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本質的な幸せに気づくほど、人も組織も変わる。|起業家・斉藤徹ロングインタビュー③

GAFAの覇権は、コロナ後も続くのでしょうか。日本IBMを退職して起業し、何度も倒産寸前まで追い込まれ、それを乗り越えてきた起業家の斉藤徹さんは5月19日発売の新刊『業界破壊企業』で、今、かつてのGAFAのように業界を破壊しているイノベーション企業をピックアップして解説しました。
本書を読めば、イノベーションはどうやって起こすのか、イノベーションを起こすのはどんな人なのか、ポストコロナの時代に生き延びるのはどんなイノベーション企業なのかがわかります。
それを知ると、イノベーションがぐんと身近になります。大規模な技術革新はムリでも仕事の現場で小さな革新を生むことは可能です。
コロナ後を見据え、自分にとってのイノベーションとは何かを、斉藤さんと一緒に考えてみませんか。 取材・文=今泉愛子

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取材は先週末、Zoomを使って行いました。写真下が斉藤徹さん。

そもそもイノベーションとは何か

――斉藤さんは、イノベーションについても詳しく説明しています。起業を考える人だけではなく、企業で働くビジネスマンにも仕事のやり方として参考になる部分が多いですよね。社内でも常に「新しいことをやれ」「何か企画を考えろ」と言われますから。

斉藤 イノベーションを、まず「価値創造タイプ」と「価格破壊タイプ」に分けて解説しました。「価値創造タイプ」は、外で気軽に音楽を聴けるようにしたソニーのウォークマン、「価格破壊タイプ」は、びっくりするような安価で服を提供したユニクロと言えば、わかりやすいでしょう。

――『業界破壊企業』では、最新スタートアップ約20社を、さらにそこから「プラットフォーム型」「ビジネスモデル型」「テクノロジー型」に分類しています。

斉藤 「プラットフォーム型」は、airbnbやトラック輸送のマッチングを手掛けるConvoy(コンボイ)、「ビジネスモデル型」は、オンラインフィットネスを提案するPeloton(ペロトン)、「テクノロジー型」は、排気ガスやゴミから新しいエネルギー資源を生み出すLanza Tech(ランザテック)などを詳しく紹介しました。

新刊『業界破壊企業』の内容を2分間にサマリーしたホワイトボード・アニメーション。制作は、「イノベーションチームdot」が担当。

――こうしたビジネス事例は、新しい企画を考える上でとても参考になります。

斉藤 新しいことはもちろんそうですし、今、やっていることに対しても、自分の中で意味づけや価値を再定義するきっかけになるといいですね。これまで忙しさに埋没していたところから一歩離れて、自分の仕事なり、職場なりを見られるようになって、今、自分がやっている仕事はどういう価値を世の中に生み出して、どういう人たちを幸せにしているんだろうか。どういう人が自分の仕事によって笑顔になるんだろうかと、問い直す。
 人々の笑顔が思い浮かぶと、多くの仕事は楽しくなります。顔を見ずに数字ばかりが前面に出てくると、辛くなってしまうんです。自分の成長を感じて、自分の幸せを基点にして、その幸せが伝播していく。それは新しいイノベーションであっても、今やっている仕事でも同じですから、わざわざ新しいことをやらなくても、目の前にある仕事を自分の中で再定義して、意味づけしなおせば、ハッピーイノベーションになります。

――取り組み方を変えるだけでも新しいことができる。まさに働き方改革です。

斉藤 ゼロから仕事を見直して、自分にはこんな貢献できるんだと再定義する。今、生まれつもりになって、目の前にある仕事を再認識できたらいいですよね。

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⻫藤徹(さいとう とおる) プロフィール
株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役。ビジネス・ブレークスルー大学教授。専門分野はイノベーションと組織論。30年近い起業家経験をいかし、Z世代の若者たちとともに、実践的な学びの場、幸せ視点の経営学とイノベーションを広めている。『再起動(リブート)』(ダイヤモンド社)、『BEソーシャル!』(日本経済新聞出版社)、『ソーシャルシフト』(日本経済新聞出版社) など著書多数。

儲けより何に投資するかを考える時代

――投資家の人たちにもとても有益な情報源になります。

斉藤 起業家からすれば、今はお金に対する需要が減っているんです。世の中全体でお金の価値が減っていて、人の価値が高まっているんです。大きな資本はそれほど必要とされなくなっているんです。だから資本家は、環境や社会に配慮した企業に向けたESG投資にも目を向けるようになるでしょう。お金は墓に持っていけないんだから、今の幸せに投資する。そのためには周りの人の笑顔が大切だと。コロナをきっかけに多くの方が気づき始めていると思います。
 これまでのようにお金を投資して、儲ける、利ざやを抜くということよりも、いかに自分の投資活動が世の中に価値を提供するかを考えてほしい。その行動が人々の笑顔を増やすのか、それとも地球の環境を良くするのか、社会の二極化をなくすのかと。投資家こそ本質的な幸せに目覚めてほしいですし、実際、すでに目覚めている人は多いです。

