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和食ファミレスひとり鍋|パリッコの「つつまし酒」#191

確実にひとり鍋ができそうな店は?

 鍋の美味しい季節ですね〜。
 いやまぁ、鍋なんてもんはいつでも美味しいんだけどさ。というか、美味しいものはいつ食べたって美味しいんだけどさ。夏に鍋を食べたって、冬に冷やし中華を食べたって、美味しいことは間違いない。けどやっぱり、気分なんですよね。なんだか急に寒くなっちゃったな〜、なんて言いながら、ぐつぐつと湯気を上げる鍋のことをふと思い出す。あ、今夜は絶対、鍋だな。と、思ってしまったらもう、それ意外の選択肢なんて考えられなくなる。はっきりとした四季のある日本ならではの、食の楽しみですよね。
 というわけで、今夜は絶対、鍋! しかもなんだろう、そりゃあ家でも頻繁に作りますよ。鍋は。失敗がなく、なにを入れたってたいてい美味しいし、栄養もある。野菜をいっぱいとれるヘルシーさもいい。だけどこう、今夜は人に作ってもらいたい気分。それをしっぽりと、ひとりじめして味わいたい。そんなわがままを言いたい夜も、あるじゃないですか。
 よし、どっかでひとり鍋だ。となるとどこだ。この時期、居酒屋でもけっこう出しているだろうけど、「確実に」となると近場では思い浮かばないな。しかも、作った鍋を鍋敷なんかに置いてもらって、それを食べるんじゃあ気が済まない。コンロにのっていて、目の前でずっとぐつぐつしていてほしい。今夜の僕は、とことんわがままですよ。
 う〜んう〜ん……と考えていて思い出しました。「和食さと」! その名のとおり、和食のファミリーレストランですね。個人的には、子供のころに親に連れられて行ったことがあったっけ? なかったっけ? くらいの距離感なんですが、近年「さとバル」なんてサービスを始めていて、けっこう飲めるらしいと噂に聞いていました。で、そういう店ならありそうじゃないですか? この時期、ひとり鍋メニューが。
 そこでさっそくホームページを見てみると、やっぱりあるある! しかも、ちゃ〜んとコンロにのっている。決まりだな!

「和食さと」

なんと、牛、豚、鶏、全部入り!

 幸い地元エリアに1軒ありまして、無事到着。そばうどん、寿司に天ぷら、とんかつやカキフライ、それから豊富な一品料理と魅力的なメニューが満載ではありますが、今日は迷わず「さとの特選鍋」のページへ直行。すると、こんなシステムになっていました。
 まず、「お肉」「たっぷり牛もつ」「牡蠣」の3種類から、メインの具材を選ぶ。続いて「コク旨醤油だし」「鶏塩だし」「チゲだし」の3種類から、だしを選ぶ。最後に「ラーメン」「うどん」「ごはん」の3種類から、シメを選ぶ。それで税込み、1428円。こりゃあ楽しいじゃないですか。醤油だしのもつ鍋からシメラーメンなんて絶対に間違いないし、牡蠣チゲ鍋からのうどんもいいな。が、今日は初めてということもあり、メインはオーソドックスに「お肉」、そして「鶏塩だし」を選んでみましょうか。シメはごはんだな。それから、いろいろあるトッピングのなかから、やっぱり外せない「京とうふ」(108円)。生玉子も必ず欲しい。え〜と、「生玉子」が53円で、「生玉子 ヨード卵・光」が86円か。ここは清水の舞台から飛び降りる気持ちで、ヨード卵いっちゃいますか!
 で、酒。噂のさとバル、セルフ式の飲み放題が120分で1428円だって。かなりお得だけど、今日はそこまでじゃないかな。なんせ、しっぽりの日だし。「キリン一番搾り<生>」の、ジョッキじゃなくてグラスのほうで。よし完璧! お願いしま〜す。

「キリン一番搾り<生> グラス」(438円)

