MVP級の活躍を見せる岡本と、解せない坂本・丸の起用法。巨人軍の首位攻防1週間を振り返る(野手編)
熱烈な巨人ファンで、多くの野球マニアや選手たちからフォローされるゴジキさん(@godziki_55)が巨人軍を分析。
阪神・ヤクルトと三つ巴の首位争いを繰り広げる巨人はその両チームと6連戦。ヤクルトには2勝1分けと勝ち越した一方、阪神には1分け2敗と痛い負け越し。両カードで見えた希望と課題を分析します。
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勝負どころで一発を放った岡本和真の頼もしさ
今シーズンの岡本和真は、2年連続の打撃2冠王が射程圏内である。本塁打に関しては2位の村上宗隆に4本差(岡本35本・村上31本)をつけており、打点もここまでキャリアハイを大きく超えるペースで稼ぎ、2位の村上に18打点差をつけている。もし巨人が今シーズン優勝すればMVPを獲得できるくらいの活躍をしていると言っても過言ではない。
昨年までの岡本は、自信がない打席では打席内で「置きに行って」四球を狙っていたが、今シーズンはこれまで以上に4番としての責務がその姿からは感じられ、チャンスがあれば自分が決めるという意思も伝わってくる。
2018年に22歳の若さで3割30本を記録した翌年の成績は.265 31本。そして24歳で迎えた昨シーズンは2冠王に輝いた。この年齢からすれば申し分ないはずだが、それでは求められるレベルからは程遠いのだ。岡本クラスにもなると、毎年のように3割・35本~40本は達成しなければならない。それくらいのレベルが求められる領域の選手になっているからこその要求である。
昨シーズンは2冠王に輝いたが、重要な「ここ一番」での打点はシーズン序盤にしか見受けられずにいた。また、今シーズンのキャンプからオープン戦、開幕当初にかけては不調だったため不安視されていたが見事に復調。坂本勇人と丸佳浩が離脱していた中、チームを引っ張ってきた。先週のヤクルト・阪神との首位攻防6連戦を見ても、接戦の展開で一発を放っており、主砲としての頼もしさが増している。ヤクルト戦では同点に追いつくホームランを放ち、自己最多の33本塁打にのせた。
ちなみに対ヤクルトの今季成績は打率.333 9本塁打 26打点 OPS1.174と球団別に見ると驚異的な記録を残している。17,18日のヤクルト戦でも自らのバットで勝利に結びつける活躍に期待したい。
阪神戦でも2試合でホームランを放ちチームを牽引。だからこそ、このカードは勝ち越しをしたいところだった。
かつて落合博満氏がアレックス・ラミレスのことを「4番打者らしい4番」と評価していたが、これは四球を選ぶのではなく、自分が決めていくスタイルだったことが背景にある。今年の岡本に関しては、それを彷彿とさせる姿が見られる。今後も置きにいって四球を選ぶのではなく、積極的に自らのバットで勝負する打撃を貫いてほしい。
首位攻防の一戦で坂本勇人を試合中盤に変えた意味とは
前回の記事でも述べたように、阪神との3連戦は普通に戦っていれば2勝1敗で勝ち越していた確率が高かった。特に、3戦目は坂本勇人を早い段階で降ろしてしまい、終盤に追いつかれた後は再び引き離す余力が残っていなかった。また、これまで築き上げられていた屈指のディフェンス力は坂本の存在で成り立っていた部分があり、交代後は守備面でもミスが生じてしまった。この第3戦はほぼ確実に勝てていた内容だっただけに、原第三次政権史上でも最悪に近い采配、試合だった。坂本のコンディションに気を遣う必要があることはこの連載でも何度も強調しているが、首位攻防の試合で、攻守の要であり、最重要選手の坂本を試合中盤で外す意味がどこにあったのだろうか。点差が開いていたとは言え、このカード初戦で勢いづいた阪神を見ているなら、確実にとって行くことが間違いなく必要だった。
この試合の流れで思い出したのは、2010年4月13日の阪神戦だ。この試合は6点リードの中、小笠原道大を下げた後に逆転負けを喫した。
ただ、この試合はシーズン序盤であり、この試合で豊田清の衰えを判断できたなど、立て直しが効く時期でもあった。
しかし今回の場合は、シーズン終盤に差し掛かった大事な時期である。このタイミングで10年以上前と同じような印象が残る試合、似たような采配を(しかも同じ阪神相手に)するのはいかがなものと思えた。その他にも丸を3番に置かないなど、連覇の立役者に対する待遇の悪さも今シーズンは目立っている。
ゲーム差がほとんどない状態で、巨人が阪神・ヤクルトに勝る部分は、物量的な意味合いでの選手層の厚さや、優勝に対する経験値だ。しかし、その経験が活かされていない状況が続いている。今月もヤクルト2連戦・阪神戦(1試合)の並び、さらには阪神との3連戦があるが、その時期までには立て直していき、3連覇に向けて再度アクセルを踏んでいきたいところだ。