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2021年の日本では「21万人」学校に行けていない子どもがいることを知ってますか? 『不登校・ひきこもり急増』本文公開

光文社新書
コロナ禍を機に不登校・ひきこもりの子どもが急増――誰もが想像できる事態が「いま、ここ」で起きています。
光文社新書から11月17日に刊行された『不登校・ひきこもり急増 コロナショックの支援の現場から』では、近年増加の一途をたどる不登校・ひきこもりの子どもたちがコロナ禍を境にさらに増えてしまっている現状を報告するとともに、ライフスタイルが変化せざるを得ない中、支援団体が現場でどのような工夫を講じているのかをまとめています。さらには、ひとつの有効な手段である「アウトリーチ支援」についても詳述。
発売に際して、本書を貫く問題意識がつづられている、冒頭の「はじめに」を公開いたします。
(新書編集部 高橋)

はじめに

 今、不登校やひきこもりの児童生徒がかつてないほどに急増しています。パンデミック、新型コロナウイルスの大流行が、子どもたちに大きな打撃を与えたからです。不登校・ひきこもりの〝コロナショック〟です。

 それは2020年2月27日、当時の安倍晋三首相が、新型コロナウイルス感染症対策本部で、全国の小中学校と高校、特別支援学校に、臨時休校を要請する考えを表明したことに始まりました。これを受け、3月2日から全国の学校の多くが、突然の休校を余儀なくされたのです。その後、4月7日に東京都など7都府県で史上初の緊急事態宣言が発令されたのを皮切りに、宣言は全国に拡大され、最終的に宣言が全て解除されたのは、5月25日でした。
 およそ3カ月という長期間にわたる休校が首都圏では続いたのです。日本全国の児童生徒がステイホームと称する、疑似ひきこもりになったわけです。これが、不登校やひきこもりだった生徒だけでなく、それまで不登校やひきこもりと無縁だった生徒たちにまで、大きな影響を与えました。

 私、杉浦孝宣は、36年以上にわたり不登校・高校中退・ひきこもりの生徒の指導をしてきました。のべ約1万人を指導し、たくさんの生徒たちが不登校・高校中退・ひきこもりから立ち直っていくお手伝いをしてきました。その長い指導経験の中で編み出してきた、生徒たちを立ち直らせる方法を、全国の当事者やその保護者、指導する先生や学校、教育委員会や行政など、さまざまな人たちに知ってほしいと、前著『不登校・ひきこもりの9割は治せる 1万人を立ち直らせてきた3つのステップ』(光文社新書)を2019年に出版させていただきました。

 しかしその後、私の想像していなかった事態が起こりました。それがパンデミック、新型コロナウイルスの大流行でした。これは、不登校やひきこもりだった生徒に大きな影響を与えました。
 休校期間中は、私が理事長を務めていたNPO法人高卒支援会にも相談が相次ぎました。「学校の先生やスクールカウンセラーと話をするために学校に行く機会もなくなり、ますます外出を嫌がるようになった」「起床が昼頃になって、食欲も落ち、悪循環に陥っている」といった相談が増えました。
 学校再開後も、学校になじめなかったり孤立してしまったりする児童や生徒が増え、さまざまな相談がありました。
 文部科学省の調査によると、2020年の小中高校生の自殺者数は過去最多の499人になったと報道されています。

 ただでさえ、学校に行けない、外に出られない子どもたちは、この〝コロナショック〟で、外に出ることがより一層難しくなりました。立ち直ろうと頑張っている目前で、その道を絶たれ、またひきこもりに戻ってしまうケースもありました。
 一方、不登校やひきこもりの状況にあるのに、その実態が新型コロナという隠れ蓑で見えなくなっているケースもあります。
 本書ではコロナショックで起こったこうした状況を、実例を挙げて細かく見ていきます。そして当会では、どのようにして子どもたちを立ち直らせたのかを、知ってほしいと思います。