 すぐに、1杯目の生としては絶妙にちょうどいいビールが到着し、ぐいっとひと口。あ〜、うまい! ひとり鍋スタンバイ完了。さぁ来い、鍋。

鍋セットも到着

 続いて鍋到着。いやぁ、びっくりしましたね。こんなに豪華なもんがやってくるとは。だってさ、まぁ初めてだし、くらいの感覚でチョイスした「お肉」ですが、なんと、牛肉、豚ばら肉、鶏もも肉、さらに鶏つくねと、4種類も入ってるんですよ? それもた〜っぷりと。家で鍋やるときって、基本、肉は1種類じゃないですか。どんな味になるんだろう。さらに、お野菜もあれこれいっぱい入ってる。もう、嬉しくて嬉しくて、にやけヅラがもとに戻りませんよ。
 さっそく着火だ。えいっ。

いいんですか? こんなに……

最後のお楽しみは……

 火をつけると鍋はすぐにぐつぐつし始め、5分ほどで肉には火が通ったようですね。牛肉の贅沢な味わい、最愛の豚ばらの安定感、ぷりぷりで柔らかい鶏肉、ほんのりしょうがが香る鶏つくね、どれも間違いなく幸せの味です。また、じんわりとちょうどいい鶏塩だしがうまいな〜。
 さらに食べごたえのある野菜たち。特に前半は、たっぷりのもやしがしゃきしゃきで良かったですね。家で作る鍋にもやしって入れないけど、ボリューム出るし、うまいし、こんどから選択肢に加えよう。

鍋って、天才だよな

 さて、ビールがなくなりました。おかわりのお酒はなんにしようかしら。え〜と……お、「さと特選本格焼酎<麦・芋>」いいな。え? しかも値段が、グラス1杯163円!? まじで! じゃあ、それのいもにしよう。と、タッチパネルでの注文を進めてゆくと、さらに嬉しいポイントが。なんとオーソドックスなロック、水割り、お湯割りに加えて「ソーダ割り」のボタンがあるじゃないですか! 好きなんだよなぁ、いもソーダ。さとさん、わかってらっしゃる。もう、大好き。

「さと特選本格焼酎<芋> ソーダ割り」(163円)

 いもソーダがやって来てまたびっくり。想像では、もっと小さめの、無骨なぐいのみかなんかでやってくるもんだと思ってたんですよ。ところが、めちゃくちゃ頼もしいサイズのタンブラーにたっぷり! これが本当に163円なの? 天国かここは。

お野菜がくったりと

 黙々と食べすすめていた鍋もいよいよ終盤戦。いろんな肉や野菜からだしが出て、ずっと美味しくなり続けるのが鍋という料理のすごいところですよね。すっかりとろとろになった白菜に、それが染みちゃってもう……たまんねぇっす。
 最終的に具材をさらいきって大満足。ただし、最大のお楽しみはこれから! そう、シメの雑炊ですよ。

これこれ!

 さすがに食の細くなってきた近年、家で鍋をやっても、シメまで食べるってことはなくなってきました。が、「鍋のシメの雑炊」って、確実に、この世でいちばんうまい食べもののなかのひとつですよね。せっかくの外食ひとり鍋。思いっきり堪能させてもらいましょう。
 ぐつぐつとだしを煮立たせたら、ごはんを投入し、そこへざっくりと混ぜたヨード卵をふわり。あんまりがむしゃらにかき混ぜないようにして、おおよそ火が通ったらあとは弱火にし、ごはんがだんだんと柔らかくなってゆく過程を楽しみつつ、ちびちびと。
 あぁ、うめぇ。うめぇよ、やっぱりシメの雑炊はよぉ。そこに言葉はいらないよ。ただ、酒のおかわりはいる。すいませ〜ん、芋焼酎、こんどはロックでお願いします!

ロックもたっぷたぷだった

「つつまし酒」からのお知らせ

この連載「つつまし酒」は2022年12月23日(金)の更新から隔週連載となります。23日の次の更新は来年1月6日(金)の予定です。今後もパリッコさんの晩酌ライフを覗きにきていただけますと幸いです。


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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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