――ハッピーイノベーションは、投資家にとっても注目のポイントですね。

斉藤 もちろんすべての投資家がそうではないんです。ヘッジファンドの人たちはそう簡単には変わらないですし、大きく世界を動かしている人たち、政治家や企業のトップ、大きなお金を動かしている投資家は、やっぱりコントロールフリークなところがありますから、そう簡単には変わりません。彼らが変わるときが、本当に世の中が変わる時だと思いますけど。

――それはまだ少し時間がかかりますか。

斉藤 逆に聞きたいですよね。あなたたちはいつ頃、本当の幸せに気づきますかって(笑)。ただ、アメリカでもトランプが大統領になったことによって初めて、トランプ政治のいいところや問題点に気がつくわけですから。コロナもある意味では、人々に気づきを与えています。

――興味深かったのは、破壊的なイノベーションを起こした50社の創業者を調べたところ、なんと4割が1981年以降に生まれたミレニアル世代だったとか。

斉藤 彼らが社会の中核にくれば、きっと大きく変わります。アメリカの人口比ではすでにミレニアル世代が53%くらい。日本はまだ37%なので遅れますが。

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ビジネスマンが社内で起こすイノベーション

――企業勤務のビジネスマンもこれからは起業家マインドを持って仕事するようになりそうです。

斉藤 なると思います。それは、いわゆるオーナーシップといわれるもので、起業家は100%オーナーシップを持って仕事をしていますけれど、ビジネスマンもそれに近い形になります。今、目の前にある仕事に対しては、私がオーナーシップを持ってやるんだというような感覚を持つ人が増えるでしょう。

――その時、斉藤さんが紹介している一つひとつの企業の事例も、自分の仕事の現場に生かせます。

斉藤 生かしていただきたいですね。企業で仕事をする人も、きっとそういった変化があります。働く人たちが反応的ではなくて、主体的になりつつあるんです。七つの習慣のうちの第一の習慣です。主体性を持って自分の仕事に関るということ。

――コロナがその契機になりますか?

斉藤 今回のことで多くの人は、強制的に会社との距離が離れました。これまで会社の忙しさの中に埋没して、通勤電車に揺られて会社に行くと会社の文化にどっぷりと浸ります。家に帰れば普通の自分に戻るのですが、会社にいる時は戦場にいるような気分に近かった。

――朝の通勤電車には独特の倦怠感があります。

斉藤 でも家で仕事をするようになると、通勤電車に乗らなくて済むし、とても客観的に会社のことを見るようになりました。会社って何だったんだろう。オフィスは本当に必要なのか。自分の仕事は誰の役に立っているのか。どういう価値を生んでいるんだろう。あるいは管理職や会社の偉い人たちはいったいどんな価値を生んでいるんだろう、と。いろいろなことに気がつき始めているんです。さらに家庭との間がとけていきますから、非常に人間的な感覚に戻ります。だから、本質的な幸せに気がつきやすくなる。

――例えばこれまでは、上司へのごますりがうまくて、人の成果をうまいこと横取りするような人が出世していたけれど、これからは、仲間の共感が得られないと出世できないようになりそうです。

斉藤 すべての人は、自分が主人公で生きています。ただ幸せになりたい、どうすれば幸せになれるかに対して誤解があるんです。お金を追求したり、地位を追求したりすることで幸せになれると思っている人は、人間関係が悪くなったり、孤立したりしてもお金や地位を追求してしまう。

――それが幸せだと誤解しているから。

斉藤 資本の原理で動いていると、それが当たり前と感じてしまうんです。だけどこれから本質的な幸せに気づく人たちがどんどん増えていきます。幸せを求めていくと、お金だけあればいいのではなく、自分の内側が大切だと気がつくんです。自分の成長や人間関係、帰属している組織や社会に対する貢献などが本質的な幸せに結びつく。そのことに気がつけば気がつくほど、幸せ指向になります。自分自身も変わっていくでしょうし、人が変われば組織も変わっていくでしょう。

――静かに革命が起きていきそうです。

斉藤 人間にとって、最大の原動力は「幸せになりたい気持ち」ですからね。ただ、どうしてもこういう時は二極化します。僕みたいに、人のつながりが大切だと気づく人が増える一方で、なるべく人と関わらないで済ませたいという人も増えます。国境は封鎖すべきだと考える人もいるかもしれない。

――どちら側の人が増えるということではなく、二極化すると。

斉藤 最終的にはみんな幸せのために生きているので、100年、1000年と長い目で見ると、みんなが幸せになる方向に行くことは間違いないんです。歴史を見れば明らかです。でも一時的には目先のことを求めるので、どっちに振れるかわからない。

――自分にとって何が幸せかを真剣に考える必要がありますね。大規模な変革をすぐに起こすことはできませんが、内側から小さなハッピーイノベーションを起こせば、周りの人たちの共感を生み、自然に広がっていく。そういう世界にシフトしつつありますね。

斉藤さん制作、映画みたいな出版予告ムービー。


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