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重版記念!『サッカー店長の戦術入門』(龍岡歩/著) 担当編集の編集後記

祝・発売即重版!

こんにちは。編集部の高橋です。noteのつぶやきでもお知らせした通り、光文社新書の2月刊『サッカー店長の戦術入門』が増刷となりました。

本書は関西地域リーグ「おこしやす京都AC」にて戦術分析官を務める龍岡歩さんによる初の著書です。タイトルにもある通り、龍岡さんはその昔、とあるサッカーショップの店長を務めていました。その際に書かれていた戦術解説ブログがとても面白い(かつ変態的である)と評判になり、プロクラブにスタッフとしてスカウトされたという奇特な経歴をお持ちの方です。しかも、選手としてサッカーをプレーしたことが全然ないのです……!部活動もやらず帰宅部で、家のビデオデッキでひたすらサッカーの試合を観る学生時代だったとか。

さて、いつもはこのnoteで本の「前書き」を公開することが多いのですが、そちらは既に「サッカー店長」ブログにて公開してくださっています。

そこで今回は重版を記念して、本書が生まれた経緯を含めた私の「編集後記」(?)を僭越ながらお届けしようと思います。

私と「サッカー店長」との出会い

サッカー店長こと龍岡さんは『フットボール批評』(素晴らしい雑誌です。今月リニューアルされました)に寄稿されたり、TV番組「激レアさんを連れてきた。」に出演したりして、少しずつその名前が拡がってきました。

ですが私は言いたいのです。自分こそが「最古参」であると!!
なぜなら、私は龍岡さんが文字通り「店長」をやっていた頃からの、(しかも最初期の)ブログ読者だからです。一体なぜ店長のブログを読んでいたのか。もちろん記事が面白かったからなのですが、その出会いは偶然です。

私は小1~高2までサッカーをやっていたのですが(下手ではないけど上手くもなく、運動量でカバーする「部活サッカー」によくいるタイプでした)、プレーするのはもちろんのこと、試合を見るのも結構好きでした。Jリーグよりも欧州サッカーが中心で、好きなチームはアーセナル。「インビンシブルズ」時代も少しだけ見ていましたが、毎試合のように見ていたのはセスク、フラミニ、フレブ、ロシツキーの「黄金の中盤」時代。今でもフレブほど過小評価されている選手はいないと思っています。
当然、ウイイレの「マスターリーグ」にも膨大な時間を注ぎ込みました。10シーズン以上プレイすると選手が引退→若手として再登場という風に一巡してくるのですが、あの時間があれば何ができたのか、後悔こそしていませんが思い出すたびに悲しくなります。

さて、そんな私はある時(たぶん中2の頃)、誕生日プレゼントに何が欲しいか母親に聞かれてこう答えました。「デルピエロのユニフォームが欲しい」。

デルピエロとは言わずもがな、ユベントスのエースだったアレッサンドロ・デル・ピエロ。90年代後半にR・バッジョの後継者として華々しく活躍するも次第に怪我に泣かされ、代表ではトッティに主役を譲る側面も。そして06年にはカルチョスキャンダルでユベントスが2部に降格する中、真っ先にチームに残ることを宣言。チームと共に歩んだバンディエラ(旗手の意。イタリアではチームを象徴する選手のことをこう呼びます)。もちろんキャリア初期の溌溂としたプレーも好きなのですが、個人的なツボはチームを1部復帰させた後の、ベテランとなった円熟期です(08-09のチャンピオンズリーグ、レアル・マドリー戦の2得点などは特にしびれます)。デルピエロはそのキャリア、風貌、プレースタイルどれをとっても私のアイドル的存在でした。部活のシュート練習では左45度の「デルピエロ・ゾーン」からばかり蹴って(またの名を「アンリシュート」とも言います)、よく怒られていました。

