ザ・夕涼み|パリッコの「つつまし酒」#121
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ザ・夕涼み|パリッコの「つつまし酒」#121

日本には夕涼みがあった!

 恥ずかしながらわたくし、ここしばらくの間自分が、「ニッポンの酒飲みとしての本分を忘れてしまっていた」ことに気がつきました。
 日本が本格的なコロナ禍に突入して以来、それまでも大好きではあったベランダを舞台に、やれチェアリングだ、人工芝でピクニックだ、ちょうちんをつるしてビアガーデン風だと、手を替え品を替え、もはや意地とも言える勢いで、家飲み、ベランダ飲みの向上に取り組んできました。そのどれもが楽しかったことは間違いないし、今後もどんどんやってこうと思ってるんですが、とはいえ、それらのハードルは、正直ちょっと高い。僕のような酒の変態を除く人々の一般論からすれば、「そこまでして飲まなくても……」ということになりますね。
 世界にコロナの「コ」の字もなかったころ、ピクニックにも居酒屋にも自由気ままに行けたし、夏になればビアガーデンが毎年の楽しみだった。それじゃあ家で、特に予定のない夏の夕方に、「ちょっとベランダで酒でも」と思い立ち、どんな飲みかたをしていたか? というと、ベランダに常備してあるアウトドア用の折りたたみベンチに腰かけ、うちわでパタパタと自分の体をあおぎながら、ビール1缶に、なにかつまみを1品。そんなところでじゅうぶん満足していたんですよね。つまりは、昔ながらの「ザ・夕涼み」。
 このシンプルな、それでいてもっとも日本の夏らしい酒の楽しみかたを、最近ぜんぜんしてなかった! と気づき、いたく反省したというわけなんです。

数十年ぶりに育てた朝顔

 それにはきっかけがありまして、先日、ついに咲いたんですよ! 小学生のころ以来数十年ぶりに家で育てていた、我が家の「朝顔」がついに!
 妻の影響が大きかったんですが、早いもので娘も4歳になりまして、今年はあまり気軽に外出もできないぶん、ちょっとでも思い出に残る夏の体験をさせてやれないかと考え、思いついたんですよね。ベタですが、朝顔を育てるのはどうか? って。同時に、せっかくだからその他にも、ミニトマトやらハーブ系の鉢やらを園芸店に行って買ってきて、専用のラックも買って、ちょっと気合を入れて、ベランダ菜園に挑戦してみたんです。
 で、先日ついに、あれこれお膳立てをしてポトリと種を植え、毎日成長を見守ってきた朝顔が、美しい紫色の花を咲かせたというわけなんですが、これ、むしろ大人になってからのほうが感動しますね。

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種から育ててちゃんと咲く感動

 で、その朝顔を満面の笑みで眺めていたら思ったわけです。あ、夕涼みしなきゃ! と。
 そこで、先述の折りたたみベンチは10年ほど使い倒して引っ越しの際に捨ててしまったので、ネットでお手頃だった「縁台」を購入しました。「けっきょくお前って形から入るよな。なんだかんだ言って、新しい家飲みグッズ買うよな」そんな声が聞こえてきそうではありますが、そこはもう、僕がそういう男だということでご了承いただくしかありません。
 とにかく届いた縁台を組み立て、ベランダの朝顔の横に置いてみたところ、もう、他にはなにもいらない! ってくらいに最高のシチュエーションなんですよね。やっぱこれだよ、日本の夏は。

チューハイにミントを浮かべれば……

 つーわけで、久々のベランダ夕涼みを楽しんでいきましょう。
 ある日の仕事後、さっとシャワーを浴びて、全身にハッカ油スプレーをふりかける。ベランダと部屋、近いようで、あまり物が多いと持ち運びが面倒になります。100均で買った折りたたみのカゴに収まるだけの夕涼みグッズを準備しましょう。
 まずは350mlの発泡酒1缶。それからおなじみ、タカラ焼酎ハイボールのドライ500ml1缶。ビールとチューハイ用のグラス各1。ミニサイズのお盆。おつまみは、この夏ハマって毎日食べてるみそきゅうり。地物のきゅうり1本と、みそきゅうに便利なチューブタイプの味噌を用意しました。それから、ミョウガとねぎの薬味たっぷりの「たぬき奴」。それ用のだし醤油。あとはえーと……お、冷蔵庫に6Pチーズがあった。これくらいでじゅうぶんか。

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準備は完璧

 ベランダに出、そのカゴを縁台の下に置いたら、いよいよ夕涼みタイムです。
 まずはみそきゅうとビールのターン。

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これ以上に何を望むか

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夏の空の表情豊かさ

 お盆にグラスとみそきゅうをコトリ。発泡酒をぷしゅり。グラスにトクトクトク。きゅうりシャクッ! もぐもぐもぐ。気づけば耳には降るような蝉時雨。おもむろにビールをくいーっ。……はい、言うことなし! これこれ、これだよ日本の夏の醍醐味は。

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神の液体

 今日はここ最近でもとびきりの猛暑で、我が練馬区は最高気温38度を超えたとも聞いていましたが、風呂上がり+ハッカ油の清涼感+風がそこそこあるので、ぜんぜん涼めてます。というか、夏を感じるのにベストな天候かも。いやはや、これはクセになりますな。

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 薬味は人生を豊かにする

 続いて、たぬき奴とチューハイのターン。単なる真っ白くて四角い豆腐と、薬味たっぷりの豆腐を思い出してみてください。ね? 薬味ってのは本当に人生を豊かにしますよね。最近、もはや薬味さえあれば、実体はなにもなくてもいいんじゃないかという領域に達しつつあります。僕。
 この薬味たっぷり、さらにあげだまたっぷりの冷奴をざくざくっと混ぜてだし醤油をかける。はたしてこの夏、これ以上のつまみがあるでしょうか?

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なんて、なんてうまいんだ!

 こいつをなじみの焼酎ハイボールでやっていて思いつきました。そういえばベランダ菜園に、ミントがあったよな。葉っぱを何枚かちぎってここに浮かべてやれば、赤羽「まるます家」の名物「ジャン酎モヒート」ならぬ「酎ハイモヒート」になるんじゃないの?

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やってやりました

 チューハイに浮かべた瞬間、シュワシュワと立ち上る泡に刺激されて広がる、フレッシュなミントの香り。いざ、と、ごくごくごくっと飲んでみる。うわー! ベランダ夕涼みにこれほど向いていて、これほど心身をクールダウンさせてくれる酒があるだろうか? いや、ない! ってくらい、今の気分に最高にマッチする一杯でした。
 もはや6Pチーズすらもよけいでしたね。ベランダ夕涼みは、このくらいでじゅうぶんだ……。

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明日はこいつが咲くかな?
パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。
2021年7月には、新刊『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)を上梓。美しいカバーイラストは必見! また、『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。Twitter @paricco


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