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お金の増やし方、ではなく、価値ある使い方を学ぶ……新刊『お金の賢い減らし方』(大江英樹著)まえがき・目次公開

「昨今の人々のお金に対する異常な関心の高さを見ていると、”お金に支配されている”人が多いように思えてならない。しかし、”お金は支配してこそ役に立つ”、決して振り回されてはならないのだ。ではいったい、どうすればよいのか?」――新刊90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(大江英樹著)のまえがきと目次を公開。「お金の本質」を掴むと、価値ある使い方が見えてくる……お金に関する誤った認識、過剰な不安を払拭し、「貯める・増やす」の呪縛を解き、人生後半を豊かに生きる!

90歳までに使い切る お金の賢い減らし方

はじめに


まずは本書を手に取っていただいたみなさん、そして本書を買ってくださったみなさん、誠にありがとうございます。

本書のテーマは「お金」です。

およそ世の中には、お金に関する本が山のように出ていますが、基本、種類は2つしかありません。

1つは「お金の増やし方」に関する本です。これはじつにいろいろなタイプの本がさまざまな著者によって出版されています。世の中に出ているお金の本は、そのほとんどがこのタイプ(お金の増やし方)の本といっていいでしょう。

そしてもう1つ、こちらは、数は非常に少ないですが「アンチお金主義」ともいうべきタイプの本です。昔ベストセラーになった『清貧の思想』という本などはまさにこのタイプでしょう。

人類の歴史において過去、何度もバブルが繰り返されてきましたが、バブルが終焉(しゅうえん)を迎えると、いつもこのタイプの本が出てきます。これらはいわば「お金至上主義」に対するアンチテーゼや反省としてしばしば登場してくるものです。

でも本書は、そのいずれでもありません。

じつは「お金至上主義」も「アンチお金主義」も、その根っこは同じなのです。それは「お金の呪縛に陥っている」ということです。

お金の増やし方をひたすら追い求める人はもちろんのこと、「お金がすべてじゃない!」と強く主張する人も、結局はお金の呪縛に陥っている点は同じです。お金を眺めている方角が異なるだけです。お金に縛られているから、「もっと増やしたい」とか、反対に「お金より大切なものがある」と叫ぶのです。

この本は、そんな「お金の呪縛を解くこと」を目的にしています。「たかがお金」なのです。お金を中心にものごとを考えるから、お金の呪縛に陥ってしまうのです。

大事なのはお金ではなく、「モノ」や「サービス」であり、それを提供してくれる「人間」です。世の中の問題はお金が解決するのではなく人が解決するのです。「お金」はそうしたモノやサービスを手に入れるための道具にすぎませんし、問題を解決してくれた人に対する〝感謝のしるし〟として存在しているのです。

そう考えると、お金に対する見方が根本から変わってきます。お金は使ってこそ価値のあるものです。

本書では「人はなぜお金が好きなのか」「お金ってじつは単なる記号にすぎない」、そして「お金は増やすよりも使う方が楽しい」といった話が次々と登場してきます。

まずは第1章、お金に対して人々が持っている勘違いを紐解くところから始めていきましょう。

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90歳までに使い切る お金の賢い減らし方

《目次》

はじめに

第1章 ホンネ、タテマエ、そして勘違い
―― 日本人のお金観と歪んだ認識を考える

(1)マネー本が流行る裏に見えるもの 
『地味本』と『派手本』
西銀座チャンスセンター一番窓口
人間の心理は本質的に〝損失回避的〟
本当はどちらもあまり役に立たない
「節約・裏ワザ本」も世の中にあふれている
(2)それにつけてもカネの欲しさよ
お金に関するホンネとタテマエ
お金について考えることへの忌避感
お金はきれいなもの? 汚いもの?
なぜお金は汚いものと考えるのか?
俺、不幸になりたい!
(3)となりに蔵が建ちゃ、わしゃ腹が立つ
嫉妬の論理
うまくやりやがって!
ウルトラマンとバットマン――正義のヒーローは清貧か、富豪か
報酬の差はこんなに大きい
自分が損をしてでも相手に儲けさせたくない
「みんなで貧乏になればいいじゃない」という間違い
(4)日本人はお金に疎いという嘘
じつは日本人は世界一博打が好き?
江戸時代、日本は「投資先進国」だった
散々なスタートだった郵便貯金
「貯蓄は日本人の気質に合わない」
殖産興業、そして戦争遂行のための貯蓄奨励
戦後も続いた「国家総動員体制」
貯蓄と博打が大好きで、投資が嫌いな日本人
(5)不労所得という勘違い
日本では最高神ですら肉体労働をしている
「投資の儲けは不労所得」という思い込み
「経営者」と「投資家」は同じことをやっている
投資のことがよくわからない理由
投資教育でも金融教育でもなく、「お金の常識」を教えることが大事