話を戻すと、そんなデルピエロのユニフォームが欲しかった私は、サッカーショップのwebサイトを片っ端から漁ります。私の住んでいたド田舎にサッカーショップはなく、選手の名前入りユニフォームなど全く手に入る環境ではなかったのです。そして出会ったのが、龍岡さんが後に店長を務めることになる某サッカーショップ(うろ覚えですが、たしかこの時はまだ違う方が店長でした)。海外選手のユニフォームやらサイン入りスパイクやらを豊富に取り揃えていて、めちゃくちゃに興奮しました。そしてユニフォームを買い、メルマガを購読することに。すると、このショップメルマガに龍岡さんが「新しい店長」として登場してきたわけです。ちなみに、ご本人も振り返っているように、最初は戦術解説以外の話もよく出てきていました。初期の映画の雑談や、AKBの握手会に行った記事などはなかなか印象深いです(笑)

「店長ブログ」おすすめ記事

こうした経緯でサッカー店長のブログ読者となった私ですが、ブログ愛を語るとキリがないので、10年以上の読者歴を通じて、特に面白いと感じた記事を3本おすすめさせていただきます。いずれも知的興奮を覚えるのはもちろんのこと、今回の書籍で取り扱ったテーマ・監督の「元ネタ」にもなっています!本当におすすめです。面白いと感じた方は、より濃度の高まっている書籍もぜひお手に取ってみてください(もちろん、書籍→ブログの順番でも!)。

1:現代サッカーの最前線が丸わかり! チャンピオンズリーグ準決勝 リヴァプールvs.バルセロナ(2019年5月27日)

日本代表の南野拓実選手が現在所属するリヴァプールが、チャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグでバルセロナ相手に3点差をひっくり返した大逆転劇。最近(といっても2年前ですが……)の試合なので、覚えている方も多いのではないでしょうか。メッシとマネという対照的な「10番」は現代サッカーの象徴でもありますね。もちろんメッシが怪物であることは揺るがぬ事実ですが。ちなみに、この記事に出てくる「ビダルの身体の向き」の弊害は、つい先日行われたインテル対リヴァプールでも見ることができます。店長いわく、中田英寿や香川真司が世界で活躍できたのも「前を向く能力」にあるそうです(これができる選手は移籍金額の桁が1つ変わるかも、とか)。

2:興奮冷めやらぬ「伝説の試合」バルセロナvs.アスレティック・ビルバオ(2011年11月12日)

書籍でも取り上げた「伝説の試合」のマッチレビュー。当時、史上最高&最強と言われていたペップのバルセロナに対して、オールコートマンツーマンでぶつかったビエルサのビルバオ。サッカー店長の変態的なビエルサ愛が伝わってきます(笑)
先日リーズ・ユナイテッドの監督を離れることが発表されたビエルサですが、「ビエルサJAPAN」が生まれる日はいつか来るのでしょうか…?

※ビルバオがどのようなチームだったかは下記の記事に詳しいです。

3:日本代表への的確なツッコミ 日本代表vs.サウジアラビア代表(2022年2月3日)

書籍では主に欧州サッカーを扱っていますが、ブログでは日本代表のレビューも書かれています。ただし店長の森安JAPANへの評価は……まあ、試合内容を鑑みるに当然とも言えるでしょう(苦笑) 人によっては「辛口」と感じるかもしれませんが、論理的な内容なので納得できると思います。

最後に

編集後記と題しておきながら脱線ばかりで申し訳ございません。本書の編集は一人のサッカーファンとして実に楽しく、こんな仕事ばかりだったらどんなに幸せだろうかと感じる日々でした。上に紹介した記事以外にも、「間受け」「走れるファンタジスタ」「5レーン攻略法」など、ブログでの閃きをより精緻に詰めてもらい、書籍にまとめていただきました。

「この監督にやたら厳しくないですか?」「この選手の評価が高いのはどうしてですか?」といった疑問を一読者として突っ込み、それがブラッシュアップされた原稿となって返ってくる。ブログ読者だった頃の自分にこんな日が来ると言っても信じてくれないと思います。本当に編集者冥利に尽きる一冊です。

また、実は盛り込んでいただきたい新しい戦術の概念もまだあったのですが、言語化・熟成されるのを待つために泣く泣く見送ったものもあります。本書が増刷を重ねたら第二弾もきっと出せるはずですので、その際に読めることを期待しています!

というわけで大好評の『サッカー店長の戦術入門』、めちゃくちゃ面白いのでぜひご一読ください!


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