 文部科学省では、不登校を病気や経済的理由を除き、「年度間に連続又は断続して30日以上欠席した児童生徒(小・中学校)」と定義しています。コロナ禍となった令和2年度は19万6127人(「令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」令和3年10月13日発表)となり、調査開始以来、最多を記録しています。この数にはコロナ感染回避のための長期欠席者2万905人が含まれていないので、実質的には21万7032人と、前年比で19・7%も増加しているのです。
 しかし、こうした不登校の子どもたちのほとんどに、行政からの支援は届いていません。本来ならば、各自治体の教育委員会が設置する教育支援センター(適応指導教室)が、不登校の児童生徒を指導するということになっています。いわゆる公的なフリースクールです。しかし、教育支援センターと同センター所管の機関で相談・指導を受けた子どもを合わせても、合計約19%しかいません(同調査による)。高卒支援会で実態を調べたところ、一度でも相談をしたらこの数にカウントされるので、継続的に通っている児童生徒は、さらに少なくなり、数パーセントしかいないのです(詳しくは5章で説明します)。
 どういうことでしょうか。つまり、約19万人以上いる不登校の子どもたちのほとんどが、何も支援されていないのです。このまま放っておけば、ひきこもりにつながっていきます。長期化すれば8050問題(高齢になった80代の親が50代のひきこもりの子を抱えて生活に困窮する問題)に発展してしまいます。
 東京都では、公立中学校の卒業式を約3000人の生徒が欠席しています。不登校の状態のまま卒業になってしまうのです。この子どもたちはこの後、一体どうなるのでしょうか。放っておいていいのでしょうか。
 これは国家の大きな損失にもつながります。
 こども庁の創設が議論されていますが、中でも、不登校・ひきこもりは喫緊の課題です。ひきこもりの子どもが、将来自律して生活できるようにならなければ、生活保護を受けることになります。財政破#は綻も見えてきます。
 しかし、私が36年以上にわたって培ってきた指導方法で、しかも、20代前半くらいまでの若いうちなら、9割の確率で直せるのです。子どもたちが自律して、勤労、納税の義務を全うし、それぞれの能力を社会で発揮できれば、国の発展につながるのです。

 では、一体どうすれば、いいのでしょうか。何から始めたらいいのでしょうか。
 それが、アウトリーチ支援です。
 アウトリーチ支援とは、私が36年にわたって指導して編み出してきた方法のうちの一つです。
 ひきこもりの子どもが立ち直るには、大きくわけて、

 ステップ① 規則正しい生活をする
  ステップ② 自律して自信をつける
  ステップ③ 社会貢献をする

 という3つのステップがあります。アウトリーチ支援は、ステップ①の前の最初の段階にあります。このアウトリーチ支援が一番難しいといっても過言ではありません。
 教育支援センターでは、このアウトリーチ支援ができていないのです。
 学校にさえ行けない子に、「学校に行けないなら、ここにおいで」と待っているだけでは、子どもたちが行くわけがありません。アウトリーチ支援とは、こちらから、子どもたちが閉じこもっている部屋に出向いていくのです。少しずつコミュニケーションをとって信頼関係を築きながら、外の世界に向けて、一歩一歩、一緒に、踏み出していくのです。
 ひきこもりから脱して学校やフリースクールなどに復帰するためには、これまでの経験からいうと、ひきこもっていた時間と同じくらいの時間がかかります。非常に時間もかかりますし、危険が伴うこともあります。だからこそ、慎重にやる必要がありますし、相手によって反応も違いますから、ノウハウが必要なのです。
 高卒支援会でのアウトリーチ支援は、2017年から2021年10月までの約4年半で、41件中35件成功しています。残念ながら全ての子どもを救えているわけではありませんが、成功率は85・4%です。

 本書では、このアウトリーチ支援のノウハウを、全て公開します。一人でも多くの不登校・ひきこもりの子どもを救いたいからです。

 教育支援センター側も、これまでの方法だけでは解決が難しいことが徐々に分かってきて、当会が協力をお願いされることもあります。全国の自治体でも渋谷区が初めて当会と連携して、若者支援を行う事業を始めています。
 私もこの方法を、全国の不登校やひきこもり状態にある子どものお父さんお母さん、教育関係者、行政関係者にも知ってもらうために、一般社団法人不登校・引きこもり予防協会を設立しました。不登校やひきこもりを指導する大人、学校や教育委員会、自治体、政府など、あらゆる人々や機関と連携して、一人でも多くの子どもが社会復帰できるように、お手伝いしたいと思っています。

 ただし、この方法は、20代前半くらいまでの青少年に限っての方法です。それより上の世代は、指導したことがないので分かりません。先ほども述べたように、ひきこもる時間が長ければ長いほど、立ち直るまでの時間も長くなるのです。放っておいては、状況は悪くなるばかりです。一刻も早く、アウトリーチ支援を始める必要があります。
 それを今、決断できるのは、これを読んでいるお父さんお母さんなのです。
 本書を読んで、一刻も早く、ご自分のお子さんを救ってあげて下さい。

 ※本書に出てくる人物でカタカナ表記は全て仮名です。
 ※本書は「はじめに」と1章、5~7章、11~12章を杉浦が執筆し、現・高卒支援会理事長の竹村聡志が2~4章、8~10章を執筆しています。

