わたしの健康法|パリッコの「つつまし酒」#103
少しでも長くお酒を飲むために
酒飲みにとって最大の恐怖、それは、痛風。
残念ながら僕、痛風の発作はおよそ5年ほど前に経験済みでして、そりゃあもう、悲痛な顔を通りこして大爆笑しちゃうくらいの痛みを経験したものですが、あれってとにかくおとなしくしていると、3日くらいでころっと症状がおさまってしまうんですよね。喉元すぎればなんとやら。しばらくはついそのまま、「きっと何かの間違いだったに違いない」と自分に都合よく解釈し、以前どおりの日々を送っていました。
ところが飲み屋なんかで諸先輩がた(痛風の)から話を聞くたび、嫌〜な不安の層が心に堆積してゆきます。端的に言えば「ほっとくとヤバいよ」という話なんですけども、痛風の発作は2回、3回とくり返すほどに重症化してゆき、やがて想像することすらもはばかられるような事態になってしまう可能性も……っていう。
なので、早く病院に行かなきゃなぁと思いつつ、なんの痛みもないのに「よし!」と実行に移せる人ってあまり多くないですよね。かくいう僕もそのタイプで、そのままうやむやに過ごしてしまっていたところ、今から2年ほど前、恐れていた発作再び。こりゃあもう、むしろいい機会だと思って病院へ行き、尿酸値を下げる薬というのを出してもらうようになって、ありがたくも以前よりずっと不安のない日々を送っているというわけです。
それ以来、薬をもらうために月一のペースで通院しては、たま~に血液検査なんかをしてもらってたんですが、数ヶ月前のその結果がちょっとまずかった。長引くコロナの影響もあるのかもしれません。お医者さん曰く「血圧、中性脂肪、γ-GTPあたりが以前より高くなってますね〜あんまりよくないな〜」とのこと。
とたんに顔面蒼白。一刻も早く対策を講じたい。けれども、自分の性格はよくわかっています。趣味の散歩以外で健康のための運動を始めても、どうせ3日坊主で終わる。しかしながら、人生少しでも長くお酒を楽しむために、なるべく健康ではありたい。
そんな鬱々とした気持ちでいつものスーパーへ「宝焼酎ピュアパック 25° 1.8L」を買いに行った際、ふと目に入ったのが、健康食品コーナーの「ごぼう茶」でした。
ごぼう茶
今まで視界の隅にも入ったことがなかったけれど、こういうものっていかにも体に良さそうだよな〜と手に取ってみる。なんでもゴボウには、「イヌリン」と「サポニン」というすっごく優秀な成分が含まれていて、それがあ〜だこ〜だと作用して、血糖値の上昇が抑制され、血液がサラサラになり、血流が良くなり、腸内環境が整い、免疫力が上がり、大腸がん予防にもなり、さらには美肌やアンチエイジング効果まであるんだそう。「マジか! 飲む以外の選択肢ないじゃんか!」と心のなかで絶叫しつつ、買い物カゴへほうりこんだのは言うまでもありません。
それ以来、毎朝ごぼう茶を入れて飲むのが僕の日課となりました。最初こそ「ウッ、これ、単なるゴボウ汁……」なんて感想を抱いたけれども、何日かすると慣れてしまって、今や、どこか垢抜けないんだけれども心癒される味のこのお茶を飲まないと1日が始まりません。また、そのために真空断熱のポットを買いまして、寒い時期なら1日中温かいごぼう茶を。気温が上がってきた最近は一度冷まして氷とともにポットに入れてキンキンに。これが、夜に甲類焼酎の割りものにしても、甘みが引き立ってなかなか美味しいんですよ。
もち麦ごはん
健康志向が突如高まり、同じスーパーで見つけたのが「もち麦」。
もち麦とは、もちもちぷちぷちした食感が特徴の“もち性”大麦のこと。これをお米に混ぜて炊くだけで、ゴボウの2倍、玄米の4倍も含まれている、現代人に不足しがちな食物繊維が自然に取れてしまうんだとか。
ポイントとなるのは「大麦β-グルカン」なる水溶性食物繊維で、これがあ〜だこ〜だと作用することにより、糖質の吸収を抑え、食後の血糖値上昇を抑え、コレステロールの体外への排除を助けてくれる。しかもですよ? 朝に食べれば、糖質の吸収を抑える効果が次回の食事、つまりお昼まで続いてしまう。これを「セカンドミール効果」と呼ぶそうで、「食べる以外の選択肢なし!」ですよそりゃあもう。
実際、まず食感のもちぷちが楽しく、よく噛みたくなるので、僕のクセである早メシ抑制にもなる。味にもほんのり麦っぽい素朴さが加わってとても美味しい。日常的に食べるごはんとしては、白米より好きかもしれません。
それからさっきのごぼう茶、あれっていわば「粉砕ゴボウ」なので、出がらしは食べてしまってもいいんだそう。そこで冷ましたティーバッグをぎゅっとにぎり絞り、もち麦ごはんに混ぜてしまう。最近はここに質素なおかず一品を加え、勝手に「枯れごはん」なんて呼んで朝食としていますが、なんとも体にいいことをしている感じが快感です。
アマニ油
だんだん説明するのが面倒になってきましたが、こいつもすっごく体にいいらしいですよ。現代人に不足しがちで、人間の体のなかでは作ることができない「オメガ3系脂肪酸」という脂質が含まれていて、1日スプーン1杯摂取するだけで、これまた中性脂肪を抑えたりなんだり、そりゃあもう、すごいもすごいんだそうです。っていうか、不足しがちなもの多いな! 現代人。
熱に弱いので炒め油なんかに使うんじゃなく、おかずやらおみそ汁に食べる直前にたらすようなイメージ。そもそもけっこういいお値段するので、炒め物に使おうなんて気はおきないんですけどね。
ここしばらくは毎日、以上の3つを摂取していて、実際、前回の血液検査ではお医者さんから「あれ、前より数値が下がってますね」なんて言われ、どれがどこまで効果があったかはわからないんですが、とにかくちょっぴり安心。
それ以上に、最近では“マイ・ルーティーン”なんていうんでしたっけ? 毎朝お決まりの「わたし、体にいいことしてますけど」という習慣の気持ち良さが、なんともたまらないんですよね。
最後にもうひとつ、「あの由美かおるさんが実践しているという呼吸法」についてもお話ししたかったんですが、今回はスペースがなくなってしまったので、またの機会に。
もち麦ごはん
パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。
2020年9月には『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)という2冊の新刊が発売。『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。Twitter @paricco