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原政権3度目のリーグ3連覇なるか? 過去の連覇と比較したチーム状況の違いを分析

熱烈な巨人ファンで、多くの野球マニアや選手たちからフォローされるゴジキさん(@godziki_55)が巨人軍を分析。
シーズンも100試合目に到達しようとしていますが、セ・パともに苛烈な首位争いが繰り広げられています。巨人はリーグを制すれば原政権3度目の3連覇となります。過去2度の3連覇(2007-09、2012-14)の要因を振り返りつつ、今後の戦い方を考えます。

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年を追うごとに完成度が高まった2007~2009年

原辰徳監督の第二次政権時、巨人は2007~2009年、2012~2014年と2度の3連覇を成し遂げている。ただ、それぞれ3連覇の仕方は大きく異なるものだった。

2007年から2009年の3連覇は、年を重ねていくことによってチームが強くなっていた。2007年はペナントレースを制したもののクライマックスシリーズで中日に敗れ、2008年は「メークレジェンド」とも呼ばれた劇的な逆転優勝からクライマックスシリーズも勝ち上がったが、日本シリーズで西武に3勝4敗で敗退した。

雪辱を期した2009年は、まさに原辰徳の年となった。シーズン開幕前にWBCの代表監督を務め日本代表を優勝に導いたこともあり、監督してさらに肝が座るようになった原氏。主軸の小笠原とラミレスの「オガラミ」コンビは成熟の域にあり、加えて5月ころからトップバッターに任命された坂本の打撃が一気に開眼し、高卒3年目の遊撃手ながら規定打席に到達した上で打率3割を記録した。

さらに、その間に入る2番打者には育成出身の松本哲也が台頭し、広い守備範囲を活かして何度もチームのピンチを凌ぎ、ゴールデングラブ賞と新人王を獲得。この年の1、2番はほとんどの試合で坂本と松本が組む形となり、共に成長しながら、ポイントゲッターの「オガラミ」が打点を稼ぎチームを勝たせることに大きく貢献した。さらに、WBCのメンバーにも選出された亀井善行が「オガラミ」の後を打つ5番に座り、キャリアハイとなる25本塁打を含む好成績を残した。

このシーズンの巨人は、OPSリーグ1位となった阿部慎之助を7番に置けるほど、非常に水準の高い打線だった。さらに、亀井と阿部に挟まれていた6番の谷も、8~9月に調子を一気に上げていき(8月打率.375、9月打率.456)、優勝へのラストスパートに大きく貢献した。

投手陣も、勝ち頭であり過去の実績から見ても絶対的なイニングイーターであったセス・グライシンガーが夏場に離脱したものの、入れ替わる形でディッキー・ゴンザレスが軸となり内海哲也や高橋尚成、東野峻とともにローテーションを守った。さらに越智大祐・山口鉄也・マーク・クルーンの盤石な勝ちパターンを確立し、豊田清も+aで彼らを支えた。その結果、圧倒的な力の差でリーグ優勝と日本一を成し遂げた。

良くも悪くも「阿部慎之助のチーム」だった2012~2014年

一方、2012年から2014年の3連覇はその逆で、12年がチームのピークだった。この時期原監督がよくコメントしていた通り、良くも悪くも「阿部慎之助のチーム」としての3連覇だったと言える。

2012年は阿部が圧倒的な成績を残して個人としてもセ・リーグMVPを獲得。チームも交流戦優勝から始まりリーグ優勝、CS、日本一、アジアシリーズの5冠達成というこれ以上ない結果を残した。ただ2013年はペナントレースこそぶっちぎりで制したものの、日本シリーズは頼りの阿部がWBCからの疲労もあり絶不調に陥り、敗れた。

そして2014年は、2012~2013年と優勝に導いた阿部を中心としたメンバーの衰えが顕著だった。チーム打率はリーグ5位、打率ランキングTOP10に巨人の選手は誰もおらず、規定打席に達した阿部、坂本勇人、村田修一ら主軸は前年から大きく成績を落とした。チームトップの打率は長野久義の.297と、3割到達打者が不在のシーズンとなった。

