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豪華絢爛! おにぎり飲み|パリッコの「つつまし酒」#106

欲望のおもむくままに

 大塚に「ぼんご」というおにぎり専門店があるそうです。そこのおにぎりは、ものすっごく具沢山で、それをふわりとほどけるような柔らかさのごはんで包みこんであるんだそうです。それはもう、美味しくて美味しくてたまらず、下手な寿司が裸足で逃げだすほどなんだそうです。
 噂は以前から聞いていて、いいな〜行ってみたいな〜と思ってはいたものの、これまで縁がなかったのは、お店ではお酒類を提供していないらしいから。それでも、現在の緊急事態宣言が明けたら、状況を見つつあらためて行ってみようと思うのですが、はたと気づきました。プロの味にはかなわないまでも、おにぎりって、自分で作っちゃえばいくらでも豪華にできるじゃないかと。
 今回は、お金には糸目をつけず、欲望のおもむくままに豪華絢爛おにぎりを作って、それをつまみに飲んでみようと思います。

すじこ、天丼、ローストビーフ

 さっそくスーパーへ行き、おにぎりの具材にと買ってきたのは、すじこ、ミニ天丼、ローストビーフの切れっぱし。

今回の具材たち

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 まず、すじこは大定番ですね。コンビニで売っているすじこおにぎりだと、いくら美味しいとはいえ具材のボリューム感は限られますが、今日はお米と同量か、なんだったらお米よりも多いくらいの量をぶっこんでやろうという計画。
 次に天丼。いわゆる「天むす」を作ろうということで、だけど今回は別に「究極」や「至高」のおにぎりを作りたいわけじゃない。いい海老を買ってきて、それを天ぷらにして、タレも自家製で用意して、なんてのはまだるっこしい。あくまで、欲望にまかせた豪華おにぎりで飲みたいだけ。というわけで、手抜きをしてできあいの天丼を買ってきて、そこからタレびたしの海老天を拝借しておにぎりにしようというわけ。もちろん、残った「何かものたりない天丼」は、後日スタッフが美味しくいただきました。
 そして肉欲担当のローストビーフ。これは、商品名「ローストビーフチップス」という切れっぱしのものが売っていて、けっこうたっぷりと入って158円とかなりお得だったので、お金に糸目をつけてチョイスしました。

具沢山おにぎりならでは製法

 ではではにぎっていきましょう。まずはいちばん型崩れのなさそうな海老天にぎりから。もちろん、今回の計画のために炊きたてのお米、いや「銀シャリ」を用意しました。
 娘が好きなのでふだんからおにぎりを作る機会は多いのですが、ここまで具沢山なのは未経験。とりあえずハンバーガーのバンズを意識した薄い円形にお米を整形し、海老天を乗せ、また薄い円形のお米でフタをします。

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海老天のお米サンド

 これをいくら強めににぎったところで、いつものようにまとまる気がしない。それに、ぼんごのおにぎりも一般的なものよりかなりふわふわらしいと聞いている。そこで、全型を1/2にした海苔を用意し、その上にごはんが崩れないようにそ〜っと移動させ、ギュギュッとむりやり包みこんでなんとかひとつめが完成しました。

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ふぅ、まぁいいか

 その経験をふまえ、僕、もう具沢山おにぎりならではの作りかたを思いついちゃいましたよ。
 まず、海苔の上に薄い三角形のお米を直接置く。

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こうですね

 で、そこに具材を好きなだけのせる。

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◆写真5◆こうです

 そうしたら再び薄い三角形のお米でフタをし、あとはすべてを海苔に託し、問答無用といった感じでまとめあげてしまいましょう。
 一般的なおにぎりの製法とはだいぶ違いますが、これが今のところ個人的に、失敗がなく効率的な作りかただと思います。

おにぎりの魅力に開眼

 さぁ、いよいよ豪華絢爛、欲望むきだし、やりたい放題おにぎり3つが完成!

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想像以上にテンションが上がる!

 考えてみれば僕、おにぎりのことを今まで、ちょっと甘くみてしまっていたところがありました。こういう形にするのって、しょせん手早く食べるための工夫でしょう。炊きたてごはんの上におかずをのせて食べるのにはかなわないでしょう。ましてや寿司になんてとてもとても……。そんな考えを今、深く反省しています。
 なんだこの美味しそうな食べものは! 家で手軽に作れるもののなかで、相当上位に入る贅沢料理なんじゃないか? それがこんなにも簡単にできてしまうなんて。もうこれから、毎日おにぎりでもいい!
 食べる前からそんな気持ちです。

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涙が出るほどの美味しさ

 実際、ミニ海老天丼といった味わいの天むすも、噛みしめると崩壊した米と肉が口のなかで混ざりあうローストビーフおにぎりも、これでもか! というほどジューシーなすじこおにぎりも、それはもう夢のような美味しさ。海苔で巻かれているから食べやすいし、そもそも、お米の熱でしっとりとした海苔の香りもいいアクセント。ふだんの食事と違って、おつまみ向きなのもいいですね。
 米&米というわけで、日本酒との相性は言わずもがなでございました。

パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。
2020年9月には『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)という2冊の新刊が発売。『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。Twitter @paricco


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