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若者向けのビジネスをしていなくても、Z世代に注目せざるを得ない理由

光文社新書編集部の三宅です。

皆さんは「Z世代」という言葉をご存じでしょうか? 現在、10代前半から25歳くらいまでの世代のことで、だいたい1995年~ゼロ年代生まれを指します。

もともと欧米を中心に「ジェネレーションZ」と呼ばれ、分析の対象になっていたのですが、今回、日本におけるこの世代の特徴を詳らかにした書籍が刊行されました。原田曜平さんの『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)がそれです。

これから数回にわたり本書の内容を抜粋・紹介していきます。

少子化が進む日本では、この世代の人口は多くありません。だからといって、マーケティングの対象としてこの世代を軽視することは、いろいろな意味で愚策だと原田さんは言います。Z世代を無視・軽視してはいけない理由を、量的・質的調査の両面から分析していきます。

まずは「はじめに」と目次の公開です。

はじめに──これからの消費の主役

10代前半~25歳くらいの世代

 今、日本では、「Z(ゼット)世代」と呼ばれる新しい若者世代が、にわかに注目を集め始めています。彼らは「ジェネレーションZ(ゼット)」や「ジェネZ(ジィー)」という呼ばれ方をすることもあります(本書では、「Z世代」で統一)。

 様々なメディア上でも、特にビジネス系のメディアを中心に彼らについての特集が組まれるようになっており、例えば、日本経済新聞では「輝くZ世代」、日経クロストレンドでは「Z世代 10年後の中核層を攻略せよ」といったタイトルの記事が出ています。

「Z世代」については、実は共通した明確な定義はありません。アメリカを中心とした欧米諸国で、概ね1990年代中盤(または2000年代序盤)以降に生まれた世代を指す言葉として作られ、この数年、広く使われるようになっています。

 年齢で言えば、現在だいたい25歳の若手社会人より下の人たちのことを指します。

 ちなみに、年齢の下の区切りをどこまでZ世代とするかは、まだ下の世代が幼く、特徴があまり出ていないので分かりません。一応、欧米では、Z世代のすぐ下の世代のことを「α(アルファ)世代」(ジェネレーションα)と呼んでいます。彼らは概ね2010年代序盤(もしくは中盤)から2020年代中盤(もしくは終盤)にかけて生まれた(る)と定義されていることが多く、現在の10歳以下の世代を指します。ですので、Z世代は大体10代前半~25歳くらいまでを指すものだと理解するとよいでしょう。

 では、Z世代=ジェネレーションZはなぜ「Z」なのかというと、アメリカでは彼らより上の世代が「ジェネレーションX」(諸説あるが1960年代初頭または半ばから80年頃までに生まれた世代)と「ジェネレーションY」(諸説あるが80年代序盤から90年代中盤または2000年代序盤までに生まれた世代。近年では、ミレニアム〈新千年紀〉が到来した2000年前後か、それ以降に社会に進出したことから「ミレニアル世代」あるいは「ミレニアルズ」と呼ばれることが多い)と呼ばれているためです。

 つまり、アルファベット順でジェネレーション「X」のすぐ下の世代がジェネレーション「Y」(またはミレニアル世代)、ジェネレーション「Y」のすぐ下の世代がこの「ジェネレーションZ(Z世代)」ということになります。

 ちなみに、「Z」の下がなぜ「α」かというと、ラテン文字の最後に当たる「Z」の次にギリシャ文字の最初に当たる「α」を採用することで、新たな時代を表したようです。

 そもそもなぜ、欧米諸国でZ世代に注目が集まったのでしょうか? それは長らく少子化が続く日本を中心とする東アジア諸国と異なり、移民・難民やその子供たちも多い欧米諸国では、このZ世代の人口が他の世代に比べて多いからです。

 NRF(全米小売業協会)によれば、アメリカではZ世代の人口は6100万人と、既にその上のミレニアル世代(Y世代)の人口の6000万人を追い越しているそうです。

 また、Marketo社の調査によると、Z世代の支出は週平均16.90ドル(1860円:1ドル110円で計算。以下同)で、年間では440億ドル(4.84兆円)に達します。中年にさしかかりつつあるミレニアル世代にはまだ及ばないものの、数年後には2000億ドル(22兆円)近くになると予想されており、近い将来、アメリカ経済を動かす主役になるだろうと言われています。

 Z世代に注目が集まっているのは、実は欧米諸国だけではありません。ブルームバーグの国連の統計分析によると、2019年には世界の全人口77億人の32%をZ世代が占めており(ミレニアル世代は31.5%)、欧米のみならず世界的に見て、Z世代の人口は多いのです(なお、この分析では、ミレニアル世代を1980~2000年生まれ、01年以降生まれをZ世代と定義している)。

