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好きだ! 「ライフ」の弁当が|パリッコの「つつまし酒」#214

夢のリニューアル

 僕の生活圏内にやたらと多く、ふだんからもっともよく利用しているスーパーマーケット、それが「ライフ」。近畿圏と首都圏を中心に300店舗以上もあるらしいので、ご存知の方も多いでしょう。
 で、僕がよく利用するなかのひとつ、西武池袋線の「大泉学園駅前店」。ここがですね、今年の4月に大々的にリニューアルされたんです。もともと駅に隣接した「ゆめりあフェンテ」という商業施設の1階にあったんですが、ビルの全面的リニューアルにともない、なんと1階のみならず2階の大部分にまで売り場を増設。1階は従来通りの一般的なスーパーであるものの、鮮魚コーナーなどはかなりパワーアップし、丸々1本の、東京のスーパーではなかなか目にしないような珍しい魚がずらりと並ぶようになったりして楽しい。加えて2階。こちらは「FOOD STREET」と名付けられ、近年ライフさんが力を入れている、自然派健康志向のプライベートブランド「BIO-RAL」の商品を中心としたオーガニック系食品コーナー、種類豊富な冷凍食品コーナー、広々としたお惣菜系コーナーなどを新設。もうね、1階と合わせて、僕にしてみたらテーマパークですよ。夕飯のおかずに必要な買いものに行っただけのはずが、うっかり2時間くらい店内を徘徊していた、なんてことだって珍しくない、めちゃくちゃ楽しい場所に生まれ変わってしまったんです。

「ライフ 大泉学園駅前店」

鮭弁天国

 なかでもやっぱり、見て回るのにいちばん楽しいのは「FOOD STREET」でしょうか。広いフロアにさまざまなジャンル、いろとりどりのお惣菜やお弁当、ちょっとしたカップデリなんかがずらーっと並ぶ様子は壮観で、目移りしてしまってなかなか買うものが決められないほど。
 とりわけ昨今、地元の友人知人の間で話題騒然なのがお弁当。行ったことのある誰と話しても、「あそこのお弁当、美味しいよね!」「最近、ちょっとでも疲れてたらあそこのお弁当ですませちゃってる」「うちなんか、週2、いや週3で買ってるよ!」なんて具合。
 実際、のり弁、幕の内、カツ丼、カレーなどのオーソドックスものから、雑穀米を使ったヘルシーもの、エスニックをはじめとした外国料理、中華、粉もん、寿司などの鮮魚系、さらに、こだわりのおかずがメインの創作系など、本当に幅広くて選びきれず、そしてどれを買って帰っても美味しい。そんなお弁当を家でちまちまつまみにしつつやる晩酌の、楽しいことといったら!
 というわけで今回は、その幸せを少しでもみなさんにおすそわけできたらと、ライフのリニューアル以降に買ったお弁当のなかから、印象的だった5品ほどをご紹介したいと思います。当然、お店には膨大な種類があるわけで、「これがマイベスト5!」とかそういうことではありません。あくまで、僕が一期一会に出会ったなかの一部を、あぁ、あれ美味しかったなぁ……と反芻するだけの内容となっておりますのであしからず。
 で、まず最近の大ヒットといえばですね、これだけは外して語れないのが「大切り! 銀鮭西京焼きの海苔弁当」。

「大切り! 銀鮭西京焼きの海苔弁当」(税込み645円)
全容

 メインの銀鮭西京焼きがどーんと中央に鎮座し、その下に海苔をのせたごはん。コロッケ、ちくわの磯辺揚げ、玉子焼き、きんぴらごぼうに、漬けもの。
 でね、とにかくこの鮭が「大切り!」の看板にいつわりなしで、信じられないくらいでっかいんですよ。いるの? こんな鮭本当にいるの? っていう。

決して小さくはない弁当箱を覆いつくす勢い

 そんでこれがまた、身が肉厚でしっとりと柔らかく、西京焼きらしい甘みと深みが堪能できる超上質な鮭。鮭欲を満たすのにこんなにお手頃で満足度の高いお弁当はそうそうないと思うし、サイドのおかずやごはんにいたるまでしっかりとうまい。ライフさん、かっけーっす!
 ちなみに、鮭モノは人気のようで数種あり(季節ごとにもいろいろとあるのかも)、たとえば、よりグレードの高い「国産有機玄米と鮭塩麹焼きの海苔弁当」。

「国産有機玄米と鮭塩麹焼きの海苔弁当」(1058円)

 これなんか、どう見てもさっきよりおかずが少ない。そこに……グッときません? 

