「今時、声に出してはいえないけど、少子化って、女性が社会進出するせいだよな」と思っている人へ
こんにちは! 認定NPO法人フローレンスの前田晃平です。今回の記事では、少子化の原因についての誤解について解いていきます。
日本の少子高齢化施策が完全にターゲットを外している件について
「少子高齢化がヤバイ」といわれて久しい日本ですが、そのヤバさがいよいよ極まっています。前年、出生数は統計開始以来過去最低の86万人となって世間に衝撃を与えましたが、21年度は、新型コロナの影響で80万人を下回る可能性があります。
政府も、こりゃなんとかしないと!ってことで、様々な施策をうっています。「3年間抱っこし放題」を実現する育児休業の拡充とか、3歳からの幼保無償化とか、ね……。
私自身も一歳になる娘の子育て真っ最中ですが、正直、微妙だなぁと感じる施策が多いです。それ、今やることなの……?
(3歳までずっと抱っこしてたら心身ともにヤバイ。3歳からの幼保無償化っていうか、まず保活の負担をなくしてほしい。待機児童問題とかありえない。そして、保育の質を高くしてほしい。無償化より、そっち先でしょ!とかとかとかとかっ!!言いたいことは、山ほどあります。)
なぜ政府は、こんな斜め上の施策を矢継ぎ早に繰り出してしまうのか。私は、問題解決のターゲット(=原因)を勘違いしているからだと思っています。もう、女性のライフスタイルの変化が少子化の原因だと思っているのが透けて見えるんですよね。
ママが育児を担うべき!子どもはママと一緒にいるべき!だから、3年間抱っこし放題とかいう、謎の発想が生まれるのではないでしょうか。
しかし、そんなお歴々の発想には、統計的根拠があるようです。
実際、25~34歳の日本人女性の就業率の推移を1968年からみてみると、女性の社会進出が進んでずっと右肩上がりである一方、合計特殊出生率は右肩下がりとなっており、負の相関関係があるっぽいです。
おぉ……。女性の社会進出は喜ばしいけど、それはすなわち、少子化の加速を意味するのか……!だから政府のお歴々は、本音では「女性は社会進出なんてしないで家で家事育児やっててよ……」って思ってるわけね。
でも、これ、壮大な勘違いなんです。
大切なのは、なんでそもそもこんなことになっているのか、です。実は先進諸国に目を移してみますと、女性の社会進出が進むと、合計特殊出生率は改善されています。日本とは、まったく逆に現象が起こっているんです。
なんで、こんなことになってしまうのか?それは、ちょっと歴史を遡るとわかります。
1970年代では、先進諸国でも女性の社会進出と合計特殊出生率の間には負の相関がありました(下図の上)。日本と同じ状態です。それが、1985年(真ん中)、そして2000年(下)と時を経て、徐々に正の相関になっていったのです。これは、ジェンダーギャップ改善の流れと完全に一致しています。
この事実が意味するところは極めてシンプルです。近年になり、多くの女性が、男性と同じように働きたいと思うようになりました。しかし、専業主婦の時と家事育児の負担がまったく変わらないとしたらどうでしょうか。そんなことは、不可能です。時間がないからです。ならば、結婚しなくていい、子どもも産まない、ってなります。これは当然の発想です。
しかし、欧米を中心に、この女性の思いを受けて、社会の側が変わっていきました。誰でも働ける環境を整えるべきだ、と。そうなって初めて、女性は自分らしく生きられるようになり、子どもが欲しい人は子どもを産めるようになります。そうなったのが、2000年代(上図の下)でした。
少子化問題の当事者は女性ではなく男性である
何が言いたいかというと、少子化問題の当事者(=原因)は、女性じゃなくて社会の側、もっというと、男性にあるのです。
我々日本人男性は、世界でもトップクラスの家事育児をしないクラスタです。もちろんそれは、怠け者というわけではありません。というのも、私たちは世界一長く働いているクラスタでもあるからです。みんな、一生懸命働いているんです。
でも、それは、女性の人生を犠牲にすることで成り立っている“一生懸命”です。働きたい、自分らしく生きていきたい、そう思っているのに、できない。だって、男たちが家に帰ってこない。家事も育児も、全部自分たちがやらないといけない……。それなら、もう結婚なんてしないでいい。子どももほしいけど、仕方ない……。こんな女性たちの思いが、少子化問題の根っこで渦巻いています。
日本の少子化問題が解決しないのは、男性の側が昭和から進化してないからなのです。女性だけ進化している。私たちが、追いつかないといけなんです。
東京大学大学院経済学研究科教授の山口慎太郎さんも、こんな記事を書かれていました。
女性の社会進出を実現するには、「男性の家庭進出」が必要不可欠です。政府・社会が本来出すべきメッセージは「すべての女性が輝く社会づくり」ではなく「すべての男性が安心して家事育児できる社会づくり」ではないでしょうか。
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