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メーガン妃が反面教師?人間関係の穏やかな整理法 | 辛酸なめ子

独特の観察眼と味のあるイラストで人気を博す漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さんが、このたび、新刊『新・人間関係のルール』(光文社新書)を上梓されました。辛酸さんは「まえがき」で次のように述べています。「『新・人間関係のルール』なんて偉そうなタイトルで恐れ入ります。人間関係は人生の問題の多くを占めていて、ストレスの原因になったり、時には生きる活力の源泉になったりします。(中略)今回は、自分としては少し難易度の高いコミュニケーションの体験や気付きについて書かせていただきました」。本書の執筆中、世界を激変させるパンデミックが発生し、人間関係にも新しいルールが生まれつつあります。本書の刊行を記念して、本書の中から3つのトピックを公開いたします。第2回目は「人間関係の断捨離」です。

メーガン・マークルする

 平成から令和になるタイミングで、部屋を片付けたり服を処分したりしてスッキリしました。
 そして人間関係も整理したいという欲求が芽生え、LINEで、自慢ばかりしてくる人やコントロールしようとする人などを非表示に。しばらく心穏やかに過ごせそうです(ただ完全には削除していないので相手から連絡があったら通知が表示されてしまいますが……)。

 国は変わって、イギリス王室に嫁いだメーガン・マークルが、彼女の過去の行動によって名前がスラングになってしまった、というニュースを見ました。

「メーガン・マークルする」

 このように使われるそうで、動詞の意味は、自分にとってメリットがない人との縁を断ち切る、というもの。FOX NEWSのサイトには用法も載っていました。

 Have you been “Meghan Markled?”

 She did a Meghan Markle on her friends as soon as she became famous.

 など……。

 女優として有名になり、王室に嫁ぎ、ステップアップするたびに不必要な友人知人を断捨離してきたそうで、その中には父親や義妹など親族も含まれていたため、冷酷な振る舞いだと揶揄されています。
 自分のレベルに合わない、利用価値がない人と疎遠になるいっぽうで、セリーナ・ウィリアムズやジョージ・クルーニー夫妻などのセレブとは積極的に交流。切り捨てられた側が淋しくなるのもわかります。でも多かれ少なかれ人にはそういう部分があるような気がします。

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 思い返せば小学校時代の女子の派閥で、最初は向こうから話しかけてきたイケてないグループと一緒にいたのが、途中からもっと勢力が強いグループの子に気に入られて、もう見向きもせずそっちの世界に行ってしまったり、誰もが思い当たるふしはあるのではないでしょうか。

 人と疎遠になるのは、レベルや波長が合わなくなる、という理由も大きいです。縁を切ることもあるし、切られることもあります。LINEで私からメッセージを送っている女友達がいるのですが、だいたい返事は「そうだね」とか五文字以内。空回り感が切ないです。

人間関係の整理法

 自分側から縁を切ろうとする場合、どのように人間関係を整理するのが穏便なのでしょう。

 久しぶりにネットフリックスの「テラスハウス」の軽井沢シーズンを観ていたら、クールなモデルの美女が、自分にアプローチしてきたウザい系の男子について

「あの人ムリだったから安未(かわいいのに毒舌で話題になった小室安未のこと)の世界から消したの」

 と、言い放っていました。
 そして彼女はテラスハウス内でムリだと思った男子を軽く無視していたら、その男子は泣いてしまいました……。お互い20歳前後なので、青春の1ページとして、後々思い出になりそうです。収録が終われば会うこともないでしょう。

 大人の場合、仕事関係だったり、共通の友人がいたりして、今後関わってきそうな人だと縁を断ち切るのは難しいです。

 私の場合、フレンドリー感を出しながらやたらコントロールしようとしてくる知人女性に困っていました。
 時々来るメッセージにどう対処したものかと思い、とりあえず「ありがとうございます!」とお礼を伝えてから、相手の誘いを断る、という方法に落ち着きました。ただ断るだけでなく、感謝を言っているので中和されます。

