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【第57回】20世紀の戦争はどのように終結してきたのか?

光文社新書
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★現代の日本社会では、多彩な分野の専門家がコンパクトに仕上げた「新書」こそが、最も厳選されたコンテンツといえます。この連載では、高橋昌一郎が「教養」を磨くために必読の新刊「新書」を選び抜いて紹介します!

チキンゲームと戦争終結論

暴走族の度胸試しに「チキンゲーム」がある。まず、中央に白線の引かれた真っ直ぐな道路を選ぶ。200メートルほど離れて、2台の車が向かい合わせに停まっている。中央にいる審判役の旗を振る合図と同時に、2台の車はアクセルを全開にして、猛スピードで互いに接近する。どちらの車も、必ず白線を跨いでいなければならないルールである。しかし、数秒で正面衝突の危険が迫ってくるから、どちらかが白線から外れて相手を避けなければならない。そして、先に白線を外れた車のほうが「チキン(弱虫)」と呼ばれるわけだ!

チキンゲームに勝つためにはどうすればよいのだろうか? もちろん、最初からこのようなゲームに参加しなければよいのである。しかし、実は、チキンゲームは、人間社会に非常に広範囲に見られる利害関係に関するモデルであり、誰もが嫌でも参加せざるをえない場合がある。たとえば、核兵器を所有する2つの国家が、「瀬戸際対策」をとることがある。「キューバ危機」のように、国家間の緊張を高めて、相手国に譲歩させようとする戦術だが、もし相手国が譲歩せずに、さらに緊張をエスカレートさせたら、どうなるか?

大天才フォン・ノイマンの創始した「ゲーム理論」は、基本的に理性的なプレーヤーが「理性的な解」を求める仕組みになっている。ところが、非常に奇妙なことに、チキンゲームでは「理性的でない解」のほうが優位に立つと考えられる。つまり、チキンゲームには、ゲーム理論が通用しないのである!

今からチキンゲームが始まるとする。車に乗ってアクセルを踏み込もうとした瞬間、正面の相手がハンドルを引き抜いて窓から投げ捨てるのが見えた! 相手は「捨て身」の戦術で、直線を走るしかない方法を選んだのである。相手が絶対に避けない以上、こちらが避けなければ両者とも死んでしまう。つまり、チキンゲームに勝つのは「最高にイカれて狂ったヤツ」なのである!

本書の著者・千々和泰明氏は、1978年生まれ。広島大学法学部卒業後、大阪大学大学院国際公共政策研究科修了。防衛省防衛研究所教官、内閣官房副長官補付主査などを経て、現在は戦史研究センター安全保障政策史研究室主任研究官。専門は日米同盟史・防衛政策史。著書に『大使たちの戦後日米関係』(ミネルヴァ書房)、『変わりゆく内閣安全保障機構』(原書房)などがある。

さて、本書では戦争終結を「紛争原因の根本的解決」(第1次世界大戦・第2次世界大戦・アフガニスタン戦争・イラク戦争)と「妥協的平和」(朝鮮戦争・ベトナム戦争・湾岸戦争)のジレンマから詳細にわたって分析している。

ここで千々和氏が分析の基盤とする概念が「現在の犠牲」と「将来の危機」である。第2次世界大戦では、連合国側は「現在の危機」よりもドイツのナチズムや日本の軍国主義に対する「将来の危機」を優先し、あくまで「無条件降伏」を勝ち取るまで戦い続けた。一方、朝鮮戦争やベトナム戦争におけるアメリカは、事態が当時のソ連や中国との戦争にエスカレートする「現在の犠牲」の拡大を恐れて妥協し、「将来の危機」を軽視せざるを得なかった。

本書で最も驚かされたのは、20世紀の戦争指導者が「現在の犠牲」と「将来の危機」の間で揺れ動く異様な姿である。1950年に朝鮮戦争が始まった当時、フォン・ノイマンは「将来の危機」を最大限に見積もって、ソ連を先制核攻撃すべきだとトルーマン大統領に進言した。彼の計算は何を意味するのか?


本書のハイライト

実は平和の回復にとって単なる戦争終結それ自体は重要ではない。戦争終結は早期になされればいいというわけでもない。平和の回復にとって重要なのは、それがどのような条件によってもたらされた戦争終結であり、それによって交戦勢力同士がお互いに何が得られ、何が失われるのかということである。ここに戦争終結のジレンマを問う意味がある(p. 275)。

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著者プロフィール

高橋昌一郎_近影

高橋昌一郎/たかはししょういちろう 國學院大學教授。専門は論理学・科学哲学。著書は『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』『フォン・ノイマンの哲学』『ゲーデルの哲学』『20世紀論争史』『自己分析論』『反オカルト論』『愛の論理学』『東大生の論理』『小林秀雄の哲学』『哲学ディベート』『ノイマン・ゲーデル・チューリング』『科学哲学のすすめ』など、多数。

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