見出し画像

菅野に光明の見えたヤクルト戦と無能な継投策で「落とした」阪神戦。巨人軍の首位攻防1週間を振り返る(投手編)

熱烈な巨人ファンで、多くの野球マニアや選手たちからフォローされるゴジキさん(@godziki_55)が巨人軍を分析。
阪神・ヤクルトと三つ巴の首位争いを繰り広げる巨人はその両チームと6連戦。ヤクルトには2勝1分けと勝ち越した一方、阪神には1分け2敗と痛い負け越し。両カードで見えた希望と課題を分析します。

本連載がもとになっている書籍『巨人軍解体新書』はこちらからお求めください↓↓↓

菅野智之の復活を予期させる力投が光ったヤクルト戦

今シーズンの菅野智之は怪我等で4度もの離脱があり、キャリアの中でも最も苦しいシーズンとなっている。

菅野はこれまでのシーズンでも、離脱があった際にも二桁勝利を記録したりタイトルを獲得するなど、必ずチームに何かをもたらしてきた。しかし、今シーズンはストレートの球速がイマイチ伸びきらないまま、これまでのキャリアでも状態や調子は最悪に近かった。菅野自身、悩んでいた時期もあったことだろう。東京五輪の代表選手に選出されていたが、コンディション不良のため辞退。国際大会は、2015年プレミア12と2017年WBCに選出されており、特に2017年WBCでは準決勝のアメリカ戦でキャリア最高とも言えるピッチングを見せた上での惜敗だったことから、東京五輪に賭ける気持ちも強かっただろう。

その東京五輪を辞退してまで調整に努めた結果、復帰後は広島打線に打ち込まれたものの、投げているボール自体は離脱前より来ているものがあった。そして9月1日のヤクルト戦では、8回108球6奪三振と圧巻のピッチングを見せて、ようやく3勝目を挙げた。原巨人3度目の3連覇へ向けて、役者は揃い出した。

阪神に勢いを与えてしまった初戦の継投失敗

ヤクルトとの3連戦を2勝1分けと制して迎えた阪神との初戦は、戸郷翔征が先発した。今年の戸郷は昨シーズンと比較すると急に崩れることが多く不安定なピッチングが見られていたが、この試合も中盤、巨人が3点リードした後の6回に崩れ始めたが、なんとかこの回を抑えた。

この阪神とのカードで勝ち越しを狙うなら、この回で変えるべきだった。だが戸郷を7回まで引っ張ったあげく案の定打ち込まれてしまい、逆転を許した。戸郷を伸ばすだけ伸ばしておいて、危うくなったら投手を3人注ぎ込むという非合理的な継投。逆転負けを喫して、阪神を勢いづけてしまった。この試合の継投は、今シーズンでも最悪の展開だったのではないだろうか。

2戦目は9回までリードをしていたが大山悠輔が逆転サヨナラホームランを放ち、阪神が首位を奪還した。3戦目も6点リードと普通に試合を進めて行ければ勝てる展開だったが、引き分けに終わった。この阪神戦に限って言えば、試合運びが実にもったいない。2戦目は仕方ないにしても、1戦目と3戦目は勝てていた展開だったので、勝ち星を「落とした」と言ってよいだろう。

投手コーチの運用力に改善の余地はあるのか?

2019年から巨人軍の投手コーチを務める宮本和知氏には、投手陣の運用力に大きな課題が見られる。現役引退してから現場を20年以上離れていたことも要因だと思われるが、ここまで運用力の低さを露呈するケースはかえって稀である。宮本氏の就任後にチームがリーグ2連覇を達成したことが、良くない影響を与えてしまったように思う。結果的に成功はしているが、起用法等の「プロセス」は全く良くない。邪推だが、優勝という成果を基に勘違いが生まれているのではないか。これまでの投手運用を見ても、ブルペン陣に大きく負担のかかる起用法が目立っている。

特に、今シーズンは延長戦がないことからそれが顕著で、交流戦で9回までに球団史上最多の9投手を投入する試合すらあった。阪神との試合でも1イニングに4投手を注ぎ込むという、無計画な投手起用が目立った。

また、イニングイーターでもない先発投手が、限界に来始めている時ですら引っ張りすぎている試合も目立つ。こうした現状を見ると、運用体制以前に首脳陣の改革が必要なのは間違いない。開幕当初から状況が読めないコロナ禍とはいえ、シーズンはトータルで見ても100試合以上はある。中継ぎや抑えとして登板する投手は登板試合数だけが見られがちだが、試合展開によっては毎日のようにブルペンに入ることもあり、これは異常な状況だ。

接戦の試合が多いことや、勝ち続ければ勝ちパターン級が登板過多になりやすい傾向はどうしてもあるが、それ以外の試合でも同じように主戦級の投手を注ぎ込んでしまえば、負担が増えるのは火を見るよりも明らかだ。

勝ちパターン級の投手を、大差のついた試合でも起用していることによって、一時的に彼らの状態が落ちてしまったこともある。各点差、各場面で投手起用をより丁寧にマネジメントし、「勝ち方」を意識していくことが、優勝ひいては日本一に向けての鍵になっていくだろう。

肩が「消耗品」である投手からすると、行き当たりばったりで急遽投げることになるのは、普通はありえないことだ。まさに異例のことである。これまでチームを支えていたチアゴ・ビエイラも疲労から状態が落ちてきているので、ここ一番の勝負でしっかり勝てるように依存から脱却していくことも必要だろう。

どのチームも抜け出しきれない中で、こうした点をしっかりと改善していき、再び首位を奪い返して欲しいところだ。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

光文社新書ではTwitterで毎日情報を発信しています。ぜひフォローしてみてください!