 占い師の友人に相談したら、もう返事はLINEのスタンプくらいにした方が良い、とのアドバイスが。会話を発展させたくない、会おうという計画をうやむやにしたい時はスタンプが便利で、無視より角が立ちません。

 ある女友達は、仕事で邪魔をしてくる上司に困っていて、京都の有名な縁切り神社にお参りしたと言っていました。その「安井金比羅宮」という神社では、「縁切り縁結び碑」という石の穴をくぐり、縁を切りたい人を書いた形代を碑に貼ることでご利益が得られるそうです。
 彼女は「私の足を引っ張る人すべて」と縁を切りたい欄に書いたところ、仕事の問題も良い形でなくなったと話していました。縁切りの最終手段です。

執着が強いタイプへの対処法

 そして一番断捨離が難しいのは、執着が強いタイプ。ストーカー的な存在です。
 怖いので連絡したりSNSで話しかけてくるのはやめてほしい……でもそれを伝えたら逆上されるかもしれないのでどうしたら良いかわからない、そう悩んでいる女性は少なくないと思われます。人間関係で修羅場をくぐっていそうな知人に相談したことがあります。

占い師Aさんのアドバイス

「怖いので近付かないでください、と相手に伝えるのはどう思いますか?」

 と聞いてみると……

「それは絶対やめた方がいいです。何かしらリアクションすると相手がかまってもらっていると思って喜んでしまう可能性があります」
「あとは、私は、相手の幸せをただただ祈って、関心がこちらに向かないように念じたりします」
「それは、心が負けそうな時ならやってもいいと思います。でも、一番良いのは『無』です。相手に何の感情も抱かないことです」

 と言われて、なるほど、と思いました。こちらが恐怖だったり困惑だったり何らかの感情を抱くと、たぶん目に見えない波動で相手に届いて、刺激してしまうのだと思います。
 とにかく「無」、何も思わない、相手のことを忘れることで、相手もこちらを忘れてくれるかもしれません。ふとした時に思い出して怖くなるのでやっぱり難しいですが……。

アート関係Bさんのアドバイス 

 気難しい人をたくさん相手にしていそうなアート関係のBさんに

「どうやって、ヤバい人とは縁が切れますか?」

 と、相談すると

「縁は切らないで、うまく対応するしかありません」

 というお返事。どういうことでしょう?

「ヤバい人を断ち切ると、また次のヤバい人が出てきます。ロケットペンシルのようにあとにどんどん控えているんです。だから、今いるヤバい人は魔よけみたいなものだと思って、断ち切らず対処しましょう」

 たしかに、好きな人の逆で、苦手な人とかキモい人も、本命的な存在はたいてい1人です。
 その人がいなくなると、また別のヤバい人が現れる、というのもわかります。好きな人もイヤな人も心を占める存在は一度に1人だけ……とか言うとまた喜ばせてしまいそうですが、そういう人を引き寄せてしまった自分の中にも原因があるのでしょう。

 学びだと思って経験を受け止めて、できるだけ無心を心がけたいです。

 いつか人徳が高まったら、自然とそういう人はいなくなっていることを願います。

このたびの教訓

ムリな相手に対しては〝無〟になる。

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著者プロフィール

辛酸なめ子(しんさんなめこ)
1974年、東京都生まれ、埼玉県育ち。 漫画家、コラムニスト。女子学院中学校・高等学校を経て、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。恋愛からアイドル・スピリチュアルまで幅広く執筆。著書に『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)、『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『女子校礼讃』(中公新書ラクレ)、『無心セラピー』(双葉社)、『電車のおじさん』(小学館)など多数。

『新・人間関係のルール』目次

まえがき
【その1】人間関係のテクニック
【その2】試練への対処法
【その3】同調圧力のかわしかた
【その4】コロナで変わった人間関係
【番外編】人間不信になる前に
あとがき

好評既刊『大人のコミュニケーション術』

note連載「新・大人のマナー術」


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