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今夜は参鶏湯|パリッコの「つつまし酒」#218

ちょうど今、食べたいメニュー

 さて、新年一発目のつつまし酒でございますが。それなりに長く生きてきて、近年やっと気がついたことがあります。それは、「お正月のごちそうに飽きてくる時期、想定よりだいぶ早い」ということ。
 僕は、全国的に朝からだらだらと酒を飲んでいても許されるお正月の雰囲気が大好きで、毎年それはもう楽しみにしているんです。けれども、主におせち料理に代表される、味が濃くて冷たいおつまみたち。そしてそれに合う日本酒。これらを朝から晩まで飲み食いし続けていると、翌日、いや、早ければ三が日初日の夜には、「なんか違うテイストのもん食いたいな〜」という気持ちになってくる。加齢の影響もあるんでしょうが、そもそも、ふだんはそんな食生活を送っていないわけで、違和感もあれば胃腸に負担がかかるのも当然なんですよね。
 具体的に言えば、カレーとか、インスタントラーメンとかのジャンク寄りのもの、もしくは、おかゆとかうどんとかの、優しい〜もの。どちらにせよ、温かいものを体が欲しだすわけです。と、いうことを昨年のうちに見越しておいた僕。今だ! というタイミングで食べられるように、買っておいたんですよね。そう、「参鶏湯サムゲタン」を。

「参鶏湯」

これは、大好きなやつだ

 参鶏湯とは、若鶏のおなかに高麗人参、もち米、なつめ、にんにくなどを詰め込んでじっくりと煮込んだ、韓国の代表的なスープ料理。その存在感からしていかにも心身を癒してくれそうで、滋養に富んでいそうで、お正月開けに食べるのにぴったりそうじゃないですか。とはいえ、「若鶏のおなかに高麗人参やもち米を詰める」という、とても日常的でない調理工程に、いきなり取りかかるにはもうちょっと心の準備がいります。少なくとも、今ではない。そこで市販品!
 なんとこちらの参鶏湯、見てのとおりのレトルトパックに、丸鶏が丸ごと1羽入っているという本格派らしいんですよ。「カルディ」で、約1000円で購入しました。レトルト食品で1000円はちょっと高いような気もするけど、本当に丸鶏が入っていて、しかもちゃんと美味しかったとしたら、それはそれでありなんじゃないか? そんな興味と期待を込めて買っておいたこの参鶏湯で、今夜は飲んでやろうというわけなんですね。
 では、いざ開封!

どすん!

 おぉ、パッケージを手にしていた段階では、どんなもんなんだろ? という気持ちがあったのですが、開封してみるとインパクトがすごいわ。これは、本気の丸鶏だ。しかも、その全容を確認しようと箸で上下を返そうとしたところ、それは叶わずにほろほろと身が崩れてしまう柔らかさ。むしろ、よく今までこの形を保ってたな! と驚くほどです。

肉の量もすごい

 肉の標高が高くてスープの量が少なく、煮るのに苦労したらどうしようという事前の心配も、完全なる杞憂。鍋を火にかけ、ぐつぐつとやっていると、どんどん肉がほぐれていって、全体が超具沢山のスープ状態に。そこに、参鶏湯っていわゆる鍋料理だろうという解釈で、邪道かもしれないんですが、用意しておいたねぎも投入。

ねぎを加えて
さらにぐつぐつ

 すでに部屋中に充満しているたまらない香りをかげばわかる。これは、確実に僕が大好きなやつだ。全体がよ〜く温まったところで、いただきま〜す!

小鍋にとりながら

逆に聞きたい

 ほほう、スープはにんにくがかなり効いていて、それに加えてふわりと薬膳っぽい香り、さらに濃厚な鶏だしが沁みる味。もち米が入っているので、その独特の甘みも美味しさのポイントのひとつになっていますね。
 塩気は薄めなのですが、そもそも参鶏湯とは、好みで塩やコショウなどを足しながら食べる料理なんだそう。そのとおり、自分好みに調整してみると、も〜最っ高としか言いようがありません!
 骨までほろっほろに煮込まれた鶏肉も、部位ごとに味わいが違って楽しいな。

マッコリ飲もう

 お酒は、せっかくの韓国料理なのでマッコリを合わせてみました。これまた、お正月で疲れた胃腸をいたわってくれそうな(酒なのに?)優しい味わいがいいですね。ちなみに器は、先日トークイベントを見に来てくださった方から韓国のおみやげにいただいたものがちょうどあったので、それを使って。はたして、家でひとりで飲むのにこの器が必要なのかどうかは別として、専用の大きめのれんげみたいなやつで、がぽっと注いで飲むマッコリ、気分が出ていいですね。

豆腐なんかも足しながら

 それにしてもこの参鶏湯、食べても食べてもずっとうまい。そして、普通に考えて2、3食に分けるか、家族でシェアするくらいの大ボリューム。そう考えると、家で気軽に参鶏湯が食べられて1000円は、むしろ安い! リピートは確実でしょう。

肉がなくならね〜

 そして参鶏湯晩酌もいよいよラスト。これまた邪道なのかどうなのか、僕にはわかりませんが、参鶏湯にはもち米が入っているので、玉子を投入するだけでライトなシメ雑炊風になるはず。

つまりこうして
こう

 これがさぁ? 美味しくないわけあります? 逆に聞きたいんすけど、ここまで見ておいてなお、「で、うまかったの?」って、思う人います? 死ぬほどうまかったに決まってるじゃないですか! ほんとにもう。
 家参鶏湯、略して家鶏湯。今後、我が家の定番になることは間違いありません。
 てな感じで、今年もよろしくお願いします〜。


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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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