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人口900万人の国が世界を動かせる「納得の理由」|『世界を動かすイスラエル』(NHK出版新書)

私たちにも馴染みの深い国・イスラエル。1948年の独立宣言以来、つねに世界の注目を集めてきました。その人口はおよそ900万。日本の10分の1にも満たない規模の国が、ここまでの影響力をもっているのはなぜなのでしょうか。それを紐解くには、当然「宗教」への理解が欠かせません。澤畑剛さんの『世界を動かすイスラエル』(NHK出版新書)を読めば、イスラエルを取り巻く状況が理解できるはずです。

「エルサレム宣言」の背景

なぜイスラエルが世界を動かすのかといえば、イスラエルがアメリカを動かすからである。2018年の統計によれば、アメリカ合衆国の人口の約23.1%が無宗教、約23.0%がカトリック、約22.5%がふくいん、約11.0%がプロテスタント主流派である。つまりアメリカ人の2人に1人以上がキリスト教徒であり、そのキリスト教徒の二人に一人近くが福音派なのである。

福音派(Evangelical)」とは、19世紀にイギリスのピューリタンから派生し、キリストの言葉(福音)すなわち「聖書」の教えを厳密に守ろうとする原理主義的な立場を指す。20世紀に「反中絶・反進化論・反イスラム」の右派保守主義を掲げて、アメリカ国内で急速に広まった。彼らは、ドナルド・トランプ氏を熱狂的に支持し、結果的に彼を大統領に当選させた。

アメリカのユダヤ人は約600万人にすぎないが、数千万人の福音派を加えると一大勢力になる。2017年12月、トランプ大統領は、イスラエルが軍事的に占領したエルサレムを「イスラエルの首都」と公式に認める「エルサレム宣言」を発表して、世界を驚かせた。

彼は、イスラエル建国70周年の2018年5月14日、テルアビブのアメリカ大使館をエルサレムに移転させた。エルサレムといえば、もちろんユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地であり、その帰属は長く和平交渉のテーマになっている。トランプ氏の独断的な「宣言」は、EU諸国をはじめとする国際社会から大きな非難を浴び、国連では「撤回を求める決議」が総会で採択された(賛成128か国、反対9か国、棄権35か国、欠席21か国)が、アメリカは拒否権を発動した。

本書で最も驚かされたのは、国連決議も国際法も無視してイスラエルが続々と建設しているユダヤ人入植地に、福音派のアメリカ人がツアーを行っているという事実である。彼らは、キリストが十字架を背負って歩いたゴルゴダの丘の跡地を泣きながら歩き、広大なブドウ畑で何日も無償で働く。完成したワインはアメリカに輸出され、その大部分は福音派が購入して飲む。彼らがイスラエル支援のロビー活動を行い、アメリカを動かしているのである。

澤畑剛『世界を動かすイスラエル』NHK出版新書、2020年。


本書のハイライト

見渡せば、日本は不安定な中東から原油を輸入するだけでなく、イスラエルのイノベーションを取り込む時代に向かっている。立ちはだかる最大のリスクは、一触即発のイラン vs. イスラエル・アメリカ・サウジアラビアの緊張関係だ。この問題は現在の中東で、平和構築を語るうえでも、日本がビジネスを行ううえでも避けては通れない。日本はこれを中東情勢の本丸の問題と捉えて、アメリカに追随するのではなく、緊張緩和に向けて独自のイニシアチブを発揮できないだろうか。歴史的な再編が進む中東情勢は、日本自身の問題にほかならないからだ。

p. 231


以上の記事は、高橋昌一郎『新書100冊』(光文社新書)に掲載された文章を一部抜粋・再構成したものです。

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