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大人気「愛の不時着」。リ・ジョンヒョク大尉、もといヒョンビン氏インタビュー掲載!

光文社新書編集部の三宅です。

唐突ですが、皆さんはネットフリックスで絶賛配信中の「愛の不時着」をご覧になりましたでしょうか? 私はGW明け頃からドハマりして、通しで2回見ただけでは飽き足らず、現在は好きな場面を繰り返し繰り返し、隙間時間を使って堪能しています(以下、ややネタバレ気味のところがありますので、ご注意ください)。

もちろん、世間的にも大人気で、ネットフリックス内の視聴ランキング1位を独走中です。14日の朝日新聞「天声人語」で言及されたのには驚きました(「天声人語」を持ち出してくるところが、古いですね……)。

このドラマの魅力はさまざまな観点で語れますが、その大きな一つが、ヒョンビン氏演じる北朝鮮の軍人リ・ジョンヒョク大尉のキャラクターにあることは間違いありません。冷静沈着、組織の腐敗に厳しく上官にも物怖じしない、部下思い、ヒロインのユン・セリ(韓国の財閥令嬢)に対する底なしの思いやりと体を張った献身は、男の目から見ても魅力たっぷりです。

ユン・セリが乗った車を襲う謎の改造トラック。彼女を救うべくバイクに乗って颯爽と登場した黒ヘルメットのリ・ジョンヒョク大尉の姿は、まるで仮面ライダー(←古い)のようなカッコよさで、痺れまくりました。このシーン、何度もリピートしているのは言うまでもありません。

実は私は、韓国ドラマを見るのは初めてでした。ですので、ヒョンビン氏が人気俳優であることもまったく知りませんでした。ちなみに、「愛の不時着」以降、他の韓国ドラマにも手を出しているのですが、ヒョンビン氏の演技力というか、演技の幅に驚愕しています。直前に主演した「アルハンブラの思い出」とは、別人のようなのです。

それはさておき、韓国のドラマは初めてであるにもかかわらず、ヒョンビン氏の名前に見覚えがありました。

いったいどこで……と考えていたら、思い出しました! ここです!

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康熙奉(カンヒボン)著『韓流スターと兵役 あの人は軍隊でどう生きるのか 』の中の小見出しでした。

本書は2016年1月に刊行された光文社新書の一冊で、私が直接担当したわけではないのですが、何度かゲラを読んでいたため、記憶の片隅にあったのでした。

本記事では、著者の康熙奉氏のご厚意により、本書のヒョンビン氏に関連する部分を無料で公開します。「愛の不時着」での軍人姿が板に付きすぎていたヒョンビン氏は、自らの兵役をどのように語っていたのでしょうか?

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ヒョンビンが語る「入隊後の心境」

 これから入隊する韓流スターの良いお手本となったのが、ヒョンビンです。
 彼は、ドラマ『シークレット・ガーデン』を大成功させて乗りに乗っていたのですが、やむなく俳優活動を中断して、2011年3月7日に、浦項(ポハン)にある海兵隊の教育訓練団に入隊しました。
 これが、現役兵としての軍務の始まりです。
 このとき、彼は28歳でした。
 入隊を可能なかぎり延期していたので、その年齢になったのですが、一緒に入隊した同期の中では最年長になっています。
 それもそのはずです。同期はほとんどが20歳から22歳。ヒョンビンは、かなり年下の弟たちと一緒に、軍隊の中で一番訓練が厳しいといわれる海兵隊の新兵訓練に臨まなければならなかったのです。
 20代初めの同期に、体力で勝てるわけがありません。
 しかもヒョンビンは、年長者として〝弟たち〟の模範となる生活規範を示さなければなりませんでした。
 身体的にも精神的にも、彼には相当な負担がかかったことは間違いないでしょう。
 それがわかっていながら、ヒョンビンは、鬼の海兵隊に志願しました。よほどの覚悟があったことでしょう。
 彼は、俳優に復帰後の自分の立ち位置について、何も迷っていませんでした。それが証拠に、訓練所に入隊してから受けた特別インタビューで、報道陣から「人気全盛期に入隊して、ファンに忘れられてしまうという考えを持ったことはありませんか」と問われて、次のように答えています。

「忘れられることは恐くありません。実際、忘れられることもあるでしょう。大事なことは、ここでどういうふうに過ごして、社会に戻ったときにその経験をどう生かせるか、ということでしょう。
 私にとって、1年9カ月というのはとても貴重な時間です。自分の限界に挑んでみたくなって、海兵隊に志願したのです。身体的にも精神的にも、新しい作品に入るたびに気持ちを込めて演技してきましたが、軍隊生活で生じる限界は、また別のものではないでしょうか。
 20代は作品にずっと出てきましたが、自分の人生について考えたことは、作品について考える時間より少なかったのです。30代で俳優に戻る前に、今の時点で自分を一度見つめなおし、今後の将来に向けてじっくり考えてみたかったのです。そのようにして軍隊生活を送ってみたいです。
 ここで落伍したとしても、後悔はしたくないですね。やらないで後悔するよりは、やって後悔したほうがまだましじゃないですか。私がしている仕事は経験を積むことが大事なので、ここで過ごす経験があとでとても生きてくると思います」

 なんという前向きな考え方でしょうか。
 軍隊生活での経験が、俳優のキャリアにプラスになると考えるあたりは、「人生には無駄なことが1つもない」という達観すら感じることができます。
 当然ながらヒョンビンは、自分が去った一般社会の様子も気にならないと断言しています。

