細な「目次」を全文公開します。

はじめに


 中学受験のメリットとデメリットは何かと聞かれることは多い。申し訳ないが、私の答えはいつも、にべもない。「中学受験の何をメリットと感じるか、何をデメリットと感じるかにそのひとの教育観、幸福観、人生観などの価値観が表れる」である。結婚のメリットとデメリットを尋ねられても一般論としては答えようがないのと同じだ。

 本書が示すのは、あくまでも私の中学受験観である。「私の」とは言っても、これまで中学受験の世界をさまざまな角度から覗いてきた経験から形成されたもので、中学受験を、親子にとっての人間的な成長をもたらす機会ととらえている。一部の〝勝ち組〟だけでなく、誰にとっても得られるものがある。いまどきの言葉を使えば、「中学受験を通して非認知能力を伸ばす」という言い回しも可能だ。それを本書では四つの章で順番に説明していく。

 前半二章は、私立中高一貫校に通う意味について。言い換えれば、中学入試本番後に得られるものの価値である。それをさらに中高一貫教育の意味と、私学に通う意味とに分けて、第一章と第二章の各章で論じる。結論を言ってしまえば、中高一貫校に通う意味は、失敗と葛藤に満ちた豊かな思春期を謳歌できることである。

 後半二章は、中学受験勉強の最中に得られるものについて。つまり、中学入試本番前に得られるものの価値だ。それをさらに、子ども自身の成長と親子関係の成長に分けて、第三章と第四章の各章で論じる。ひと言で言ってしまえば、中学受験勉強の日々は親子にとって、ハプニング連続のスリリングな大冒険である。

 すでに中学受験勉強の日々が始まっており、「なんでこんなに苦しい日々を送らなければいけないの!」と感じているひとは、第三章から読み始めてもらっても構わない。

 子どもたちは、もって生まれたその子らしさを核としながら、そこに、中学受験勉強の約三年間で家庭の文化を染み込ませ、さらに、家庭では到底授けられない壮大な文化を、私立中高一貫校での六年間で染み込ませる。家庭と学校の文化を携えて、子どもは巣立つ。目先のテストの点数に一喜一憂すべきではないといくら言われても、この全体像が見えていないと、親はどうしても短絡的になる。

 中学受験に関する相談を受けていると、「なぜ中学受験するのか?」に立ち戻ることで解決の方針が見えてくる場合は少なくない。逆に言えば、なぜ中学受験することにしたのかを忘れてしまうから、あるいはそもそもその問いを突き詰めて考えていなかったからこそ、中学受験という世界に口を広げる魔界に吸い込まれてしまうのだ。

 本書の目的は、中学受験の有益性を強調することではない。「なぜ中学受験するのか?」という問いを通して、(一)昨今の教育事情を俯瞰し(二)教育という営みに関する理解を深め、(三)読者自身の教育観、幸福観、人生観などの価値観を明らかにすることである。

 残念ながら、本書を読んでも偏差値を上げる方法やお得な進路がわかるわけではない。でも、できるだけ高い視点から中学受験の意義をとらえ胸に刻み込んでおけば、不安に苛まれたときにも慌てずに、自分たち親子にとっての本質的な優先順位を思い出し、巷の中学受験本をいくら読んでも見つけられない、自分たちだけの解決策を見出すことができるようになるはずだ。結果として、子どもの最高のパフォーマンスが引き出される可能性はある。

 教育に関する選択に、正解はない。つまり、不正解もない。大切なのは、自分の選択の意味を正しく理解することだ。

画像1

目次


はじめに

第 一 章  12歳でやるか15歳でやるか 〜中高一貫教育の意味
コペル君体験はどこへ?
目先の一点、二点にこだわらなくていい
超進学校が幾何と古典をやる理由
私立中高一貫校躍進の背景
私立に通える学費が重要なのではない
共学校が圧倒的有利だった
筑駒は『ドラゴン桜』ではない
東大への近道は学校に行かないこと!?
〝いい大学〟に行けるのはおまけ
一四歳からは哲学する時期
高校受験は世界的に見て珍しい
「六・三・三」は妥協策だった
反抗期と高校受験の両立
薄れていく反抗期
ゆとり教育としての中高一貫校
都が中高一貫教育の効果にお墨付き
トップ校が軒並み中高一貫校化
公立中高一貫校は民業圧迫か?
高校募集を始める私立校が増えている
五歳差の先輩から学べること
お互いを鏡にして成長を自覚する
何歳まで遊びを優先すべきなのか
中学受験生の遊び時間は一五分しか減っていない
あばれはっちゃくか、コペル君か