第2章 お金について少しだけ深く考えてみよう
――お金の歴史とお金の持つ役割


(1)お金はどうやって生まれた?
お金の本質をわかりやすく解説
お金が持つ3つの役割
「あまおう」と「とちおとめ」、どっちが美味しい?
お金は腐らない
物々交換から始まったってホント?
貨幣は信用から生まれた
貨幣は信用の尺度
貨幣が生まれる前から信用システムは存在した
(2)お金は税金を払うためのクーポン券だった
信用はいったいどこからやってくる?
福澤諭吉から渋沢栄一へ
貨幣は税金を払うためのクーポン券
税金は何のために必要なのか?
税金を払うということの意味
(3)ヤップ島とビットコイン
南の島にあった石のお金
「石貨」はビットコインだった?
時代とともに貨幣の形は変わってきた
貨幣発行で儲ける方法?――製造コストはどんどん下がっている
仮想通貨の将来
(4)お金は感謝のしるし
4つ目の「お金の役割」
〝楽をしてお金を儲けることができない〟理由
お金のむこうに人がいる
感謝のやりとりだと考えると、心の痛みが和らぐ
(5)可愛い子には旅をさせよ
お金は血液
世の中にお金を回す4つの方法
寄付で世の中にお金を回す
日本人はお金が大好き
可愛い子には旅をさせよ――成長して戻ってくる

第3章 〝お金を増やしたい〟という呪縛
――お金の増やし方の決定的な間違い


(1)誰もが物語に惑わされている
正体不明の不安
「老後」は不安だけれど、関心はない
「老後2000万円問題」も、単なる作り話
〝わからない〟から物語に頼ってしまう
介護も実態をよく考えてみよう
老後を過剰に心配しすぎない
(2)「FIREに憧れる」という勘違い
増える「FIREしたい」人々
なぜ、仕事を早く引退したいのか?
現在の仕事に対する閉塞感
「経済的な自立」とはどういうことか
いくらあればFIREが実現するのか
資産形成も資産管理もそれほど簡単ではない?
①1億円貯められますか?/②短期で利益を上げることの困難さ/③4%での運用を維持することが可能か
(3)お金を増やすのはそれほど難しくない
定年時に貯金がなくても不安はなかった理由
お金を手に入れる5つの方法
誰もが高収入の仕事を探すことばかり考えている
貯めるというのはとてもシンプルなこと
増やすのも、やり方次第ではシンプルになる
投資が難しい最大の理由は「人間の心理」にあり
(4)「投資」に求めたがる免罪符
最も労力を使わずに実行できる投資
資本主義は自己増殖するシステムである
それでも感じるうしろめたさ
『論語と算盤』の間違った解釈
会社を応援したいのであれば、別に株を買う必要はない
(5)「死」から逆算して考えてみるお金の意味
働きアリの末路は?
死ぬ時に一番お金を持っている
やはり、「老後不安」というナラティブに踊らされている
「死」から逆算して考えてみること

第4章 お金の使い方、減らし方
――お金を使って豊かになる


〈序〉お金は増やすよりも減らす方が楽しい
ここから考えていきたいこと
お金を減らすことで得られるもの
新しい富裕層が興味を持っているもの
〝天引き消費〟という発想
(1)好きなことにお金を使う
1.「お金がないから」というごまかし

50代から必ず出てくるセリフ
「お金がない」ってどういうこと?
好きなものはもったいないとは思わない
ここにも「同調圧力」がある
ごまかさずに、自分の意思にしたがうべき
2.サラリーマン脳は捨てよう
サラリーマン脳とは何か?
なぜ「サラリーマン脳」になってしまうのか?
なぜ「サラリーマン脳」ではダメなのか?
どうすれば「サラリーマン脳」を捨てられるか
〝成仏〟すればサラリーマン脳から脱却できる
(2)思い出にお金を使う
1.〝体験〟にお金を使う楽しさ

