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社会課題の解決と利益追求は両立できる|小野貴也

編集部の高橋です。光文社新書は2023年1月の新刊として『社会を変えるスタートアップ』を出版しました。本書は、障がいや難病のある方々が活躍するDXプラットフォームを運営するスタートアップ「VALT JAPAN」(ヴァルトジャパン)を2014年に26歳で起業した小野貴也さんが、日本の働き方の未来像を語っています。スタートアップという爆発的な成長を目指す組織だからこそ、社会課題を根本的に解決することができる。その志とロジック、行動力に心動かされること間違いなしです。
刊行に際しまして本書の「はじめに」と「目次」を掲載します。是非ご覧ください!

はじめに

日本の就労困難者数、およそ1500万人。
20年後の労働人口数、1500万人超の減少。

私たちが暮らすここ日本は、少子高齢化に伴う労働人口の減少問題を突破しなければなりません。この問題には世界も注目しています。

労働人口減少問題と就労困難者問題。双方の労働市場における不均衡な状態は、明らかに深刻な社会課題であり、日本が突破しなければならない歴史的な重大ミッションです。

私はもともと、製薬企業の人間です。主に生活習慣病と精神疾患系の医薬品を扱うMR(クリニックや病院を相手にした営業活動)を経て、2014年、26歳の時に起業しました。
医薬品等の服薬により、精神疾患を抱える患者さんの症状は緩和し、「また仕事を頑張ろう」と前に走り出します。しかし、仕事の世界でうまくいかず、気がつけば症状は以前よりも悪化してしまう。このスパイラルから抜け出せない方々が悩み、苦しんでいる実態があることを、私は目の当たりにしたのです。
衝撃でした。医薬品だけでは解決できない「仕事」という根深い問題があることを、私は初めて知りました。
これは個人の問題ではない。社会構造を大きく進化させる必要があると、その時感じました。しかし、このような就労困難者が仕事を通じて活躍する社会インフラをつくるための「ハウツー」は存在しません。
だから、3カ月後に起業しました。

ただ、本書は、当時目の前で話をしてくれた当事者を直接支援する話ではありません。そのもっと先にある、「埋もれた人類の巨大な可能性」と「日本経済の進化」を描く、日本のインクルーシブ戦略を見据えています。
8人に1人が就労困難者である事実と、労働人口が減少する社会課題に対して、日本は、そして私たちは、どのような未来をつくっていけるのでしょうか。
2014年から約9年間、私たちはスタートアップ企業として、障害等のある就労困難者が仕事を通じて大活躍するための、新たな労働市場の仕組みづくりに挑戦しています。本書では、数多くのさまざまなセクターと総力戦で挑戦する、「就労困難者ゼロ社会」を実現するためのグランドデザイン(大きな構想戦略)をお話ししたいと思います。

目 次

はじめに

第1章 障害者雇用制度を基盤とした日本版インクルーシブモデル
国民の8人に1人が「就労困難者」
日本の雇用基盤の一つ「障害者雇用」「法定雇用率」 
合理的な雇用システム「特例子会社制度」「障害者雇用納付金制度」
障害者差別と闘ってきた変革者たち
企業の重要戦力でもある精神障害者の雇用状況
ミスマッチをベストマッチにする「入口戦略」「出口戦略」
難病者らの「制度の狭間」に議論と未来を
法定雇用率制度を基盤としたインクルーシブモデル
「協働」「流動」、そして「インクルーシブ」へ
海外の障害者雇用の事情
【コラム①】スウェーデン「サムハル」の取り組み

第2章 世界トップクラスのポテンシャルを秘めた就労支援業界
日本特有のインフラ「就労継続支援事業所」
就労支援事業所の巨大なポテンシャル
仕事は人類をつなぐ最強の手段
閉ざされた世界を開き、協働関係人口を底上げする
JICA調査報告からみる諸外国の就労支援体制
守りに攻めが加わった時、日本は世界を牽引する

第3章 日本の労働人口減少問題を突破する方法
労働人口の減少問題と活躍機会の不足問題
労働市場の不均衡をバランスさせるには
自動化が進んでも人手不足は解消できないのか
テクノロジーと共に生まれる就労困難者の新たな活躍機会
ヒトへの投資対効果にコミットできるか
労働市場の大変革時代

第4章 就労困難者が「大活躍」するためのプラットフォーム
就労困難者が大活躍する新たなプラットフォームモデル
企業はなぜ法定雇用率にカウントされなくても発注するのか
就労困難者のケイパビリティを日本で最も把握する集団
障害者の賃金を従来の約8倍増加させる

第5章 薬だけではなく仕事を──起業のきっかけ
努力・根性・情熱の大切さと限界値
第二の父親の早過ぎる他界
摂食障害との葛藤
医薬品の力だけではできないこと
起業後の道のり──お金
起業後の道のり──人
起業後の道のり──事業
【コラム②】 「新規事業家」守屋実氏からみたVALT JAPAN

第6章 データテクノロジーがつくる就労困難者と日本経済の未来
労働市場の構造変革から個の拡張へ
個の拡張と脳の多様性
個々の能力・特性をどう把握するか
「履歴書」から「プロファイル」に進化する
能力・特性を蓄積させる一手「経験学習」のサイクル
データテクノロジーが企業セクターと就労困難者セクターを結びつける
薬ではなく、仕事を処方する時代へ

第7章 スタートアップが挑戦する社会性×経済性
スタートアップはなぜイノベーションとスピードを追求するのか
NPOの大きな力
IPO(株式上場)を選択する理由
経済セクターの大変革期と地球規模のイノベーション

第8章 インクルーシブ雇用2.0
70兆円市場の「インパクト投資」
インクルーシブ雇用1.0→2.0
ソーシャルインパクトスケール(社会的影響指標)を設定する理由 
インクルーシブ雇用戦略「DX」→「SX」→「IX」

第9章 就労困難者ゼロ社会
国産IXを世界モデルへ
ゼロを掲げなければ、ゼロにはならない
Field of HEROES 
おわりに

著者プロフィール

小野貴也(おのたかなり)
1988年生まれ、大分県出身。製薬会社のMR従事中に、障害や難病のある人の活躍機会・賃金格差などの社会問題に衝撃を受け、2014年にヴァルトジャパンを創業。障害や難病を抱える就労困難者に特化した仕事の受発注プラットフォーム「NEXT HERO」を運営し、約1500万人の就労困難者がビジネスの現場で大活躍できる仕組みづくりに取り組んでいる。21年6月にZ Venture Capital、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、三井住友海上キャピタルから約2億円を調達し、同年11月にはスタートアップの登竜門「IVS2021 LAUNCHPAD NASU」で3位入賞。22年には海外ベンチャーキャピタルや国内メガバンク3社などから出資を受け、累計資金調達額は7億円に達する。
Twitter @takanari_ono

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