超厚切り

 この鮭が、香ばしくて味が濃くて柔らかく、よくだしの効いたふわりとしただし巻き玉子も絶品で、まさに匠の一品。給料日の夜に買って帰って、いつもよりちょっといい日本酒でも用意して、静かにじっくりと味わいたい一品となっております。

玉子にも感動

やりすぎだって

 さぁどんどんいきましょう! って、気づけば次も鮭ものなんですが、正直に言ってしまうと、いや、つけがたいんです。甲乙は。けれども、今日出た鮭もののなかでは個人的に、僅差でいちばん好きかもな〜っていうのが次。そもそもちょっとジャンルが違うので、順位をつける必要もないんですけどね。あ、前置き長いですか? すいません。
 ずばり、「紅ずわいがにと焼きサーモンハラス飯」!

「紅ずわいがにと焼きサーモンハラス飯」(537円)

 いや〜ははは……これがもう〜。僕のなかでは、語弊を恐れずに言うならば「うな重」に迫る勢いのごちそうなんです。

これだもん

 さっきその他の鮭ものとはジャンルが違うと言いましたが、そもそも部位が違いますからね。甘めのたれをしっかりと絡めて焼かれた、鮭ハラス。それがシンプルな醤油味の茶飯の上にたっぷりのって、小ねぎと錦糸卵のアクセント。
 さらにですよ! 見えてますよね? そう、けっこうしっかりめの量の紅ずわいがにといくらまでのっている。それでこのお値段。ライフさーん!

やっぱりごはんもうまい

 とろりとして、しっかりと脂ののったハラスとごはんのハーモニーは、特にひと口目、それなりの期待値を設定していた脳みそがバグってぶっ飛ぶほどのうまさ。当然その後も、大切に大切に、かにやいくらもよ〜く味わいつつ、個人的には後半、山椒なんかを加えつつ食べすすめると、もうずっと感動が続く。すごいです。すごいお弁当です。

「彩り海鮮丼寿司」(537円)

 海鮮系も充実していまして、この「彩り海鮮丼寿司」なんかもう、お正月にこのまま家の玄関のドアに飾っておきたいくらいの、めでた美しさですよね。
 それぞれのネタの鮮度も抜群で、まぐろ、海老、大葉にのったいかそうめん、いい。細切りたくあんのアクセントも憎い。なかでもピンポイントで感動したのが、とびこののったユッケ風サーモンとねぎとろ、その境目部分! わかります? まったりとろりは共通しつつ、しかしそれぞれ微妙に味も食感も違う、その両者が融合してごはんと混ざり合う官能的な味わい。開発部の人、天才か!

言いたかないけど、宝石箱

 肉系もいろいろあるんですが、リーズナブルさと満足度の落差にいちばん驚いたのは「牛すき焼き重」かな。

「牛すき焼き重」(645円)
いただきま〜す!

 黒く染まった牛肉、ねぎ、しらたきからなるすき焼きがごはんを覆う。サイドには温泉玉子と紅しょうが。こんなのもう、間違いあろうはずがないもん。組み合わせだけで金メダルだもん。
 なのにですよ、さらに貪欲に我々を幸せにしてこようと仕掛けてくるライフさん。お肉の層が想像を遥かに超えて厚いんです。

いったん肉をよけてみたら、高さでピントが会わなくなるくらい

 体感として、ご飯と同じくらいの厚みで牛肉が敷き詰めてある。しかも、ねぎやしらたきの下にまで、執拗に肉が入りこんでいる。やりすぎだって。
 甘めのすき焼き味の柔らか牛肉が食べごたえ抜群で、とろしゃきのねぎやよく味の染みたしらたきもいい。タイミングを見て加える温泉玉子も、紅しょうがもいい。それらと白メシの相性なんざ、いうまでもなくいい。つまり、すべてがいい。

いいしかない

 特に後半3つのお弁当なんか、あの、わかってるんですよ、比べるものではない。比べるものではないけれども、たとえば駅弁だったと考えたら、それぞれ3倍の値段がついていてもおかしくない美味しさと豪華さですよ。
 あぁ、なんて楽しくてありがたいんだ、ライフのお弁当。次はどんなお弁当に出会えるかな。
 って、もはやライフの回し者としか思えないほどの絶賛記事を書いてしまいましたが、誓って言います。私、はライフの回し者ではありません! けどまぁ、回し者と思われてもいいかなぁ。こんだけ楽しませてもらったら。


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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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