2020年シーズンの巨人軍通信簿(野手編)
熱烈な巨人ファンで、多くの野球マニアや選手たちからフォローされるゴジキさん(@godziki_55)が巨人軍を分析。
今回は、2020年シーズンのジャイアンツ選手たちへの通信簿を送ります。期待通りのパフォーマンスを残した選手もいれば、課題の残った選手も。投手編に続いて野手編です。
※投手編はこちら
3割打者が不在ながらも優勝。2014年シーズンとの類似性
今年の巨人は、坂本勇人、丸佳浩、岡本和真といった選手の調子がなかなか上がりきらず、3割打者が不在だった(チームトップは坂本の.289)。チーム全体ではリーグ3位の.255となっている。
それでもリーグトップの283得点と得点圏打率は.269を記録した。これは、要所での力の入れどころが分かっていることによる結果だろう。
こうした数字からも見えるように、試合の進め方やチームのスタイルは、2014年シーズンに類似していたと見ている。このシーズンも、3割打者が1人もいなかったものの(チームトップは長野久義の.297)、得点圏打率は12球団トップの.290を記録し、要所で得点して僅差で逃げ切る試合が多かった。
加えて、終盤にランナーが出た際に代走の切り札である増田大輝を投入し、相手にプレッシャーをかけた上で得点するパターンも2014年を彷彿とさせる。この年も試合終盤、2アウトからでもランナーが出た際には、高い確率でホームへ帰ってこれる鈴木尚広を起用して1点をもぎ取っていた。
チームとしての盗塁成功率も、今シーズンと2014年のシーズンはリーグトップを記録しており、盗塁に対する確実性の高さを活かして相手チームにプレッシャーをかけてきた。
原采配との連動性も良く、こうして「上手に」勝ち星を拾うことで優勝という結果に繋がったと言っても過言ではない。
開幕当初から誇っていたリーグ屈指の「ディフェンス力」
今シーズンの巨人軍の強さを象徴する大きな要素が「ディフェンス力」である。開幕当初からシーズン中盤まで打撃陣が低迷していたこともあり、投手力の高さとディフェンス力の固さがより一層際立った。
特に、二塁手としてトップクラスの守備範囲を誇る吉川尚輝と歴代トップクラスの遊撃手である坂本勇人の二遊間のコンビは、守備範囲が広いのはもちろんのこと、阿吽の呼吸でありバランスもトップクラスに優れていた。今シーズンは吉川尚輝に大きな怪我がなかったため、開幕から鉄壁の二遊間が形成できた。これはチームが首位を快走した大きな要因だろう。
さらに、中堅手の丸佳浩も持ち前の判断力の高さから好守を連発してチームを支えた。
内外野の強力なセンターラインが確立された今シーズンは、見ていて安心感があった。
今シーズンから三塁手に固定された岡本和真も、バント処理などのチャージには課題があるものの、左右のゴロに対する反応は以前よりも上達したように見える。巨人の守備は数字的にも良く、失策数は43と12球団中最少である。この固い守りによる隙のない野球で、終盤にも強い試合運びをしてきた。
選手各評価(100打席以上+a)
丸佳浩:評価A−。開幕時は例年と比較にならないぐらい苦しんだが、9月は10本塁打を記録するなどの活躍を見せた。
岡本和真:評価A−。オープン戦からシーズン序盤までは、「真の4番」に相応しい活躍を見せた。二冠に輝いたが、さらに上のレベルが求められる。
坂本勇人:評価A−。キャンプからインフルエンザやコロナウイルス感染の影響で、調整不足に苦しんだものの、2000本安打を達成。
吉川尚輝:評価B+。キャリア初の100試合出場と規定打席到達。打撃は波があるものの、坂本との二遊間はトップクラス。
大城卓三:評価B。開幕から正捕手としてフルシーズンは初の実働だった。体力面や守備での細かな能力は課題。
中島裕之:評価B。今季復活を遂げたベテラン。一塁守備が向上し、攻守に渡り優勝に貢献した。
