ひとりお花見酒散歩|パリッコの「つつまし酒」#53
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ひとりお花見酒散歩|パリッコの「つつまし酒」#53

※この原稿は、2020年の3月下旬に取材をし、3月25日に公開される予定だったものです。ところが、当時のコロナウイルスを取り巻く環境の急変により、いったん公開が見合わされることとなりました。それからちょうど1年が経ちました。いまだウイルスの影響は衰えぬものの、各自がじゅうぶんに注意しつつ、このくらいの範囲でならば今年も桜を楽しんでいいのではないか? と判断し、今回あらためて公開いたします。

こんな時だからこそ、ひとり花見を

 一体誰が想像できたでしょうか。こんな春がやってくることを。
 新型コロナウィルスの影響で、世界中があまりにも深刻な事態におちいっているのはご存知の通り。日本も今後どうなってしまうか予断を許さない状況のなか、人と人との濃厚接触が発生する可能性の高い「飲み会」や「花見」なども自主規制の対象になっており、例年なら人でごった返す上野公園の桜の下を東京都の職員が巡回し、花見をしないよう呼びかけているという状況だそう。
 もっとも安全なのは、家に閉じこもっていること。それでも我々庶民には、何らかの息抜きが必要なことは確かです。
「大丈夫っしょ」なんて高を括った行動は絶対に取るべきではないけれど、少しでもリスクを下げつつ、日常の中に心の余裕を持つことはできないだろうか? 正解が出るのはこの騒動がいつかひと段落したあとに違いありませんが、ついついそんなことばかり考えてしまう今日このごろ。

 以前、この「つつまし酒」で、「ひとり花見のすすめ」という記事を書かせてもらったことがあります。具体的には、アウトドア用の椅子だけを持って公園などに行き、好きなところに座って過ごす「チェアリング」という遊びとお花見を組み合わせるとなかなか風流ですよ、という内容。まさかこうなることを見越していたわけではありませんが、ひとりとか、多くとも2~3人くらいの構成単位が向いているチェアリングは、人と人との距離がある程度離れ、かつ、わいわいと盛り上がるというよりは、それぞれが静かに自分の時間を楽しむというタイプのものであり、今年のお花見の打開策としての需要を感じてくださる方もいらっしゃるようです。実際、そんな取材を受けたり、メディアで取り上げられていたと聞いたりもしました。
 が、もっともっと気軽に、かつ低リスクでできるお花見もあります。それが「お花見さんぽ」。今年は桜の名所といえども人出は多くありません。満開の桜の下を、好きなお酒片手にふらりと散歩する。そのくらいのことは、現場の環境次第では許してもらえないかな? けっきょくのところ、正解はわからないのですが。

秘密の桜スポットにて

 本当はあんまり人に教えたくない、とっておきの桜スポットがあります。板橋あたりから王子駅にかけての、石神井川沿い。川の両岸に絶え間なくソメイヨシノが並び咲き、さまざまな表情の桜たちを楽しむことができる、それはそれは優雅な散歩道。そもそも立地的に、宴会というよりは散策に向いたスポットで、僕、毎年桜の見ごろになると、一度はこのルートを「お花見さんぽ」しているんですよね。地元の桜も満開に近くなった、よく晴れた平日の午後、なんとか時間を作り、板橋駅へと向かいました。
 まずはコンビニでお酒とつまみを調達しよう。タカラ「焼酎ハイボール レモン」の500ml。それから、最近気に入っている「miino(ミーノ)」という豆菓子の「黒豆しお味」。散歩しながらだし、このくらいあればいいだろう。
 駅から北に向かって歩くこと7~8分くらいで、石神井川に突きあたる。そこから下流の王子駅にかけて絶え間なく遊歩道が続いているというわけで、さて、お花見さんぽ開始!

 桜の咲き具合は5分咲き~満開くらいまで割と幅がありますね。人出はやはりまばら。散歩や桜の撮影の人とはたまにすれ違いますが、基本的にはひとりで歩いてるだけ。キラキラと輝く水面と、その光を反射して咲き誇る桜のなんと美しいことか。どんなご時世だって関係なく、花は美しく咲くもんだな。プシュッと缶を開け、今年の桜に乾杯!

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焼酎ハイボールとminoを持って。

目的地で出迎えてくれたのはまさかの……

 ポカポカ陽気の中、チューハイをちびちび、黒豆をぽりぽりやりながら、桜のトンネルの下をゆっくりと歩く。川はくねくねと蛇行し、ところどころに公園が整備されえていたりと変化があって、歩いているだけで気が晴れていきます。
 途中、「谷津大観音」の横を通り過ぎる。これが、いきなり出くわすとちょっとびっくりしてしまうくらい巨大な観音様。しばらく眺めていたら、僕と観音様の間をものすごく色鮮やかな緑色をした巨大なインコが2羽飛び抜けてゆき、なんなんだこの状況はと笑えてきました。
 さらにゆくと、こんどは何やら熱心に川面を眺めているおじさんを発見。視線の先に、これまた色鮮やかな鳥がいる。しばらく一緒になって眺めていると、「カワセミですよ」とおじさんが。素早い動きで水に飛び込んでは、小魚を捕獲しているようです。はは。なんだかどんどん状況が浮世離れしてきたぞ。

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「カワセミですよ」

 やがて、このコースのなかでも僕がもっとも内緒にしておきたいスポット「音無もみじ緑地」に到着。ここ、地形がおもしろくて、川面より上にさらに人口の池があり、そこを中心にすり鉢状の窪地になっている。なぜかカモメだかウミネコだかもたくさん集まってきていて、謎のリゾート感がある場所なんですよね。ここで少し休憩していこうっと。

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音無もみじ緑地。

 のんびりと歩いて40分くらいでしょうか。お酒もつまみもちょうどなくなりました。あぁ、なんて良いお花見だったんだろうか。さらに嬉しくなったのが、ゴールである王子駅近辺にたどりついた僕を迎えてくれた、もうこんなにも勢い良く芽吹いていたのかと感動するほどの、新緑のもみじ。満開の桜とのコントラストが美しすぎます。
 そうか、日々余裕を欠いて過ごしていたけど、もうそろそろ新緑の季節なんだよな。そのあとには夏が来る。一刻も早くこの騒動が落ち着き、せめて日々のなかで季節感くらいは自由に感じられる生活が戻ってきますように……。

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王子駅近辺。
パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。
2020年9月には『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)という2冊の新刊が発売。『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。Twitter @paricco
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