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家「丸亀製麺」やりたい放題|パリッコの「つつまし酒」#197

リサイクルショップでまれに起きる奇跡

まずはこの写真をごらんください

 さて、突然ですがみなさま、僕は今どこにいるでしょうか? え? 「丸亀製麺?」 思いますよね、そう。だって、書いてあるもん。器の底にはっきりと。だけど残念ながら不正解! 正解は「自宅」でした〜。
 いやいや、盗んできたものではありません。我が家が丸亀製麺なわけでもありません。僕の趣味のひとつに「リサイクルショップディグ」があります。僕、街でリサイクルショップを見つけると、飛びこまずにはいられない体質のもとに生まれてきてしまったんですよね。決して骨董品屋ではなく、あくまでリサイクルショップ。そこでなにを見るかというと、まぁ、キッチングッズや食器コーナーということになりますわな。特に、酒造メーカーや飲食店のノベルティグッズなど、いわゆる、買おうと思っても買えないもの。ああいうのって、一時的に情熱を注いでシールを集め、応募してゲットしてみたりするんだけど、数年経つとなんだかんだ飽きてしまって、大掃除の機会に手放されてしまう、なんてことも多いんですよね。これが狙い目。
 というわけで僕の部屋にはその手のグッズが大量にあるわけですが、この「丸亀製麺」のどんぶりは、レア中のレアでしたね〜。しかもなんと、お値段たったの80円! 誰かが売ってくれるというなら、その10倍の800円、いや、20倍の1600円は出すのに! 100倍の8000円だと微妙だけどさ。

なんと80円!

 そもそもどういった経緯でこのどんぶりがここにあるのかはわかりません。が、僕自身はなんの後ろめたいこともしていない。ただ、リサイクルショップで売られていた器を購入した、というだけ。というわけで、僕は晴れて「丸亀製麺のどんぶりを持っている男」になったというわけなんですね。奇跡に感謝。

充実の「家丸亀飲み」の日々

 そもそも僕、丸亀製麺が大好きなんですよ。シンプルに、めっっっちゃうまくないっすか? あのうどん。でさ、コロナ前なんかは丸亀さんもノリノリで、飲み放題なんかもやっていた。行っとけばよかったな〜、あれ。今考えると夢の企画ですよね。ただ現在は、僕の行動範囲にある丸亀製麺で、アルコール類の提供をしている店舗はありません。つまり、「丸亀飲み」をするには、テイクアウトを利用するしかない。つーわけで、週末に家族で昼を食べるときなんか、2週間に1回くらいの割合で利用しちゃってますよね。丸亀製麺テイクアウト。

「ぶっかけうどん 冷」(360円)

 で、買ってきたうどんをそのまま食べてももちろんうまい。ただそれよりも気分が上がるので、これまでは、家にある適当などんぶりなんかに移し替えて食べていたんです。けれども一段階パワーアップした男であるところの僕は、これまでとは一味違う。お店で買ってえっちらおっちら運んでくる途中で、若干片寄ってしまったぶっかけうどん。それを、正真正銘本物のどんぶりに移し替えてしまえば、とたんに目の前には、“丸亀製麺そのもの”としか言いようのない光景が展開されてしまうわけです!

これはもう、丸亀製麺

 今日はさらにそこに、最近発売されてお気に入りの(期間限定品なのかな?)「紅ショウガかき揚げ」(170円)なんかものせちゃいましょうか。

どーんと

 いやぁ、なんなんすかね、この、丸亀製麺のかき揚げの迫力。これがたったの170円? すごすぎますって。
 箸で突き崩すのも難儀するほどのこいつをざくざくざくっと割って、たれとうどんとねぎをたっぷり絡めて、ズズズーっとすする。むちむちぷりぷりとしたうどん、しゃきしゃきのねぎ、軽快なサクサク感のかき揚げを噛みしめるたび、玉ねぎの甘さと、紅しょうがの酸っぱ辛さが口のなかに広がる。そこですかさず缶チューハイ。家だとこれができる。あ〜も〜最高〜!

