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君は「上州もつ次郎」を知っているか?|パリッコの「つつまし酒」#223

ゆで太郎の新業態

 昔ながらの立ち食いそばチェーンである「ゆで太郎」。たまに、もらったほうが引いてしまうくらいの量のトッピング無料クーポン券をくれることでもおなじみで、僕も大好きなお店のひとつです。
 そのゆで太郎に関するある噂を最近、なんとなくは聞いていたんです。どういう噂かというと、ゆで太郎に「上州もつ次郎」という、別形態のお店が併設された店舗が、少しずつ増えているらしいというもの。ゆでる太郎に、もつの次郎。名前から推測するに兄弟だ。どんなもんか、一度行ってみたいもんだ。とは思いつつ、目先の忙しさにかまけ、すぐにそのことを忘れてしまったりする日々を送っていました。
 ところが先日、とある街を歩いていたら、あったんですよね、兄弟併設店舗が。そこで近寄っていってメニューを確認すると、これがなんとも魅力的。その日はもう食事済みで胃袋に余裕がなかったんですが、絶対に早めに来てみようと心に誓ったのでした。
 帰宅し、我が家から最寄りの店舗を探すと、なんと数年前まで会社員をしていた時代にたまに行っていた「東池袋春日通り店」がその業態になっているらしい。懐かしのお店に久しぶりに行ってみたいし、その変化っぷりも見てみたいし、こりゃあちょうどいい。というわけで、お店に向かいま〜す!

「ゆで太郎 / もつ次郎 東池袋春日通り店」

衝動を抑えきれない!

 うんうん、確かに進化してるわ。兄弟店に。青と白が基調の看板の対比がよく晴れた空に映えますね。さてさて、ではあらためてメニューをじっくりと見てみましょう。

もつ次郎のメニュー

 なるほど、二大看板は「もつ煮」と「もつ炒め」で、そのバリエーションやサイドメニューでかなり幅広く楽しめそうです。大きなメニューとしてはもうひとつ「もつ鍋ら〜めん」なんてのがあって、これも絶対うまいに違いない。
 さてどう攻めるか。初訪問だから、やっぱりもつ煮は抑えておきたいよな。そして、にんにく系大好きっ子としては、ニラにんにくバージョンを選びたいところ。で、僕は今日、ここに酒を飲む目的でやってきた。ということは、定石としては単品。けれども、もつ煮定食が売りの店。食べてたら絶対に、白メシとも合わせてみたくなるに決まっている。となると、「ニラにんにくもつ煮」(670円)と「ごはん(並)」(200円)、合わせて870円の組み合わせ? いやいや、ならばそこにお吸いもの、冷奴、漬ものがつき、それぞれがいいつまみになりそうな「ニラにんにくもつ煮定食」(910円)のほうが、どう考えたってお得だろう。よし、それにしよう。もつ炒めやもつ鍋ら〜めんは残念だけど次回のお楽しみだ。
 長くなりましたが、以上のような方針をたて店内へ。券売機の前に立つと、当然のことながら、もつ次郎の他にもうひとつ、ゆで太郎のメニューコーナーもあるわけです。念のため、と思ってそっちも見てしまったのがまずかった。というのも、トッピングコーナーのメニューが豊富すぎて、もはや居酒屋レベル。おつまみ天国なんですよ。

ゆで太郎のトッピングメニュー

 僕に、この僕にですよ? 「カレールー」(200円)なんていうメニューを提示してしまったら、ねぇ? 購入しないわけがありますか? カレーのアタマで飲むの、大好きで、酒場にあれば必ず頼むメニューですよ。加えて熱いのが「ハーフカツ」(200円)。もう、衝動を抑えきれない!
というわけで、数分後に目の前に広がっていた光景がこちら。

やりすぎた……

 もう、あきらかにやりすぎ。平日の昼からお祭り騒ぎ。しかしまぁ、缶ビール(240円)を加えても、余裕で1000円台に収まるお会計。たまにはこんな日があってもいいか。

無料トッピングの豊富さも嬉しい

 僕がかつて通っていたころはここまでではなかったと思うんですが、0円トッピングコーナーなんていうのも新設されていて、これまた嬉しい。醤油やソースあたりは別として、かけそばに加えたらそれだけでたぬきそばにランクアップしてしまうあげ玉なんか、ふつうにお金をとってもいいくらいだと思うんですよね。おつまみのアレンジにもいろいろと使えそうだし。

飲み屋としてもすごすぎる

 ではでは、待望のもつ次郎飲みを初めていきましょう。まずは当然、もつ煮から。

ニラにんにくもつ煮

 これが! さすがの専門店だけあって、くさみのないたっぷりの豚もつが柔らか〜く煮込まれています。味つけはみそ醤油系がベースで、想像よりも甘みの少ないキリッと味。個人的にすごく好きですね。そこにニラとにんにくの風味と食感、それからピリリとした辛味が効いていて、問答無用にうまいです。

オリジナル調味料「赤鬼」がまた合う

 こいつでよく冷えたビールをぐいっとやって、さて、僕の目の前には、まだ潤沢なおつまみたちが控えている。肉も野菜もたっぷりなカレーのアタマは、ほんのりと甘くてカレー粉が香る、昔ながらの和風タイプ。ハーフカツもかなりの厚みと大きさで、これがどちらも200円というのは、飲み屋と考えるとありがたすぎます。当然、ひと切れ目のかつはソースで、それ以降はカレーにどぼんとダイブさせて。あぁ、なんて幸せなんだ。

大好きなタイプのカレー
揚げたてのかつがうまい
そしてこう

 途中、あまりにもおつまみが豊富すぎ、思わず「レモンサワー」(240円)を追加。

「本搾り」なのが嬉しい

 ラストはいよいよごはんを、もつ煮、カレーの両方の皿に投入し、2種のミニ丼セットとして、思うぞんぶん堪能させてもらいました。

どっちも最高!

 初めての訪問ゆえ、興味が爆発してしまって、思わずあれこれ注文をしすぎてしまったけれど、次回以降はその日の気分に応じて、たとえばもつ煮単品に、100円の「太刀魚のちくわ天」で軽く一杯、なんて使いかたもできそう。なにせここはゆで太郎なので、シメにせいろそばを1枚とって、なんてこともできますしね。
 いやはや、噂のもつ次郎、リーズナブルなもつ定食屋、そしてそば屋としてはもちろん、飲み屋として見ても、実力すごすぎました。あわよくば、家の近所にもできてくれないかな〜。


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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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