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【41位】アレサ・フランクリンの1曲―姐御の元祖「叱り節」が、激動の世相を蹴っ飛ばした

「リスペクト」アレサ・フランクリン(1967年4月/Atlantic/米)

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※こちらはスウェーデン盤シングルのジャケットです

Genre: Soul
Respect - Aretha Franklin (Apr. 67) Atlantic, US
(Otis Redding) Produced by Jerry Wexler
(RS 5 / NME 226) 496 + 275 = 771 

伝記映画のタイトルになるほどの代表曲だ。そして「ソウルの女王」といえば、彼女を置いてほかにはいない。ということはつまり、この曲は、ソウルの歴史に燦然と輝く名曲であるのと同時に、「女性の歌」としても時代を揺り動かした、大型のナンバーだったということだ。つまりは稀代のポップ・スペクタル。だから〈ローリング・ストーン〉のリストでは5位にランクされていた(のだが、〈NME〉のせいで……)。

当曲は、アレサ・フランクリンのアトランティック移籍第一弾アルバムに収録された。ジェリー・ウェクスラーのプロデュースのもと、彼女が本領を発揮し始める時代のとっかかりに、いきなり、この曲があった。シングル発売され、ビルボードHOT100では2週、R&Bチャートでは8週のあいだ1位を独占し、発売2ヶ月後には50万枚を突破。つまりドアーズそのほかサイケデリック・ロック勢が「サマー・オブ・ラヴ」を満喫しているなかで野太く売れ続け、グラミー賞の2部門制覇まで彼女にプレゼントした。

というこのナンバーを書いたのは、こちらも不世出のソウル・アーティスト、オーティス・レディングだった。彼の持ち歌としても重要な位置にある曲で、ファンキーかつ情感豊かに盛り上がる、名曲と言っていい仕上がりだった。が、65年に発表された彼のヴァージョンを「改変」したのがフランクリン版で、歌の主人公を男性から女性に変えて、あとは各所を微妙に動かした「だけ」なのだが、それが、すさまじい効果を生んだ。

歌のストーリーは、主人公が愛する人に対して「もうすこし尊重(Respect)してくれよ」と告げるというもの。レディング版では「俺が家にカネ持って帰ってるのに」お前は俺を大事にしてくれない、といったオヤジ調のぼやき節だった。しかしフランクリン版は、歌の最初っから飛ばしまくり。しょっぱなの「What you want!」から、高域で声が出まくりで、つまり「頭ごなしに男を叱りつけている」という構図。そして「私を尊敬せよ」と宣告する。すでに十分に強く、自立している女たちを――と。これが、受けに受けた。

歌詞の改変は、アレサの妹、キャロリンも手伝ったという。ムカつく男に「宣言する」歌を作る大作戦を、姉妹が楽しそうに進めた様子は、たとえば「R-E-S-P-E-C-T(アール・イー・エス・ピー・イー・シー・ティー)」なんてコールする部分に、よくあらわれている。公民権運動の時代、さらには女性解放運動が加速していく時代の先頭にて、高らかに、快活に、誇り高く立つことの美しさを「実証」した、歴史的な1曲だ。

(次回は40位、お楽しみに! 毎週火曜・金曜更新予定です)

※凡例:
●タイトル表記は、曲名、アーティスト名の順。括弧内は、オリジナル・シングル盤の発表年月、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●ソングライター名を英文の括弧内に、そのあとにプロデューサー名を記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
川崎大助(かわさきだいすけ)
1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌「ロッキング・オン」にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌「米国音楽」を創刊。執筆のほか、編集やデザイン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌「インザシティ」に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)、『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社新書)、訳書に『フレディ・マーキュリー 写真のなかの人生 ~The Great Pretender』(光文社)がある。
Twitterは@dsk_kawasaki


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