Z世代と脱ゆとり世代

 では、日本の世代論に、このアメリカ発のZ世代のおおよその定義を当てはめてみましょう。

 日本の若者と言えば「ゆとり世代」(諸説ありますが、本書では1987~95年生まれとする)のことを指す、という認識をお持ちの方が多いと思います。

「ゆとり世代」の名称の元になった「ゆとり教育」は、第一次安倍政権の「安倍内閣骨太の方針2007」で、学力低下につながったと批判され、2008年に学習指導要領が改訂されました。

 そして、この新しい学習指導要領による、いわゆる「脱ゆとり教育」を受けた「脱ゆとり世代」(諸説ありますが、本書では96年生まれ以降の世代とする)が「ゆとり世代」のすぐ下の世代として誕生しました。彼らの年齢は、ほぼZ世代と一致しており、まさに彼らが「日本版Z世代」ということができます。

 ちなみに「脱ゆとり世代」という言葉は私が命名し、これまで様々なメディアで使用してきましたが、残念ながらまだあまり普及していません。

Z世代理解が重要な理由

 本書は、全世界的に注目され、日本でも最近、急激に注目が集まってきているZ世代をどこよりも深く解明することを目指して書かれました。

 もしあなたが企業人であれば、本書を参考にしていただくことで、令和の時代のビジネスやマーケティングをリードしていくことにつながるかもしれません。

 例えば、Z世代向けの新しい商品、サービス、メディア、アプリ、コンテンツ、広告プロモーション、Z世代をその地域に呼び込む行政施策、地域の農産物や名産品をZ世代を介してPRするための企画を考える一助になるでしょう。

 もしあなたがメーカー勤務で、中高年向けの商品を担当していたとしても、彼らを理解し、彼らの言の葉にのぼる広告プロモーションを打つことができれば、彼らのSNS上の「バズり力(拡散力)」によって、商品情報がターゲットである中高年世代へ伝播していくことにつながるかもしれません。

 コロナ禍で少し緩和されているものの、長らく少子化が続き、日本では慢性的な人手不足が続いています。もしあなたが人手不足に悩む企業の採用担当者や、個人商店のオーナーであれば、Z世代を理解することで、彼らに自社や自店に興味を持ってもらえるようになるかもしれません。

 もしあなたがZ世代の親、祖父母、教師、上司、先輩であれば、彼らとの付き合い方や、彼らの操縦法が理解できるようになるかもしれません。

 そして、もしあなたが一見Z世代に全く関係ない立場であっても、世界や日本で急激にZ世代に注目が集まり始めていることを考えると、彼らの分析を通して「今の世界」や「今の日本」の社会構造が見えてくるようになるはずです。

 また、Z世代が社会の中心となる近未来には、彼らの感性や感覚が、世界及び日本を支配することになるでしょう。すなわち、彼らを理解することは、近未来の日本及び世界を知ること、そして、あなた自身が近未来を知り、近未来に適応できるようになることを意味していると言っても過言ではありません。

 Z世代の心をつかむ企業や商品やサービスや人は、令和の時代、そして、ウィズコロナ、アフターコロナの時代を制するようになる――こうした強い想いの下、「新しい若者論」を10年ぶりに光文社新書から出版することとなりました。

 10年前の2010年に出した『近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」』には、このZ世代のすぐ上の世代である「ゆとり世代」について詳しく書かれています。

 そして、本書は「10年前のこの本との比較」という観点で作られています。そもそも世代論は、時系列で比較しないと意味がありません。本書のオリジナリティは、「ゆとり世代」とZ世代を詳細に比較した、おそらく世の中で唯一の本であるという点でしょう。

 これから10年間、本書がZ世代という新しい世代を理解する基本書になってほしいと願っています。

 あまりに混沌としたスタートを切った令和の時代を先読みして生きていく一助に本書がなれば幸いです。

目  次

はじめに――これからの消費の主役
10代前半~25歳くらいの世代/Z世代と脱ゆとり世代/Z世代理解が重要な理由

1章 なぜ今、日本でZ世代なのか?
日本には少ないZ世代/①平成からの反動/軽視されるようになった若者/テレビ業界に見る若者軽視の歴史/「老後2000万円問題」と「2025年問題」/インターネット広告費がテレビ広告費を超えた理由/平成の高齢化と令和の高齢化の違い/視聴率の測定の変更と「お笑い第7世代」/「東大王」「私の家政夫ナギサさん」/②「生活のデジタル化の進展」の影響/中高年向け商品でもZ世代を無視できない理由/③新型コロナウイルスの影響/「愛の不時着」/「ドルチェ&ガッバーナ」とタピオカブーム/④人材不足の問題

