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【76位】ドナ・サマーの1曲―愛を感じて、シンセサイザーの波形のまにまに

「アイ・フィール・ラヴ」ドナ・サマー(1977年7月/Cassablanca/米)

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Genre: Euro Disco
I Feel Love - Donna Summer (July 77) Cassablanca, US
(Donna Summer • Giorgio Moroder • Pete Bellotte) Produced by Giorgio Moroder and Pete Bellotte
(RS 418 / NME 3) 83 + 498 = 581

この曲が〈NME〉で堂々の3位!と聞くと驚く人もいるのではないか。いや本当に、イギリス人は大好きなのだ(なのに〈ローリング・ストーン〉のせいで……)。

当曲は、ディスコだ。当時世界を席巻していたディスコ・ブームのなかでも、特大級のヒットとなった数曲のうちのひとつにして、電子楽器を駆使した「ミュンヘン・サウンド」の嚆矢となったディスコ・ソングでもある。「なにもかもシンセでやった」のが、新しかった。すなわち、この1曲がなければ80年代のシンセ・ポップ、そののちのテクノもエレクトロ・ポップも「全部なかった」かもしれない――という一大革新を音楽シーンに持ち込んだのは、イタリア人プロデューサーのジョルジオ・モロダーだった。

まず耳を奪われるのは、ベース・ラインだ。輪唱調に微妙にタイミングをずらした2本のベースが、同じ動きを繰り返す。これがシーケンサーでコントロールされ、モーグ・シンセサイザーから流れ出すすべての音やリズムと同期する。この明滅するストロボみたいな「機械的グルーヴ」の快楽は、人類がまだほとんど体験したことがないものだった。

ベース・ドラムと「声」だけは、人間があやつった。歌ったのは、「ディスコの女王」の異名で知られるドナ・サマーだ。この1曲が彼女をスーパースターの座につけた。アメリカ人の彼女が、ミュンヘンの名門スタジオ「ミュージックランド」で、たった一度だけのテイクでこのヴォーカル・トラックを録音したのだという。

この当時、典型的なディスコ・ソングは流麗なストリングスでバッキングするものだった。ベースは手弾きに決まっている。だから「アイ・フィール・ラヴ」のクールネスは衝撃的で、あのブライアン・イーノが狂喜したのは有名な話だ。もちろんブロンディの「ハート・オブ・グラス」的な曲はすべて、これがあったればこそだ。

当初はB面曲として発売されたのだが、7月にタイトル・トラックとして出し直したところ人気が爆発。豪、オーストリア、ベルギー、オランダ、それからもちろん英でも1位(を4週連続)。独と伊は3位。米ビルボードHOT100でも6位にまで達した。さらにイギリスではリミックスも出すたびに売れて、82年には全英21位、95年には同8位にまで上昇。同国でのカヴァーも多く、英シンガー、ジミー・ソマーヴィルによるブロンスキ・ビートのヴァージョン(84年)に象徴されるように、ゲイ・ディスコの最強アンセムとしても有名だ。そして今日に至ってもなお、きっとずっと変わらず、愛され続けている。

(次回は75位、お楽しみに! 毎週火曜・金曜更新予定です)

※凡例:
●タイトル表記は、曲名、アーティスト名の順。括弧内は、オリジナル・シングル盤の発表年月、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●ソングライター名を英文の括弧内に、そのあとにプロデューサー名を記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
川崎大助(かわさきだいすけ)
1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌「ロッキング・オン」にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌「米国音楽」を創刊。執筆のほか、編集やデザイン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌「インザシティ」に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)、『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社新書)、訳書に『フレディ・マーキュリー 写真のなかの人生 ~The Great Pretender』(光文社)がある。
Twitterは@dsk_kawasaki


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