しかし、この年の最優秀防御率とセリーグMVPに輝いた2年目の菅野智之を中心に防御率、失策数、与四死球、失点数はリーグ1位。守備範囲が広い新加入の片岡治大、坂本の二遊間のセンターラインや、ロペスや村田を中心としたトップクラスのディフェンス力を誇った。

さらに、ポイントとなる試合においては王者としての試合巧者ぶりをいかんなく発揮した。その象徴がリーグトップの盗塁数と得点圏打率である。チーム打率、犠飛数、四死球数は5位、併殺打数と犠打数はリーグワーストとなった中で、得点圏打率の高さから要所で得点し、僅差で逃げ切る試合が多いシーズンだった。

終盤や勝負所では、代打の切り札である高橋由伸や新加入の井端弘和を起用したり、2アウトからでもランナーが出た際は高確率でホームへ帰ってこれる代走の切り札である鈴木尚広を出して1点をもぎ取りにいった。

14年シーズン、接戦となった試合の成績は次の通りである。

1点差の勝敗 23勝18敗  勝率.560
2点差の勝敗 19勝8敗    勝率.704
3点差の勝敗 13勝8敗    勝率.619

3点差以内の勝敗が21の勝ち越しで最終的な貯金も21。接戦に競り勝ったことが最終的な順位に大きく影響したと分かる。また、延長戦でも13勝を挙げており、競り合いに非常に強かった。付け加えるなら、交流戦で投手は小山雄輝、野手は亀井善行が活躍して優勝を果たし、最下位に終わった広島と11位の阪神に差をつけられたことも非常に大きかった。

2012~2013年のような選手個々の力だけでなく、原監督の長年培ってきた試合運びの巧さや運用力、要所で勝ち切る「勝者のメンタリティ」が顕著に現れたシーズンだったと言える。

阪神と2ゲームでシーズン100試合目に迫る今年

今シーズンは、原監督は自身3度目となる3連覇を狙う。第三次政権における連覇を振り返ると、2019年のシーズンは開幕後の大竹寛・田口麗斗の配置転換などが功を奏した上に、チームとしても勝負所でしっかり力を入れ、勝ち切れる強さがあった。

坂本勇人・丸佳浩・岡本和真の並びで得点を積み重る形をベースに、この年で引退することになる阿部慎之助を休ませながら5番に置いた上で、後半戦はアレックス・ゲレーロも存在感を発揮して、スキのない打線を作れた。続く2020年は前年程の打撃力はなかったが、未だ残る試合運びの巧さで終盤に競り勝つスタイルでリーグ序盤を独走し、8月にはリーグ優勝をほぼ決めてしまっていた。

ここまで見ても明らかに、原監督の経験値は他と比較してずば抜けている。まさに「百戦錬磨」である。勝ち慣れていることに加え、長期にわたるペナントの戦い方を熟知していることも、他球団の監督からすれば脅威だろう。また、これまでの優勝の仕方にも、巨大戦力を活かした勝ち方から、貧打のチームながらディフェンス力を活かした勝ち方まで多様である。

今シーズンは対抗勢力の阪神が勢いのある中、巨人軍の投打の要として長年君臨してきた菅野智之と坂本勇人の怪我に加え、ブルペン陣の柱である中川皓太も離脱してしまったことは、監督キャリアで最大の窮地だったかもしれない。だがその中でも、これまで培ってきた経験値から対応していき、首位を射程圏内に収めている。

8月に中田翔が紆余曲折を経て急遽入団したが、彼のようなチームの流れを変えられる選手の入団や、菅野や中川の復帰により、直接対決になる前の早い段階で阪神とゲーム差を並べ、さらなるプレッシャーをかけていきたいところだ。
前半戦で先発の軸になっていた高橋優貴の調子や、CCメルセデスの東京五輪における疲労が懸念材料ではあるが、これまでの3連覇と同様に全体でカバーしてほしい。

後半戦開幕時は幸先のいスタートを切った巨人だが、直近の調子は下降気味である。しかし、選手層の厚さをしっかりと活かしていきさえすれば、原政権3度目の3連覇は充分に可能なチーム力である。

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