「今は、むしろ気が楽です。私に関係していることや関係していないことにかかわらず、たくさんの状況の中で暮らしていたのに、(今はちょうどいい具合に)孤立しているじゃないですか。
 今ここにいながら考えたのは、昔、携帯電話やポケベルがなかった頃に似ているということです。あの頃もこのように暮らしていたのに、社会的な要素が自分をすごく変えてしまったんですね。
 しかし、今はすっかり昔に戻ったような気がしています。ある意味では、気分が楽になりましたね」

 何度も「楽になった」と言っていますが、本当に楽になったのかどうかは、時間がもっと経ってみないとわからないでしょう。
 特別インタビューは、入隊して間もない頃に行なわれており、ヒョンビン自身にも、まだこの時点では余裕があったことでしょう。
 それでも彼は、「昔に戻ったような気がしている」と語っています。軍隊生活が自分を取り戻す機会になりそうな雰囲気を感じていたのでしょう。

軍隊にいるからこそ気づくことも多い

 ヒョンビンは、新兵訓練で大変苦労しています。あまりに訓練が厳しくて、からだが悲鳴をあげていたのです。ケガも負っていました。
 まさに満身創痍という状態でした。そんな中で行なわれた特別インタビューで、彼はこう語っています。

「20代前半から、ずっと俳優の仕事をしてきました。海兵隊に志願して面接を受けましたが、そのときに考えていたのは、キム・テピョン(本名)という自分自身に対して〝何をしていかなければならないのか〟〝将来に向けてどんな目標を持つべきか〟ということだったのです。
 今まで、自分の内面や周囲の状況を振り返らなければならないときでも、目の前の作品のことで頭がいっぱいで、(気がつかないことが多い中で)10年という期間を過ごしてきた気がします。
 現在は違います。外に出れば、また同じような生活がくり返されるでしょうが、今は自分のことを振り返る時間がたくさんあります。これまでそういう時間がなかっただけに、自分の内面を探せる今は、貴重だと思っています」

 こうした発言を聞くと、ヒョンビンが俳優生活10年の区切りとして、入隊に至った心の変化がわかるような気がします。

 ヒョンビンは、目の前のことだけに流される日々から自分を解放したかったのかもしれません。それが結果的に、兵役の時期と一致したともいえます。
 しかし、海兵隊の訓練は想像以上の厳しさでした。
 ヒョンビンは訓練を通して「他のみんなは凄い体力を持っているので、体力面では不安が大きいですね」と語ったり、「体力鍛練がつらいです。罰としてやらされるウサギ跳びや、仰向けに寝て銃や脚を上げる動作が大変です」と弱気になったりしています。
 それでもヒョンビンは耐え抜きました。それが可能だったのは、周囲に迷惑をかけてはいけない、という責任感でした。

「厳しい訓練が続き、もう耐えられないと観念した瞬間に周囲を見ると、他の人たちは同じ状況で耐えているじゃないですか。
 それで、私も耐えることができました。
 もし、私がここで倒れてしまったら、同じように倒れてしまう人も出てくるだろう。それではいけないから、必死に耐えたんです」

 このように厳しい訓練に耐え抜く中で、ヒョンビンはあるべき自立を模索していました。それは、1人でもできるということを証明することでした。

「ここではたくさんの人たちに守ってもらっていますが、それでも、社会での視線と軍隊での視線は違いますから、(マネージャーがいなくても)1人でもよくできるんだということを示したいです。
 それから、これまでにしてもらっていたことを、今度は自分がしてあげられるような立場になりたいと思います」

 この言葉の中に、ヒョンビン自身の〝自立〟がうかがえます。彼は兵役を通して、自分を一本立ちさせたいと考えていたのです。

「私は、ファンから長い間にわたって関心や愛を受けてきましたが、それに対して作品を通してお返しをしてきました。しかし、愛をもらうだけもらっていたのは事実であり、申し訳ないという気持ちでしたし、とても残念でした」

 こう語るヒョンビン。彼は軍隊に入って初めて、ファンの存在を一番身近に感じたのではないでしょうか。
 一般社会から遠く離れた軍隊生活に身を置いているからこそわかることが数多くあります。先の言葉にあるように、ヒョンビンは、ファンから関心を向けてもらうことを、もはや当たり前とは思わなくなっていました。
 これも大きな成長でしょう。

 軍隊の中では、孤立感が日増しに大きくなっていきます。その中でヒョンビンは、どのように自分を律していこうとしていたのでしょうか。

「(一般社会から遠く離れて)1人取り残されたような状況からどう抜け出すか。心の準備はしてきたつもりですが、さまざまなことが作用してきて大変でした。
 でも、人間は状況や社会に適合できる動物だというじゃないですか。私もここで過ごしながらいろいろな状況に対応することができるようになり、軍隊という囲いの中で何かを少しずつ会得しているのだと思います」

 こうした言葉を聞くかぎり、ヒョンビンは前向きな考えで、軍務の中から1つずつ何かを得ようとしていたことがわかります。
 どうせ21カ月も軍隊にいなければいけないなら、その期間に自分とどう向き合って、どう視野を広めていくか。
 ヒョンビンは、現役の軍務を苦痛と考えず、むしろ前向きにとらえられる韓流スターだったのです。

 それは、ヒョンビンだけではないでしょう。
 ユンホにしても、ジェジュンにしても、彼らもまた軍務を通して自分を成長させ、ファンの存在をもっと身近に感じて、芸能の世界に戻ってくることでしょう。

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あまりにも男前な発言の数々。まるでリ・ジョンヒョク大尉の新兵訓練時代の話を聞いているようです。

他にも、本書ではヒョンビン氏に触れている箇所がありますので、興味のある方はぜひ手に取ってみてください。

皆さんの「CLOY」ライフが、より充実したものになりますように!





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