増田大輝:評価B。代走の切り札として、23盗塁を記録。一時期は「走りすぎ」な部分もあったため、来季はそのあたりのバランスが課題。
松原聖弥:評価B−。今季台頭を見せた若手の1人。小回りが効きそうなタイプに見えるが2番打者以外に置くことが必要だ。
ゼラス・ウィーラー:評価B−。楽天から加入後の2ヶ月は打線を引っ張る活躍を見せた。
ジェラルド・パーラ:評価C+。開幕当初は強い打球を放っていたが、耐久性に難があり、シーズン中盤からは苦しんだ。
岸田行倫:評価C+。シーズン終盤からスタメンマスクを被るなどした。来季は開幕時に一軍にいなければならない存在だ。
北村拓巳:評価C+。シーズン序盤に、吉川尚輝や打線の起爆剤として活躍。伸び代を見ると、出場機会を増やしていきたい選手。
若林昇弘:評価C。昨年ほどの活躍は見られなかったが、要所で穴を埋める活躍は見られた。
重信慎之介:評価C。チームとして、ウィークポイントだった速球に強かった点を、活かすべき選手だったに違いない。
田中俊太:評価C。例年通りシーズン終盤に、一軍で活躍を見せた。スーパーサブとして幅を広げていきたいところ。
小林誠司:評価C−。怪我による離脱などで、なかなか出場できずにいた。守備力は頭一つ抜けているので、来季は復活に期待。
炭谷銀次朗:評価C−。昨年ほどのパフォーマンスは見られなかった。岸田の台頭もあり、来季以降は枠の争いの激化に打ち勝てるか注目。
陽岱鋼:評価C−。調子が良かった時期に昇格できず、苦しんだシーズンだった。右の代打としてチャンスを与えたいところ。
亀井善行:評価C−。衰えと怪我が重なり、厳しいシーズンになった。来季は代打の切り札として期待。
来シーズンへの課題と展望
リーグ優勝はしたのの、日本シリーズ初戦でソフトバンクのエース千賀滉大に対しては出せんが沈黙。「ストレートの狙い打ち」という攻め方をハッキリと打ち出していたにもかかわらず、そのストレートをほとんど捉えられずに7回3安打0得点に終わった。
巨人打線は今シーズンを通して、150km/h以上の球あるいはそれに近い強度のあるボールに全く対抗できずにいたが、千賀との対決を筆頭に、このシリーズでもそうした姿が随所で見られた(データ上では他球団と比較して相対的に打てていたものの、感覚値で見ると水準以上のボールに対しては手も足も出ずにいた)。
去年なら、坂本・丸・岡本の主軸の他に、打力のある阿部慎之助やアレックス・ゲレーロを5番以降に置くことができ、それによって要所での長打や一発が期待できるだけでなく、相手へのプレッシャーを与えることができた。だが今シーズンは、阿部が引退してゲレーロも退団。ヘラルド・パーラやゼラス・ウィーラーを獲得したものの、その穴は埋まらずにいた。
今年の5番以降は、元パリーグの選手でもあるウィーラーや中島裕之こそ置けたが、阿部やゲレーロと比較すると火力不足は否めない。しかも、昨年の阿部に関しては、コンディションさえ充分なら千賀に対してホームランを放ち森唯斗に対してもヒットを放つなど、キャリアの最後とは思えない程の打力を見せていた。
そこで来シーズンのキーポイントとなるのは、「補強」による打線の火力不足解消だ。水準以上の速球に強く、一発がある打者を獲得できるかが、来シーズン以降にエース級の投手やパリーグ球団と戦うための鍵である。
加えて、正捕手定着の可能性が高い大城のさらなる成長も必要だ。
打撃面だけではなく、守備面も疲労が溜まってきた時期になると精彩を欠く場面が多々ある。印象に残った試合で挙げると、優勝を決めた10月30日のヤクルト戦では、4盗塁を許すなどで課題を残した。
守備型捕手の小林誠司と比較すると、プレッシャーがかかる場面で随所に見られるディフェンス面のリカバリー力は、今後も改善していくべきポイントである。とはいえ、試合を積み重ねた上での経験値でカバーしていけるため、今後のレベルアップに期待だ。