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飲めすぎてもはや意味がわからないイタリアン「ウシータ」|パリッコの「つつまし酒」#135

もう行く! 今から行く!

 信頼のおける若き飲み手として、昨今の飲酒シーンでめきめきと頭角を現し中の「魔女っこれい」さん。今年、彼女が初の著書『魔女っこれいの絶品おつまみレシピ』を上梓されました。それを記念し、「阿佐ヶ谷ロフトA」という会場で配信トークイベントが開催され、かねてからつながりのあった僕と、コスプレイヤーや事業家など幅広い活動で知られる「うしじまいい肉」さんがゲストとして参加。大変楽しい夜を過ごさせてもらったのが、今年の10月1日のことでした。
 ところでその日、うしじまさんが、れいさんも大好きだという高円寺のイタリアン「ウシータ」というお店のオードブルセットをわざわざテイクアウトし、差し入れてくれたんですね。僕は初耳だったのですが、ボトルワインが1本ついて3000円だという割にはやたらと大きく見えるその箱を開けると、なかにはいろとりどりの生ハムやレバームース、自家製のおつまみがこれでもかと詰まっていて、どれも感動的に美味しい!
 なんてすごいお店を教えてもらっちゃったんだろうと思い、さっそくウシータのTwitterアカウントを探してフォローすると、プロフィール欄に「高円寺最強イタリアンせんべろのお店」「明るいうちから飲みたい民の強い味方」なんて言葉が踊っています。
「だめだ! 行きたすぎる! もう行く! 今から行く!」と叫びながらお店のある高円寺へと向かった僕をその日待っていたのは、想像のさらに上の上をゆく、飲めすぎてもはや意味がわからないという、最高に幸せな体験だったんです。

ラズウェル細木先生をゲストに

 それから何度かおじゃましているウシータの魅力をここに書き連ねていきたいわけなんですが、今日はスペシャルなゲストがいらっしゃいます。
 先日、「昼間から和田堀わだぼり公園でチェアリングをする」というのんきなお仕事がありまして、そこでご一緒したのが、酒飲みのバイブル『酒のほそ道』の作者、ラズウェル細木先生。現場がそれほど遠くないこともあり、その日の仕事後はウシータへ行こうとあらかじめ決めてまして、「最近知ったすごいお店があるんですよ!」なんて話をすると、ラズ先生も興味津々。ではぜひご一緒しましょう! ということになりました。
 お店は高円寺駅から徒歩5分ほどの場所にあり、3年ほど前に開店したということで、まだピッカピカ。一瞬、「ほんとにこんなお洒落なお店が我々酒飲みの味方なのぉ〜?」と疑ってしまいそうになりますが、安心してください。味方ですよ!
 営業は午前11時から夜までで、パスタを中心としたボリューム満点のランチセットもあれば、単品料理、さらに「ウシータの昼飲みメニュー」なんてコーナーもあり。生ビールやグラスワインなどが350円〜。おつまみも300円の軽めのものから本格的な肉料理まで、多彩に揃っています。
 驚きなのが平日の19時まで限定の「せんべろセット」。膨大なメニューから選べるおつまみ2品とお酒2杯で、なんと1000円ぽっきり! で、そのラインナップがま〜、どれもこれも魅惑的すぎてですね、同志ならきっとうなずいてくれることと思うんですが、文字列を見てるだけで延々と飲めちゃうんです!

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すごいでしょう?

やっぱり意味がわかりません!

 さて、ここからは順を追って説明していきますね。
 まず今日の1杯めは、イタリアンならやっぱり「泡」で始めたいところと、ふたりとも「トレッビアーノ」を注文して、乾杯! いや〜、さっそく気分爽快です。
 おつまみは、「A」と「B」の欄からそれぞれ1品ずつ選べるシステム。どうしようかな〜と悩みに悩み抜き、僕が選んだのが「ラルドのブルスケッタ(2枚)」と、おつまみ麺の「煮干しパン粉(+100円)」。ラズ先生はというと、「枝豆パルミジャーノ」と、ウシータいちばん人気の「白レバームース」。そう、ふたりで選べば、都合4品のおつまみを味わえてしまうというわけなんですね。

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「トレッビアーノ」で乾杯!

 そして徐々におつまみが届きはじめると、そこからはもう、「うまい!」「最高!」しか語彙がなくなるタイムに突入。

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「白レバームース」

 まったり濃厚な味わいの白レバームースは、さすが看板商品! な、安定の美味しさ。バゲットがたっぷり2種類ついてくるのも嬉しいんだよな。
 また、さすがラズ先生とおそれいったチョイスが、枝豆パルミジャーノ。意地汚い僕だとついついガッツリ系や肉系のメニューにいきがちなんですが、チョイスが洗練されてます。で、その枝豆パルミジャーノが届いてみてびっくり!

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「枝豆パルミジャーノ」

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量もたっぷりだ

 ていねいに皮をむいた枝豆に下味がついていて、そこにどっさりパルミジャーノチーズと、オリーブオイル。この組み合わせが絶妙すぎて、今までに僕が出会った「枝豆界最強おつまみ」間違いなしですよこれは! なんでこんな美味しい料理が思いつけるんだ。

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「モンテプルチアーノ」

 たまらずそれぞれ赤ワインを追加し、お次は僕の選んだ「ラルドのブルスケッタ」と合わせてみます。

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「ラルドのブルスケッタ」

 ラルドとは、僕の大好物である「豚の脂身」を生ハムにしたもので、それをペースト状にしてハーブとスパイスを練り込んである。のかな? これがさらにバゲットにのっているというなかなかにカロリーの気になる一品ですが、だからこそもう、顔はへらへら、油断するとよだれがだらだらとたれそうになる美味しさ。
 あ〜、なんだこの店! ず〜っと幸せなんですけど!

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おつまみ麺「煮干しパン粉」

「煮干しパン粉」のパスタはプラス100円かかってしまうメニューなんですが、どうしても気になって頼んでみたもの。その名のとおり煮干しの粉とパン粉が素のパスタにかけてあって、ここに特製の辛いオイルをかけて食べるんだそうで。

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こうですかい?

 ウシータのパスタは、ラーメン業界では名の知れた「浅草開化楼あさくさかいかろう」の特製「カラヒグ麺」という麺を使っているのだそう。太めでもちもちっとした食感と力強い味わいがたまらず、そこにザリザリッ、ザクザクッとした「うまい粉」たちが絡みつき、そのパサパサ感をピリ辛オイルがうま〜くコーティングして、いやもう、未体験としか表現しようのない美味しさ。
 おつまみ麺と言いつつボリュームもちゃんとあって、食べ盛りをだいぶ過ぎた2名のお腹はこのへんで満腹に。
 最後にこってりした麺を食べたところで飲みたくなった「生ビール」(350円)を追加し、もはや身も心も大満足です。というか、せんべろセットだけで大満足してしまって、むしろお店に申し訳ないとすら……。

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ここにきての生ビールがうまい

 というわけでふり返ってみましょう。今日ふたりで頼んだ合計、セット料金のお酒が2杯に、おつまみが4品。僕が選んだパスタがプラス100円だったから、ここまでで合計、2100円。そこに最後のビール2杯を加えて、締めて合計、2800円! え〜と、割り勘してじゃないですからね? あくまでふたり合わせて。
 あの〜、ウシータさ〜ん、やっぱり意味がわかりません!

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おそれおおくも、ラズ先生と並びで壁にサインをさせていただきました
パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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