目次

第1章 コロナショックによる不登校・ひきこもりの急増と不透明化
増加した子どもたちの自殺/コロナ欠席で不登校とカウントされなくなった/コロナがきっかけで不登校になった生徒/不登校のままでも進級・卒業できてしまう/言い訳として使われる「コロナだから……」

第2章 コロナショックで困難になる立ち直りへのステップ
ひきこもりからの復帰が遅れてしまっている/立ち直りかけた生徒も再びひきこもりに

第3章 立ち直る過程で起こった、コロナによる挫折
「はしごを外された」コロナショック/失われたキャンパスライフ

第4章 オンラインが救った不登校・ひきこもりの生徒たち
コロナがかえって良い影響を与えた例も/不登校・ひきこもりとオンラインの好相性/オンライン授業が単位取得を促進する/3割の生徒はオンラインのほうが合っている/「学校に行かなくてもよい」だけだと間違い/
新しいスタンダードとは

第5章 コロナ禍における教育支援センターの問題点
スクールカウンセラーだけでは足りない支援/機能しない自治体の教育支援センター/自治体の若者支援事業がうまくいかない理由/アウトリーチ支援という提案/民間フリースクールへの支援・連携を

第6章 アウトリーチ支援 ステップ 0
① ご相談・お問い合わせ/② アウトリーチ支援の提案/③ 両親面談
親に共通する3つのタイプ/ひきこもりの5つのステージ/④ 初回アウトリーチ/滞在時間は1時間を厳守するわけ/⑤ 職員会議/⑥ 4回訪問後の職員会議

第7章 実例で解説するアウトリーチ支援ステップ
アウトリーチの実例/両親面談で分かった厳しい状況/職員会議/お父さんに全身全霊をかけてもらわないと/学生インターンによる信頼関係の構築/生活の改善/コロナ休校による中断/イベント参加で徐々に溶け込んでいく/将来を見つめ直す

第8章 将来を見据えた特別授業と、支援の広がり
リアルタイムのオンライン授業/数学講座/美術講座/プログラミング講座
/一流の専門家から得る学び/支えてくれるプロの大人たち/全日制高校へ通う生徒のボランティア/学生インターンの大きな力

第9章 ゲームの有効性――eスポーツ部の意義
ひきこもりから立ち直らせるためのゲーム/ゲームを通した友情/NTTe―Sportsの協力/オンラインゲームは「昔のゲーセン」/ゲームと勉強の両立/プロゲーマーになりたい生徒のために

第10章 規則正しい生活を確立するための方法――生活改善合宿
昼夜逆転を直すための合宿/ユーチューブを見てたら朝の4時に……/生活改善が必要なタイミング/群馬合宿1日目/群馬合宿2日目/合宿後の変化/小田原合宿1日目/小田原合宿2日目

第11章 自律した生活のために――一人暮らしのすすめと、親の覚悟
寮生活の支援/寮生活のルール/何より必要なのは親の覚悟/一人暮らしで変わった意識/富裕層の子どもの特徴

第12章 女子に多い不登校タイプと新しい進路の形――インターン経験を活用した総合型選抜
女子の不登校の原因は友達関係/女社会の中でうまく生きる力をつける/女子の外見へのこだわりは、受容されていない不安の表れ/柔軟さに優れた女子に多い、総合型選抜(AO入試)/自ら指定校推薦を獲得した例/受験ありきではないが高卒の資格は取るべき

お わ り に

著者プロフィール

杉浦孝宣(すぎうらたかのぶ)
1960年生まれ。カリフォルニア州立大学ロングビーチ校卒。小学校三年生のときに保健室登校を経験するが、養護学園に半年間通い不登校を克服した。大学卒業後に家庭教師を経験、1985年に中卒浪人生のための学習塾・学力会を設立。以来36年間、不登校、高校中退、ひきこもりの支援活動を行っている。2010年よりNPO法人高卒支援会を立ち上げ、2020年に現場を後進へと譲る(現在も困難な事例を中心に支援協力している)。その後、「一般社団法人 不登校・引きこもり予防協会」を設立し活動中。著書に『不登校・ひきこもりの9割は治せる』(光文社新書)、『高校中退 不登校でも引きこもりでもやり直せる! 』(宝島社新書)などがある。
NPO法人高卒支援会
不登校・ひきこもり・中退で悩む小学生・中学生・高校生・20代の若者を対象に支援活動を行っているNPO法人。「子どもたちが規則正しい生活をし、自信を持ち自律し社会に貢献する未来を実現します」をスローガンに掲げ、水道橋、新宿、池袋、横浜に校舎を展開している。
編集協力:小山美香
図版作成:デザインプレイス・デマンド


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