見出し画像

【光文社:新人研修レポート②】最初の知の入り口

 光文社新入社員のモォーリーです。私がこれから書くのは、『サイドバック進化論』について。私が初めて読んだ新書です。6年経った今でも、鮮明に記憶しています。

出会い

 この本とは、高校二年生の3月に出会った。地方の進学校に通っていた私は、直近にせまった期末テストの勉強をするべく、友達に連れられて図書館に行った。苦手な数学の問題に取り組んだ。小一時間ぐらいして、飽きてきた。定期テストが迫っているとはいえ、まだ一週間もあったのでやる気がおきない。一緒に図書館に来た友人に不必要に絡んでみた。構ってはくれるが、少し迷惑そうだ。友人は、私とは違い優秀で、テストに向けて高い意識で取り組んでいた。私は彼が適切なときに適切な努力ができるところを尊敬していたので、あまり絡むことはやめておこうと思った。そうなると、いよいよ暇である。勉強するべきなのはわかっているのだが、やる気が出ない。当時流行っていたパズドラのスタミナも切れてしまった。ツイッターも、見飽きた。いよいよやることがない。そこで、私は図書館をぶらぶらしてみることにした。本を読むことはいいことだ。たぶん国語の点数も上がるに違いない。もはや読書は勉強だと自分に言い聞かせた。書店で買う派であった私は、図書館は勉強する場所という認識だったが、本を探し始めた。久しぶりに館内をぶらぶらしてみると普段目にしない本に出会う。普段、書店では目もくれない相対性理論の本を手に取ってみた。不思議と、小説のように面白すぎる本を読もうとは思わなかった。また、図書館で、小難しい本を読んでいる自分のことが少し気にいってもいた。少し読んでみたが、物理がものすごく苦手であった私には、相対性理論はさっぱり理解できなかった。小難しい本は読みたかったが、全く理解できない本は読みたくない。30ページほど読み進めたが新しい本を取ってくることにした。徘徊していると、「スポーツ」の棚に吸い寄せられていった。サッカー部だった私は、当時本当に夢中になって部活に励んでいた。テスト期間のため、よけいにサッカーがしたくてウズウズしていた。そこには60冊ほどサッカー関連の本が置いてあった。小学生の時に読んだ基本的な入門書から、PKについての専門的な本まで様々揃っていた。そこで、『サイドバック進化論』を見つけた。恥ずかしながら当時の私は、新書という形式の本の存在自体を知らなかった。しかし、この本の知的な雰囲気の表紙と、進化論というかっこいい響きに手に取らずにはいられなかった。

中身

 読み進めていくと、トップレベルの選手の目線からサイドバックについて深く語られていた。サイドバックとは、サッカーにおけるポジションの1つで、サイドの守備が主な役割だ。その中で状況を見ながら、攻撃に参加する。本書の内容を簡単にまとめると、日本の攻撃的なサイドバックの草分け的存在である名良橋晃さんによって、サイドバックに求められる資質や、日本サッカーにおけるサイドバックの役割の変遷が書かれている。加えて、往年の名プレイヤーとして知られるジョルジーニョや、当時売り出し中の若手であった酒井宏樹選手と対談することで、実際のプレーヤー視点が浮かび上がる構成になっている。

影響

 試合中の思考が変わった。目の前の相手に勝つために自分の対応を変化させることの必要性を学んだ。名良橋さんが、相手選手の利き足によって対応を変化させると言及していた。当時の私は、相手に対して個別に対応するというより、常に画一的な対応しかできていなかった。しかし、この本を知ってから、相手選手の特徴を観察しつつ相手の嫌がるプレーができるようになった。昔コーチに習った画一的な方法から、知がアップデートされた。他にも、クロスへの対応や、相手選手のキックフォームからボールの質を予測することもできるようになった。実際、この本を読んだ後、私のサッカーは上達していった。特に「やられたら嫌だと相手が感じるプレーを常に選択し実行する」という考え方は私の宝物だ。ぐんぐん上達していき、最終的には大学の部活である程度の高いレベルの人たちの中でもプレーできた。

感想

 勉強から逃避するために出会った光文社新書から、知の入り口の凄さを知った。それまで読んでいたサッカーの本は、知というより娯楽や、ルール説明に近かった。しかし、『サイドバック進化論』は、私に新しい知を与え、考え方に影響を与えた。その影響は何年も続き、私のサッカー観を方向付けていった。ここまで読んできていただいた方は、きっと私がサイドバックでだと考えたのではないかと思う。実は、私のポジションはGKだった。サイドバックの知を、ポジションの違う私(GK)のプレーに転用することができたのが、この本を読んでの最高の醍醐味だ。一度自分に取り込んでから、少し変化させてアウトプットするという「進化」ができたのだから。

画像④

この本を読んだ少し後、PKを止める私

最後に

 『サイドバック進化論』のお陰で初めて新書に出会い、新書を読む習慣がついた。日常的に知を自分の中にインプットすることで、新しい考えを持ち、行動でアウトプットすることができる。『99.9%は仮説』からは、友人に62000円貸したのに真顔で60000円返されたときの気の持ち方を、『バッタを倒しにアフリカへ』から、普通とは違うことをする人の考え方を学んだ。これからも様々な知の入り口に触れつつ、自分も知の入り口を作れるようになっていきたい。

画像③

紹介したもの以外の家にあった知の入り口たち

この記事が参加している募集

オープン社内報

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

光文社新書ではTwitterで毎日情報を発信しています。ぜひフォローしてみてください!