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焼き奉行必見!肉を焼くときは「肉汁」を見よ|樋口直哉『ロジカル男飯』

ガッツリおいしい33の料理を、極限までおいしくする方法をロジカルに追究した異色の新書本『ロジカル男飯』。
本書に収録したレシピとロジカルな解説の中から、普段の料理にも応用できる考え方を抜粋してご紹介します!
今回は、最適な焼き加減&出来立てのコンディションで食べられる、「帯広を超えた」豚丼の解説部分です。

「帯広を超えた」豚丼

肉汁は中心温度が65℃を超えたサイン

 適切に調理された肉はすばらしい料理の主役になります。肉を切ると断面から酸化や乾燥が進み、味わいが落ちるので、調理直前に塊肉から切り出すのが一番です。さて、切った肉をどれくらいまで加熱するか。これが肉料理におけるテーゼです。
 安全性を確保しつつ、タンパク質が硬くならない程度に加熱する必要がありますが、豚肉の場合、中心温度で70℃が目安になります。タンパク質の温度が65℃を超すと肉汁の放出がはじまり、さらに長く加熱するとパサパサとした硬い食感になってしまいます。豚バラ肉であれば脂肪が多く含まれているので、加熱しすぎてもパサつきにくいという特性はありますが、やはり加熱しすぎは避けたいところ。しかし、温度は目に見えませんし、薄い肉には温度計も差し込めません。では、どうするか? 
 肉の表面に浮いてくる肉汁を観察すればいいのです。肉の表面に肉汁が浮いてきた=下側が焼けて肉の繊維が縮み、肉汁を放出しはじめたことを示しています。この段階まで加熱したら裏返し、タレを加えて温度を下げ、後は余熱で調理すれば火が通りすぎる心配はありません。牛肉を除くほとんどの肉は最終的な調理温度を65℃〜70℃のあいだに収めれば間違いありません。薄切り肉は肉汁が浮いてきたら裏返し、反対側をさっと焼く。この考え方は焼肉を食べるときにも応用できます。

著者略歴

樋口直哉(ひぐちなおや)

作家・料理家。
1981 年東京都生まれ。服部栄養専門 学校卒業。2005 年、『さよならアメリカ』(講談社) で第 48 回群像新人文学賞を受賞し、作家デビュー。 同作は第 133 回芥川龍之介賞の候補にもなった。ほか にも、2014 年に映画化された小説『大人ドロップ』 や『スープの国のお姫様』(ともに小学館)、『新しい 料理の教科書』『もっとおいしく作れたら』(マガジン ハウス)、『ぼくのおいしいは3でつくる 新しい献立 の手引き』(辰巳出版)、『最高のおにぎりの作り方』 (KADOKAWA)など著作多数



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