これは……夢?

 続いて丸亀製麺のテイクアウトといえば、花形は「うどん弁当」ですよね。たったの390円からラインナップがあり、玉子焼きやきんぴらなど、サイドのおかずも頼りになる実力派。なかでも僕は「紅しょうがバラ天うどん弁当」が好きですね。すいませんね、紅しょうがが好きすぎて。

「紅しょうがバラ天うどん弁当」(390円)

 ただこれもまた、買ってきたままの状態だとほんのり寂しい。容器が簡易的な、テイクアウトの宿命ですよね。ところが、例のどんぶりに移してしまえば一転。見た目の美味しそうさ10割り増しの大ごちそうに早変わり! 今日はビールでいっちゃおうかな〜。と、気分によって好き勝手なお酒を合わせられるのも、家丸亀の魅力です。

う、うますぎる!

もっと自由にはばたけるのでは?

 なんてことをここしばらくやっていて、気がついたことがあります。待てよ、と。ちょ、待てよ、と。公式のどんぶりを使っているとはいえ、ここは自宅。もっとやりたい放題やったって、誰もしかってくる人はいないだろうと。つまり、丸亀製麺のメニューにないうどんをこの器で食べてしまったっていいんじゃないの? というわけで、これはわくわくしますよね〜。
 そこで、今回もぶっかけの冷、それから「ファミリーマート」で、好物の冷凍おつまみ「焼いてる! こてっちゃん コク味噌味」を買ってまいりました。

こてっちゃんは税込み338円

 そうしたらおもむろに、うどん、こてっちゃん、刻みにんにく、鷹の爪を、油をひいたフライパンで、ジューっと炒め合わせてしまいます。

お互いにまだ「え?」「え?」と思っている状態

 ここに味をみつつうどんのつゆを加えて炒め合わせれば、そう、丸亀ぶっかけの「ホルモンうどん」風アレンジの完成〜! というわけです。

罪なビジュアルだ

 味? そりゃああなた、言わずもがなですよ。ゆであげたあとに炒められ、なおもきっちりとしたコシを残すうどん。そこにたっぷりの油と牛もつの旨味が絡まり、それでいて、最後に加えたうどんつゆの影響でしょう。決して下品にはなりきらない、「育ちのいい不良」というようなイメージ。えぇ、ビールと合わせて瞬殺でした。

テストの点数はいいやつ

 ここからの僕は、もはや歯止めのきかない状態へ。大好きなカップうどんである、日清の「どん兵衛 鬼かき揚げ天ぷらうどん」だって、丸亀どんぶりで食べちゃいます。

鬼かき揚げの満足度がすごいんだよな
いつもどおりに作って
丸亀どんぶりへ!

 あぁ、うまいうまい。もはやカップうどんとは思えず、こういう店みたいだ。で、こういう店があったら、たとえ地方にあっても通っちゃうくらいうまい。
 または、5食入りで200円くらいの、もう本当になんでもない冷凍うどん。それをチンして水で締め、だし醤油、刻みねぎ、市販の揚げ玉をかけただけの、ザ・質素家うどん。ささっと済ませたい昼なんかにたまに食べるメニューですが、こいつも丸亀どんぶりに盛ってやるだけで、なんだか誇らしげな表情すら感じる一杯に早変わりです。

馬子にも衣装

 実際、この“本当になんでもない冷凍うどん”が、妙に美味しく感じるんですよねぇ。いや〜つくづく、器って偉大だなぁ。

おまえ、こんなにうまかったっけ?
食べきるといつでもそこに「丸亀製麺」の文字

 と、偶然チート級のアイテムを手に入れ、うどんライフがはかどりまくりの昨今。うっかり落として割ってしまったりしないよう、一生大切に使っていきたいと思います。
(次回の更新は3月17日です)


つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方
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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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