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フットボール都市ロンドンの生態系(前編)|サッカースカウトが見る現場目線のフットボール vol.12

お知らせ

この連載をもとにした書籍『スカウト目線の現代サッカー事情』が2024年2月15日に発売されます!書下ろしも含めて大幅な加筆修正を行いました。ぜひチェックしてみてください!

イングランドのプロクラブでサッカースカウトとして活動する田丸雄己(@scoutyuki)さん。
現場目線でフットボールの今を伝える連載もの第12回は、田丸さんが活動拠点にしていた「ロンドン」について紹介。世界一のフットボールシティと言っても過言ではないロンドンですが、地域ごとに人種も価値観もフットボールクラブのありかたも様々です。前編の今回は西・南西エリアを中心に解説します。

フットボールが生き方を示す街

ロンドンは底知れぬフットボールタウン。10を超えるプロクラブが同じ地域内に本拠地を置き、月に行われる公式戦はゆうに100を超える。週末だけでは足りないフットボール狂のためか、ピッチの管理会社との兼ね合いか、試合は土日に限らず、平日も月曜日から金曜日まで開催される。しかも昼間にでさえ。この土地でフットボールに休みはない。各クラブの歴史は100年をゆうに超え、それぞれの街におけるコミュニティの心臓として機能している。7部や8部のクラブでさえフットボール専用球技場、クラブハウス、スタンドが存在し、試合の日にはそこに人が集まり、毎試合伝統的な応援でチームに声援を送る。習慣的な、規則性のある、まるで宗教の儀式に近いものがそこにある。

「フットボールはこの街では宗教だ」という言葉も耳にするが、その裏には、それを信奉し、熱狂する人々がいる事実に加え、そのようなフットボールが存在することによって人々の社会性が形成されている側面がある。そんな人々の行動を作り出す、生きる力を生み出すフットボールに携わる人々はどこか誇らしげで、その認知度からも自信を持ってフットボールに貢献している。またロンドンではよく、“Football is a way of life.”(フットボールは生き方である)という、人々の生活の一部にフットボールが存在していることが当たり前であることを表すフレーズもよく聞いた。

家族、仕事、そしてフットボール。それほどまでにフットボールが息づく街、ロンドン。この章と次の章ではフットボールのメガシティであるロンドンにフォーカスしたスカウティングの世界を、様々な角度から検証していく。特に、ローカル色が強く出るU21までの年代のスカウティング戦略を深掘りする。前編の舞台は西・南西ロンドンだ。

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