人生で一番大切な仕事
モノ消費よりもコト消費
「体験」は投資にもなる
誰も「思い出」を奪うことはできない
2.旅は人生
人間が賢くなる方法は「人」「本」「旅」
旅から学ぶもの
旅の3つの楽しみ
旅の最大の楽しみは「思い出」
(3)人にお金を使う
1.自己投資よりも他人への投資を

若いうちの自己投資には意味がある
中高年齢期の自己投資とは
資格を取ることが目的化する〝罠〟
〝人に投資をする〟とはどういうことか?
なぜ〝人に投資をする〟ことが大事なのか
①自分にとってのメリット/②社会にとってのメリット
2.偽善でも、自己満足でもかまわない
「寄付」という行為へのネガティブな反応
金持ちだから寄付するわけではない
日本人があまり寄付をしない理由
自己満足でどこが悪い?
寄付は極めて利己的な行為でもある
寄付がもたらすもう1つの効用――税金の使いみちを指定できる
「ふるさと納税」で寄付する人が増加
(4)価値にお金を使う
1.無駄なものなど何もない

「用だけを済ませる人生」で、見落とすもの
「効率」よりも大事なもの
「無駄」とは何か?
「無駄」と「無意味」は異なる
2.よいものを安く、という間違い
日本の給料が上がらない理由
「コスパがよい」ことが日本経済を低迷させている
「コスパがよい」ことを求めると、際限ない地獄に陥ってしまう
値上げしないことが美談になる困った風潮
時代の変化で戦略を間違えた
売れているものは、高くても売れている
〈結び〉でも、こんなお金の使い方はやめよう
「見栄」と「義理」にお金を使う時代
リア充ぶりをアピールして何になる
人に注目されるために物を買う心理
義理よりも人情の方が大事
人のためにお金(時間)を使う大切さ

第5章 お金よりも大切なもの
――お金に人生を支配されないために


〈序〉お金より優先すべきものは
お金よりも大切なものは世の中のものすべて
お金よりも優先すべき事柄とは?
(1)時間
「時は金なり」の意味
機会費用の考え方
時間は有限だから
お金よりも時間の方が大事な理由
「時間を味方につける」という考え方
(2)信用
ビジネスにおける「信用」の優先順位
サラリーマンには理解しづらい
自営業は「信用」が金になる
いくら金を積まれてもやらない仕事
「信用」は仕事の約束を守ることだけではない
(3)健康
健康を失わないうちにお金を使う、という発想
沖縄旅行で考えたこと
旅行に行けなくなる理由の変化
必要以上に老後不安を持つなかれ
90歳までにお金は全部使い切る
(4)幸福感
幸福と幸福感
「職業の道楽化」と「努力の娯楽化」
承認欲求が満たされる時
2つの承認欲求

おわりに
参考文献・図版クレジット


以上、光文社新書『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(大江英樹著)より一部を抜粋して公開しました。



◎内容

◇死ぬ時に一番、お金を持っている日本人
◇〝老後不安〟という「物語」、〝貯める・増やす〟という「呪縛」
◇「コスパ最高!」が日本経済を低迷させている
◇お金よりも優先すべきこと――時間、信用、健康、幸福感……

あなたの「お金観」を根底からくつがえす!

世の中には「お金の増やし方」の本が溢れている。経済コラムニストである著者への執筆依頼も、資産の運用や管理に関するものがほとんどだ。お金はもちろん大事、清貧の思想などと言うつもりはない。だが、昨今のお金に対する異常な関心の高さを見ていると、「お金に支配されている」人が多いように思えてならない。しかし、「お金は支配してこそ役に立つ」、決して振り回されてはならないのだ。ではいったい、どうすればよいのか。
本書では、お金を増やすことばかりに偏った世間の風潮に対し、誤った認識、過剰な不安を払拭するとともに、お金の本質を深く掘り下げ、人生を豊かに生きるための具体的な「お金の使い方」の考えを提示。死ぬ時に一番お金を持っているといわれる日本人のお金観に一石を投じる。

「お金の本質」を掴んで、人生後半を豊かに生きる!

光文社新書『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(大江英樹著)は、全国の書店、オンライン書店にて好評発売中です。電子版もあります。

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【著者プロフィール】


大江英樹(おおえ・ひでき)
1952年大阪府生まれ。経済コラムニスト。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。著書に定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)、『となりの億り人』(朝日新書)、『知らないと損する年金の真実』(ワニブックスPLUS新書)、『あなたが投資で儲からない理由』(日経プレミアシリーズ)、『経済とおかねの超基本1年生』(日経ビジネス人文庫)など多数。


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