今夜は絶対、冷凍餃子!|パリッコの「つつまし酒」#73
人生は辛い。未来への不安は消えない。世の中って甘くない。
けれども、そんな日々の中にだって「幸せ」は存在する。
いつでもどこでも、美味しいお酒とつまみがあればいい――。
混迷極まる令和の飲酒シーンに、颯爽と登場した酒場ライター・パリッコが、「お酒にまつわる、自分だけの、つつましくも幸せな時間」について丹念に紡いだエッセイ、noteで再始動!
そろそろ飲みたくなる、毎週金曜日だいたい17時ごろ、更新です。
それ以外、考えらんない!
先日、SNS上で「冷凍餃子」がちょっとした話題になっていました。「餃子がどうしたって?」と気になってまとめサイトを見てみると、どうやらどこかの家庭のお母さんが、夕飯に冷凍餃子を出したらしい。そしたらお父さんが、喜んで食べていたお子さんに向かって、「これは手抜きなんだよ~」と言ったらしい。というような話でした。
正直、見知らぬ一家のもめごとになど1mmの興味もないのでどうでもいいんですが(あ、「ひどいこと言うお父さんだなー」と思うくらいの感覚はありますよ。念のため)、それよりも、コメント欄に書かれていた、その記事を読んだ人の感想のほうにものすごく興味を持ってしまいました。というのも、そのお父さんに対して憤慨している方々に混じって、おすすめの冷凍餃子の商品名を具体的にあげてる人がちらほらいたんですよね。
そういえば、市販の冷凍餃子の違いって、今まであまり意識したことがないかもしれない。というのも、大好きな「ぎょうざの満洲」に持ち帰り用の冷凍餃子があって、しかも週一で割引デーがある。あのもちっとした皮と、あっさりなんだけど旨味と食べごたえ満点の餡。その両方が、家庭でもかなり再現度高く味わえるので、なんの疑問も持たず、取り急ぎ家で餃子を食べたくなったら、満洲に行っていた。けど気になるじゃないですか。美味しいらしい冷凍餃子の情報なんて耳にしてしまったら。
はい。なので今夜はもう、絶対の絶対に冷凍餃子で飲みます! それ以外、考えらんない!
お手並み拝見
コメント欄の情報のなかで僕が気になったのが、次の3品。まず、「スーパーの『ライフ』で40個500円くらいで売ってる鶏餃子」。それから、「大阪王将の冷凍餃子」。それから、「セブンイレブンの冷凍餃子」。よし、さっそくいつも行ってるライフへ買い出しに行こ〜!
買ってきました
「ライフで40個500円くらいで売ってる鶏餃子」ということだったんですが、ジャストなものは見当たらず「ライフで50個600円くらいで売ってる豚肉も入ってる餃子」しかありませんでした。っていうかこれだよね? たぶん。若干うろ覚えだっただけだよね? 書いた人。それから、「大阪王将の冷凍餃子」。これは、ノーマルの他に「チーズぎょうざ」ってのがあったので、おもしろそうなんでそっちを買ってきてみました。
よ~し、それじゃあお手並み拝見といきますか~!
なんでこんなに美味しいの?
まずは大阪王将からいってみます。12個入りで300円くらいだったかな。パッケージにはなんと、「油も水もフタもいらない」って書いてますよ。しかもそれで羽つき餃子が焼けるんだそう。いきなりの常識崩壊。本当に信じてもいいんでしょうか?
小さめのフライパンに、凍ったままの餃子を並べる。中火で5分焼いたら弱火にし、水気が飛ぶまで約1分。やったことは本当にそれだけです。
うわ、こわ!
本当に羽つきで焼けてる!
すごくないですか? どんな技術力なんだ。さっそくジョッキにビールを用意し、いざ実食! ペリッとひとつを羽からはがし、パクッ。サクッ、じゅわっ。食感がまず、完全にお店で食べる餃子ですね。そして、お、けっこうまろやかで優しい味わいだな。野菜よりも肉が主体で、ふんわりとしてるというか。で、チーズだ。確かにチーズみを感じる。パッケージに書いてある「3種のチーズ使用」の内訳まではわからないけれども、主張がきちんとあります。それによって、ご飯のおかずってよりはおつまみ寄りの餃子という感じに仕上がってますね。そんなわけでビールがうまいうまい。
さて次。ライフの餃子。こちらは、水は使うみたいですね。あと、フタも。これまた冷凍の状態から、トータル6分ほどで焼きあがりました。
町中華で出てきそうなビジュアル
いや~、こっちもうまそうじゃん。と、ぱくり。あ! なんだなんだ、けっこうパンチがありますよ。ニンニクが効いてる。肉はもちろん、野菜もたっぷり入ってシャキシャキしてる。これはがぜん、ご飯にも合う餃子だな~。晩酌のときは基本的に白米は食べない僕ですが、たまらず小盛りご飯をよそってきて、こいつをおかずにほおばってしまいました。そしてすかさずビールぐびぐびっ! いや、最高じゃないすか。冷凍餃子。
翌日、昨日は寄らなかったセブンイレブンの冷凍餃子も買ってきてみましたよ。これはさらに手間なしで、フライパンすらも使わず、500w1分40秒、袋ごとレンチンするだけ。なんと税込、138円。
なんだか艶めかしい
そりゃあさすがに、焼き目のパリッと感はないですよ。ただ、抱えこんでいる旨味の濃さは3品のなかでいちばんかもしれない。またこういうふにゃふにゃ餃子をつまみに飲むってのも、時としていいんですよねぇ。
ところで、今回買った3種類の餃子は、どれも皮が薄めで小ぶりのライトなタイプでした。もしも今これを読まれているなかで、がっつりジャンボ系のおすすめ冷凍餃子をご存知の方、引き続き試してみたいので、よかったら教えてください~。
パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。著書に『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)など。Twitter @paricco