背徳の「学生ハンバーグ」飲み|パリッコの「つつまし酒」#115
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背徳の「学生ハンバーグ」飲み|パリッコの「つつまし酒」#115

「ステーキのあさくま」に行こう

 とある平日のお昼時。仕事が休みの妻と、どっかにお昼ごはんでも食べに出ようか、ということになりました。厳粛なる会議の結果、「ステーキかハンバーグの気分」という結論が導き出され、すぐにお店の検討を開始。そういえば、家からそう遠くない西武池袋線、大泉学園駅に隣接するビルに、「ステーキのあさくま」ってステーキ屋さんがあったことを思い出しました。思い出したらがぜん気になりだし、よし、今日はあさくまに行ってみよう! と、いうことになったわけなんです。
 あさくまの前身は、1948年に名古屋で創業した「割烹旅館朝熊西店」。その後1962年に「ドライバーズコーナー・キッチンあさくま」を開店し、ステーキレストランとしての歴史が始まったという老舗。なんと、よくステーキ屋さんで見る、肉の焼き加減を自分好みに調節できる熱々の丸い鉄こと「ペレット」を開発し、世に広めたのもあさくまなんだとか。
 現在は全国に数十店舗を展開するものの、ステーキレストランとしての業態は東京23区でここだけだそうで、へ〜、そんな貴重な店がけっこうな近所にあったんだな〜。
 ただしその日は、初めてということもあり、無難にステーキとハンバーグのセットかなんかを注文。緊急事態宣言中でお酒も出していなかったので、ノンアルコールで黙々と食べ、あ〜美味しかった。なんて言っておとなしく帰りました。が、その時に無性〜に気になったメニューがあるんですよね。それが「学生ハンバーグ」なる一品。写真を見るとステーキのようなんだけど、確かにハンバーグと書いてある。そこに「学生」という言葉がくっつくちょっと変わった語感もあって、あ〜気になる気になる。よし、次こそは学生ハンバーグを頼もう! そして、それをつまみに飲んでやろう! と、決意したのでした。
 その計画を昨日のお昼に実行に移してきたわけなんですけれども、いや驚きましたね。あさくまランチ飲みの満足感、僕の想像をはるかに超えてました……。

「学生ハンバーグ」とはなにか?

 要素が多いので順を追って説明していきますね。まずは肝心の「学生ハンバーグ」。こちらが税抜き1550円。その値段で、サラダまたはコーンスープ1皿、食べ放題のライス&お漬物&カレー&ソフトクリームがついてくる。ね? もうすごいでしょ。ちなみに、学生ハンバーグが2枚のる「大学生ハンバーグ」なるメニューは2110円とさらにお得だったんですが、180gの肉塊×2は僕にはとうてい食べられそうになかったので、今回は進学をあきらめました。
 で、この日はなんとも嬉しいことに、キャンペーン中につき、ふだんなら230円のランチグラスビールが150円! あさくまさん、お願いだからこのキャンペーン、一生続けてもらえないですかね……。

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すごくちゃんとしたサラダ

 注文するとすぐにビールとサラダが到着。ちなみにあとから聞いた噂によると、あさくまはコーンスープもすごく美味しいらしいんですが、とりあえず今日はサラダを選びました。で、さらに驚くべきことに、コロナ前はこのサラダ、「サラダバー」形式で食べ放題だったんだそう。それでも、こんなにちゃんとしたサラダを出してもえらえるんだからなんの文句もありません。新鮮な野菜たちのシャキシャキ感と、ドレッシングの爽やかな酸味があいまって、すでにビールがすすんじゃうな〜。

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これが学生ハンバーグ!

 しばし後、学生ハンバーグ到着。わ、やっぱりステーキなんじゃないの? これ。と思いきや、あらびきの牛肉をぎゅぎゅっとみっしり整形した、正真正銘のハンバーグのようです。

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頼もしい食感

 いざ食べてみると、いわゆるジューシーでふわっとしたハンバーグとは方向性が違い、肉を食ってる! っていうワイルド感のある味わい。ハンバーグとステーキの中間のような。赤身肉ではないので脂の旨味もしっかりだし、玉ねぎたっぷりのステーキソースの味も濃厚。食べすすめるほどに鼻息が荒くなっていくような、独特のハンバーグですね。いや〜、うまいな。わかりやすくうまい。すみませ〜ん、ビールおかわりで!
 ……しかし、考えてみればあれですよね。いや、ちゃんと調べたわけじゃないけど、きっとこのメニュー、あさくまの偉い人が、「お金のない学生さんにもお腹いっぱい、本当のお肉の美味しさを味わってもらいたい」なんていう立派な志から生み出したメニューに違いないですよね。それを酒のつまみにしちゃおうってんだから、けっこう背徳感のあることをやってるよな、自分。とかいって、ビールを口に運ぶ手を止めるつもりは毛頭ないのですが。
 さて、あさくまのすごいところはまだまだあって、食べ放題のライスが、白米とガーリックライスから選べてしまうんです。もちろん貧乏性の僕は「せっかく手を加えていただいたなら」とガーリックライスをチョイス。これがまた学生ハンバーグに合いすぎるんですが、ここでみなさんにひとつだけ、絶対に忘れないでおいてほしいことがあります。それは、「この時点でごはんを食べすぎないで! なるべくがまんして!」ということ。理由はあとからわかるので。

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切るときにどうしても出る肉片とライスを絡めて食べるのも至高

パーティーは終わらない

 さて、ついに学生ハンバーグをすっかり食べつくし、ビールも2杯飲んでかなり満足。ただし、あさくまに来たらどうしても味わってほしいものがもうひとつあるんです。それが、食べ放題のカレー。

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第2部の幕開け

 ご覧くださいこの光景。まさにアンコール! パーティーはまだ終わってなかった! そう、ここからが第2部の幕開けなのです!
 いやね、このあさくまのカレーが実は、いわゆるファミレスの食べ放題カレーの域を大きく超え、そんじょそこらの専門店が全力ダッシュで逃げ出すほどの超〜絶品なんですよ!
 とろっとろに煮込まれた牛すじが、これでもか! これでもか! と、大げさじゃなくて本当にこれでもか! と入っていて、その深い旨味とまろやかさ、ほのかなスパイシーさが融合し、さすが肉の専門店が作るカレーといった味わい。前回なんか前情報がなかったから油断していて、カレー好きの僕は思わず、嬉しい悲鳴を店内に響き渡らせてしまったほどなんです。

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これでもか! まだ足りないか!

 さてさて、第2部のおともは、こちらも230円とお得なグラスワインにしましょう。ご覧のとおり、グラスにたっぷたぷに注いでくれるサービス精神が嬉しすぎ。

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牛すじカレーとワインの優雅な昼下がり

 牛すじカレー、ひと口食べるごとにう〜んとうなってしまうくらい、本気でうまいな。これがまた、赤ワインと合うんだ。あ〜幸せ……。
 と、第2部も心ゆくまで堪能しつくしたら、満足度も満腹感も200%。お酒3杯も含めたトータルの税込金額が……え? 2101円!? いやちょっと、とんでもなくないですか? あさくまランチ飲み。

パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。
2020年9月には『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)という2冊の新刊が発売。『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。Twitter @paricco
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