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【巨人軍参謀論】「陰の功労者」伊原春樹、橋上秀樹。侍ジャパンの首脳陣も

熱烈な巨人ファンで、多くの野球マニアや選手たちからフォローされるゴジキさん(@godziki_55)が巨人軍を分析。
野球を始めほとんどのスポーツでは基本的に選手や監督にスポットライトが当たりますが、見逃してはならないのがコーチなどのチームを支える「参謀役」。強いチームにはえてしてこのポジションに優れた人間がいます。巨人やWBC日本代表で結果を残した「陰の功労者」たちの功績を振り返ってもらいました。

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三塁コーチから原巨人を支えた伊原春樹

監督として日本一の経験はないものの、三塁コーチとしていくつもの名場面を生み出してきたのが伊原春樹氏だ。西武時代には監督としてリーグ優勝しているものの、適材適所とは言えないポジションだたように思う。三塁コーチやヘッドコーチとして活きる指導者だった。

森西武時代の日本シリーズにおける、ウォーレン・クロマティの送球難を見抜いた上で、辻発彦を生還させた判断力。また、巨人時代も2009年に原監督がWBCの関係で不在の時にNo.2としてチームをまとめあげた力量。これらは、伊原氏が監督以上に参謀役として活きていた証拠だ。

野村克也直伝「ID野球」の申し子、橋上秀樹

巨人軍に在籍していた首脳陣で革新的な働きをした一人が、橋上秀樹である。選手時代とコーチ初期に野村克也氏の下で戦った、ID野球の申し子だ。
指導者としては、野村氏、原氏の参謀役としてはもちろんのこと、WBCの日本代表でも戦略コーチとして貢献した。野村氏が作り上げた「弱点をつく」「より確実な手段を選ぶ」野球を(しかも野村氏がライバル視していた巨人に)導入したコーチと言っても過言ではないだろう。2012年の圧倒的な強さを見せつけたチームの「陰の功労者」とも言われた。

橋上氏が入閣する直前、11年の巨人軍は、小笠原やラミレスの衰えに統一球の影響などもあり、チーム打率が前年の.266から.243へと下降した。橋上氏曰く「幸いなことに、ジャイアンツには、12球団でも一、二を争う情報収集能力があった」そうだが、情報の活かし方が明確になっておらず、選手のポテンシャル頼りな部分が見受けられた。2011年のシーズンオフに設立された「戦略室」に所属することになった橋上氏は、精密なデータを言語化し再現性を持たせる力が認められ、阿部だけでなく長野、坂本といった主力選手からも信頼を勝ち取った。

橋上氏が巨人に持ち込んだのは、「野球の考え方」だ。これはつまり、データを的確に読み解き、効率良く自分の準備に応用していくことである。大切なのは、打席に入るギリギリまで、状況に応じて必要なパターンを用意することだ。巨人にはそもそも「戦略コーチ」というポジション自体がなかったが、そのプレッシャーにも臆することなく期待に応えた。狙い球を絞った打席では見逃し三振を容認することで、四球を増やし、チーム打率も.256に改善させ、リーグ優勝と日本一に貢献した。統一球という野手不利のシーズンにもかかわらず、3割打者を3人(阿部、坂本、長野)輩出したのは流石の一言だ。その意味で戦略コーチは天職だったが、14年に担当した打撃コーチは適職とは言えない立ち位置だったのではないだろうか。

橋上氏の戦略は「弱者の戦い方」とも称され、球団の色に合わないとも言われていた。しかし、昨年の日本シリーズではソフトバンクとの間に大きな実力差が見られた。これを埋めるためには、橋上氏が用いたようなある程度の戦略を準備する必要があったに違いない。

2009年WBCの原JAPANの見事な布陣

原辰徳氏が2009年WBCで代表をまとめ上げた時の首脳陣は、各領域を見事にカバーできるメンバーが揃っていた。ヘッドコーチの伊東勤氏は監督としても結果を残しており、組織をとりまとめる能力は非常に優れている。また、高代延博氏は2009年WBCはもちろんのこと、2013年WBCにも選出されており、要所で飛び込みながらランナーを止めるなど三塁コーチとしての能力の高さを示した。加えて、坂本勇人の守備能力のさらなる上達への指南役としても大きく貢献した。

このような「陰の功労者」がいるからこそ、監督をはじめ選手が高いパフォーマンスを残すことができる。今後も首脳陣に入る「参謀役」の存在に注目していきたい。

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