2章 「ゆとり世代」との違いから見る「Z世代」の特徴
「ゆとり世代」は「消費離れ」と「同調圧力」/暗い時代が生んだ「消費離れ」/携帯電話と「同調圧力」/「新村社会」と「mixi八分」「KY」/「ダイヤモンドの卵」/「逆求人」サイトの誕生/「chill(チル)」という価値観/「チル」を象徴する「シーシャ」ブーム/「ガラケー第一世代」と「スマホ第一世代」の違い/強い「自己承認欲求」「発信欲求」/「闇バイト」「大麻使用」と同調志向/「連れション離職」「連れション就職」「連れションバイト」/「ヤラセのいいね」/見えにくいZ世代の「自己承認欲求」「発信欲求」/つながることより発信がメイン/高い一人っ子比率と成人男性の母子密着現象/いつの時代も若者は自意識過剰だが……/「9割褒めて1割は改善提案」/「いじり」を受け付けない/「自己承認欲求お化け」/「ミー意識」/「スモールライフ」の「ゆとり世代」、「チル&ミー」のZ世代

3章 Z世代と消費トレンド
「間接自慢」/「間接自慢」と「匂わせ」/「間接自慢暴き」/「間接自慢」と「診断シェア」/「そっくりさん」アプリと「赤ちゃんフィルター」/「診断シェア」を使った広告プロモーション/「映えピク」/「若者の海離れ」から「海ピク」へ/「カフェピク」/「映えピク」=オシャレなピクニックの総称/「チェンジング」/「見た目変」/「4新」/1 「新時代」/①「8%映え」/②「平成懐古」/③「睡眠」と「リラックス」/2 「新切り口」/①「時限フード」「時限コンテンツ」/②情緒ネーミングと過剰ネーミング/3 「新インスタ映え」/「インスタ映え」「インスタ萎え」の後に/①「匿名映え」/②「自撮り免罪符」/「ぶりっ子免罪符」/③「偏見ペルソナ」/④「フェイク飯」/⑤「高さ映え」/⑥「はかな萌え」/4 「新タブー」/①「無性限」/②「死考」

4章 Z世代の「メディア生活」
高校生以上のスマホ所有率はほぼ100%/SNSの王様はツイッター/情報拡散のキーはZ世代女子/若者はツイッターのアカウントを平均2.11個持っている/「裏垢」と炎上体験/インスタグラムはツイッター以上に女子のもの/インスタグラム・ストーリーズについて/最も投稿されやすいSNS/SNSは「一投入魂」/インスタのフィード投稿との違い/フェイスブックは働く若年女性のビジネスツール/フェイスブックは若者の間でダウントレンド/TikTokはZ世代女子のもの/テレビとYouTube/習慣からコンテンツへ/テレビとYouTubeの棲み分け/Z世代の夜の可処分時間の取り合い/動画配信アプリの3強/若者のコミュニケーションツールはLINE一強/ミドルの利用率が高いマスメディアとそのデジタル版/ラジオは若年層で最も伸びたマスメディア/新聞と雑誌のデジタル版について/Yahoo!ニュースは中年にとっての新しいマスメディア/デジタルメディアは若年層でもミドルでも伸びている/Z世代と広告――「広告接触率(週1)」という新たな指標/本当は広告は見たくないけれど……/広告接触率が低いLINE、高いストーリーズ

5章 Z世代への新型コロナの影響
新たに生まれた六つのニーズ/1 「ニアリアル」について/2 「0密遊び」について/3 「超家充ニーズ」について/「ワンマイルウェア」/「お家カフェ」について/4 「マスク盛り」について/5 「インフルエンサーワナビー」について/6 「コロナワード」について/新型コロナによってZ世代が変わったこと/若い世代ほど収入が減少/最も増えたのは「テイクアウト」、減った「非日常消費」/10代は自粛期間中も実店舗での消費が増加/オンラインショッピングは消費増加/強いYouTube/「動画配信アプリ」について/就業意識の変化/社会意識、政治意識の変化/若者の間では政治不信は高まっていない/パーソナル政治意識/令和の消費の主役

6章 Z世代をつかむツボ 
「ネクストチル」と「ネクスト映え」/「チル映え」/「安かろう映えろう」/「動画映え」/「ジェンダーレスクール」/「ジェンダーレスクール」の象徴/韓流ブーム/韓流から華流へ/「チャイボーグ」/ファッション×意識高い系/「プチ」マーケティング/「コールアウト」と「キャンセルカルチャー」/「インフルエンサー未満」「超共感」「Flawsome」

おわりに  

2019年上半期 トレンド辞典 
2019年下半期 トレンド辞典 
2020年上半期 トレンド辞典 

(続く)




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