Column❶サッカーと中学受験の両立、本当に可能でしょうか?
何かに集中して取り組む能力は必ずスライドする
不安を子どもにぶつけちゃうのは親の未熟さ

 
第 二 章 シラバスよりハビトゥス 〜私学に通う意味
学校に特有の非認知能力のブレンド
教科とは巨人の肩に乗ること
高校「普通科」はフツーじゃない
各教科の視点から世の中を見る
虫の目、鳥の目、魚の目を良くする
フリーズドライを戻すのが教員の役割
日本人の教養レベルを爆上げするには?
カリキュラムでは学校の違いは出ない
大切なのはシラバスよりハビトゥス
自分がすごす環境のにおいを選ぶ
教員が異動しないのも私学の魅力
正統としての公立学校、異端としての私学
ご当地名門校があるなら中学受験は不要
私学の魅力はブレない教育
学校とは問いを授かるところ
創立者の伝記と学校の沿革は要チェック
校長の佇まいと国語の課題文を見る
オンライン学校説明会の見所は?
思想の違いをコロナ禍が可視化した
コロナ禍で中学受験者が増えた理由
「私立にはお金がある」は間違い
「私学には多様性がない」は本当か?
常にアウェーな私学の生徒
学力が拮抗しているからこその多様性
「腐っても旧帝大」の悪循環
子どもに損得勘定を刷り込むな
ビジネスでの成功と人生の幸せは別物
思春期に自分の価値観の土台をつくる
ハビトゥスはプライスレス

Column❷学校選びのポイントって、ちょっとだけでもないですか?
学校って燻製器みたいなもんなんですよね
スキル偏重教育は大人たちの不安の裏返し

 
第 三 章  バットを持つか鉛筆を持つか〜塾で学ぶ意味 
良薬にも毒にもなる
非認知能力とは何か?
中学受験で非認知能力が伸びる!?
テストの点には表れない勉強の成果
バットを握るか鉛筆を握るか
教育の受益者は被教育者のみではない
学歴は新社会の通行手形だった
メリトクラシーにご用心
人材の促成栽培と学歴信仰
いまより過酷な「乱塾時代」
日能研の東京進出とサピックスの誕生
中学入試はむしろ緩和している
「予習シリーズ」の醍醐味
復習主義全盛時代へ
関西の中学受験はさらに過酷
中学受験勉強が教育虐待を招く構造
親の受験では断じてない
受験テクニック本はダイエット本と同じ
中学受験は「課金ゲーム」なのか?
勉強方法の試行錯誤こそ財産
目先の偏差値のために失うもの
親こそ正解主義に囚われている
中学受験は現代社会の大冒険だ
トラブルを成長の糧にする
すべては笑利の瞬間のために
無味乾燥な知識の詰め込みではない
大学入試改革も就活も朝飯前!?
小学生と中学生の学び方の違い
あえて面倒くさい思考上の創意工夫
中学受験で養う知恵と度胸

Column❸塾に通わない受験、気をつけるべき点はどこですか?
塾って、メンタルケアという機能が重要なんですよ
高校入試の問題と中学入試の問題を比べればいい

 
第 四 章 偏差値よりも生きる指針 〜親子で取り組む意味
入試本番前日に問題を盗み見たいか?
悪魔の誘惑がもたらす教訓
親の未熟さがあぶり出される
親子で正しさを語り合う
大切なのは「答え」よりも「問い」
損得勘定を超えた価値
不安や葛藤から教訓を抽出する
東大・京大・早慶以外は問題外!?
ソフトな洗脳
第一志望校合格者の不安
わが子の学校を誇る親
受験エリートの落とし穴
親が頑張る中学受験の弊害
プライドは高いが自己肯定感は低い
遅れてやってくる回り道
迷ったら引き算
正解は子どもが知っている
勇気ある撤退を決断すべきとき
ご縁を待つのも親の役目
「待つ」とは「もう焦らない」と決めること
偽りのやる気
親子の励ましに言葉はいらない
大冒険で親子が見つける宝とは?
結局のところ、親は無力である
事後的に正解をつくり出す力
ほろ苦さすら宝物

Column❹大嫌いな反復練習、どう克服させればよいでしょうか?
息子の中学受験で夫が人生を考え直し始めてます
たぶんお母さん、答え知ってますよね?

おわりに

著者紹介

おおたとしまさ/1973年10月14日、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。一九九七年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、いい学校とは何か、いい教育とは何かをテーマに教育現場のリアルを描き続けている。新聞・雑誌・Webへのコメント掲載、メディア出演、講演多数。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。著書は『名門校とは何か?』、『ルポ塾歴社会』、『ルポ教育虐待』、『中学受験「必笑法」』、『正解がない時代の親たちへ』など70冊以上。


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

光文社新書ではTwitterで毎日情報を発信しています。ぜひフォローしてみてください!