巨人が中田翔を獲得。戦力としての価値・役割を改めて考える
熱烈な巨人ファンで、多くの野球マニアや選手たちからフォローされるゴジキさん(@godziki_55)が巨人軍を分析。
チームメイトへの暴力行為で無期限の出場停止処分を受けていた日本ハムの中田翔選手(32)が、無償トレードで巨人へ移籍しました。さまざまな意見があるかと思われますが、「戦力」として見たときに、中田とはいったいどのような選手なのでしょうか? 巨人への加入がどのような価値をもたらすのか徹底考察してもらいます。
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球界屈指の「打点を生む」能力
中田翔といえば、球界屈指の勝負強さが売りの選手である。これまでのキャリアを振り返ると、粗さや調子の波はあるものの、守備面は一塁手として見るとトップクラスのうまさを誇っており、打撃面では5度のシーズン100打点以上達成、3度の打点王を記録している。
特に、得点圏打率だけではわからない打点を生み出す能力である「クラッチ力」は現役選手の中でも頭ひとつ抜けている。下記は、中田が100打点以上を記録したシーズンの得点圏打率である。
2014年.295(100打点・打点王)
2015年.281(102打点)
2016年.264(110打点・打点王)
2018年.300(106打点)
2020年.290(108打点・打点王)
この通り、意外なことに5度のシーズンで得点圏打率が3割を超えた年は2018年の一度だけである。拙著『巨人軍解体新書』にも記載しているが(セイバーメトリクスの時代でも見逃せない「打点」の価値)、走者がいる機会の多い4番打者とはいえ、中田は得点圏打率の数値以上に打点を生み出す能力が高いのは確かだ。さらに、昨シーズンは短縮された試合数の中で、31本塁打108打点という驚異的な成績も残している。
近年はWARやOPSなどの数値が重視されて、打点などの打撃成績は旧来的な指標として低く扱われがちだ。しかし、どのような形であろうと結局は得点を稼がないとチームは当然勝てないため、「打点を生み出す力」は極めて重要である。そして、この能力に長けた選手はチームのキーマンとなる。
トレードのきっかけとなった暴行事件等、素行面で問題視されるのも当然だろう。だが、プロ野球界全体の重鎮になりつつある原辰徳監督、中田より歳上でありながら日本を代表する選手である坂本勇人、二軍監督には阿部慎之助などがいることもあり、しっかりと更生させることができる環境であるとも言える。本拠地が札幌ドームよりもホームランの出やすい東京ドームになることも追い風だ。ジャスティン・スモークが退団した巨人軍にとって、逆転優勝へ重要なピースになりそうだ。
短期決戦での図抜けた勝負強さ
中田の長所として、短期決戦への強さも挙げられる。国際大会の結果がわかりやすいだろう。2015年のプレミア12では15打点、2017年のWBCでは8打点を記録したが、共にチームトップの成績である。しかも、4番打者ではなく筒香嘉智の次を打つ5番打者として残した数字である点も素晴らしい。
また、2016年の日本シリーズは中田の良さが見られた象徴的なケースである。広島に2連敗して劣勢の状況で第3戦を迎えたが、この試合で中田は3打点を記録。特に8回は、大谷が敬遠された後に「意地」を見せるかのように、逆転タイムリーを放った。チームはその後追いつかれたものの、大谷のタイムリーでサヨナラ勝ち。最後に大谷が美味しいところを持っていったが、ここぞという場面で勝負強さを発揮する中田の真骨頂が見られた。
もうひとつ例をあげると、2017年WBCのオランダ戦もキャリアを代表する試合である。中田の大会全体を通した成績は突出していなかったが、この試合でも中田特有の勝負師ぶりが遺憾なく発揮された。強さ」の真骨頂だった。両チーム得点を取り合い、同点で迎えた3回表に3ランホームラン。さらに、同点の11回表には決勝打となる勝ち越しタイムリーを放った。死闘と呼ばれたこの試合で、中田は両チーム最多となる5打点を記録した。オランダに追いつかれた後に突き放す一打と、最後に勝負を決める一打。これぞ、大舞台に強い中田のバッティングである。当時この試合を見ていた自分も含め、多くの野球ファンは中田に打席が回るたびに、「中田ならなにかやってくれるだろう」という期待を強く抱いていたのではないだろうか。
中田をサッカーの日本代表で例えると、かつての本田圭佑のようなイメージだろう。本田もベテランになってからはW杯本大会前に不要論なども叫ばれていたが、チームに必要な選手であったことは間違いない。実際、選ばれた大会では全てゴールとアシストを記録している。代表でのキャリアが晩年になっても、チームメイトには「本田さんならなんとかしてくれる」という感覚が少なからずあったのではないだろうか。
成績以上の決定力の高さ、ここ一番での強さは中田にも同様のものがある。チームメイトとしては、打撃成績以上の頼もしさを感じるのは間違いない。坂本勇人・丸佳浩・岡本和真のコアに+aとして中田が加わることにより打線はより厚みを増し、点を取りきることができるようになるだろう。
近年味合うことがなかった優勝争いのプレッシャーの中、中田が巨人軍の逆転優勝へのラストピースになることを期待していきたい。
「クラッチ力」については過去に執筆したこちらの記事もぜひご覧ください↓↓↓