新型コロナ、HPV、インフル、帯状疱疹……いまこそ『ワクチンを学び直す』時です | 岩田健太郎
こんにちは、岩田健太郎です。
本書のテーマはワクチンです。
これまで、ぼくはワクチン・予防接種をテーマにした新書を2冊上梓(じょうし)しました。
1冊目は『予防接種は「効く」のか? ワクチン嫌いを考える』(光文社新書、2010年)。
この本では、
日本の予防接種制度の歴史を俯瞰(ふかん)し、
・なぜ日本が「ワクチン後進国」になったのか、
・なにが日本の予防接種制度を後退させ、
・厚生労働省はいかに予防接種に後ろ向きで非科学的なのか、
・日本の反ワクチン的な態度をとる人たちは、どのような主張をしているのか、
などを論じました。
そして、そもそも予防接種が「効く」とはどういうことか、「有効性」とはそもそもどういう意味か、ということも解説しました。
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2冊目は『ワクチンは怖くない』(光文社新書、2017年)です。
この本では、「副作用」が怖いとされるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは本当に危険なワクチンなのかを検証しました。
そして今後のワクチンや予防接種制度はどうあるべきか、という将来像についても論じました。
つまり、この本ではワクチンにまつわる副作用問題の「論じ方」を論じました。
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ワクチンを論じる上で最も重要な2つのポイントは「有効性」と「安全性」ですから、この2つの問題をこれら2冊の新書で検討したわけです。
それを踏まえて執筆したのが本書『ワクチンを学び直す』です。
本書では、ワクチン接種の全体像をより包括的に論じ、それぞれのワクチンがどのように活用されるのかを説明します。
一般の方向けの本で包括的にワクチンを説明したものは稀有(けう)ですから、お役に立てることを希望しています。
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『ワクチンを学び直す』 目次
はじめに
Ⅰ ワクチンと新型コロナワクチンを学び直す
(1)ワクチンと日本
日本のワクチン政策の2つの前進――HPVワクチンと新型コロナワクチン
日本でCOVID―19の被害が小さかった理由
「日本人はワクチンが嫌い」は本当か?
ワクチン原理主義ではない――結果をもたらすならなんでもよい
(2)予防接種の歴史
天然痘の予防のために行なわれていた「人痘」
人痘をイギリスに持ち込んだ外交官夫人
ジェンナーより前に「予防接種」をしていた畜産家
マリア・テレジアも人痘ワクチンを推進
続々と開発されたワクチン
(3)ワクチンが効果を発揮する理由
Bリンパ球とTリンパ球
ヘルパーT細胞とキラーT細胞
細胞性免疫と液性免疫――ワクチンの4つの予防効果との関係
(4)ワクチンの種類
生ワクチンと不活化ワクチン
筋肉内注射と皮下注射
ワクチンの分類について
生ワクチンは作るのが難しい
不活化ワクチンとアジュバント
他にも種類はいろいろある――大事なのは生か、生じゃないか
同時接種と接種間隔の新しい考え方
(5)新型コロナワクチン、最新情報
mRNAワクチンとは
mRNAワクチンのメリット
自然免疫と獲得免疫
ワクチンのリスクと、感染のリスク
mRNAワクチンの効果
大事なのは重症化・死亡を防ぐこと
効果を知るには「比較すること」が必要
ブースター接種の効果
新しい変異株に対応したワクチンの効果
mRNAワクチンの効果のまとめ
mRNA以外の新型コロナワクチン
ワクチンの価値は、ウイルスの病原性や接種対象者により変化する
新型コロナワクチンの安全性の評価について
「ワクチン接種によるリスク」の誤解
Ⅱ 予防接種制度を学び直す
(1)定期接種と任意接種
定期接種の分類(A類、B類)の無意味
定期接種の変遷
任意接種にする意味が分からない
小児の予防接種
(2)各種ワクチン
Hibワクチン、肺炎球菌ワクチン
インフルエンザワクチン
インフルエンザの生ワクチン――鼻に噴霧する「フルミスト
多糖体ワクチンである肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチンの接種スケジュール
HPVワクチン
B型肝炎ワクチン
グローバルなワクチン接種でB型肝炎は激減
A型肝炎ワクチン
ジフテリアワクチン
破傷風ワクチン
百日咳ワクチン――全細胞型から無細胞へ
ポリオワクチン
日本でのポリオ流行と対策――成功とその後の失敗の歴史
麻疹ワクチン
風疹ワクチン
ムンプス(おたふく風邪)ワクチン
水痘/帯状疱疹ワクチン
日本脳炎ワクチン――海外ではいまだに苦しむ人が多い病気
成人にもキャッチアップ制度を
髄膜炎菌ワクチン
狂犬病ワクチン――現在も治療法がなく、ほぼ死亡率100%
多様な接種方法――曝露後予防もあり
BCGワクチン――役に立っているのか?
我が家ではBCG接種をさせていない
ロタウイルスワクチン
Ⅲ 多様なケースとワクチン
脾臓のない方の予防接種
妊娠とワクチン
固形臓器移植とワクチン
造血幹細胞移植とワクチン
医療従事者とワクチン
海外渡航者とワクチン
ダニ媒介性脳炎(TBE)ワクチン
腸チフスワクチン
若者の百日咳ワクチン
コレラワクチン
デングワクチン
マラリアワクチン
黄熱ワクチン
軍隊用のワクチン
◆ライム病ワクチン/◆ワイル病ワクチン/
◆炭疽菌ワクチン/◆天然痘・サル痘(Mpox)ワクチン/
◆アルゼンチン出血熱ワクチン/◆エボラウイルス感染症ワクチン/
◆ボツリヌス症ワクチン/◆チクングニア熱ワクチン/
◆東部ウマ脳炎ワクチン/◆ペストワクチン/◆野兎病ワクチン
Ⅳ ワクチンの未来
安全性と簡便さの追求
制度上の問題
ワクチン開発と、臨床研究の遅れ
時代遅れのシステムからの脱却を
おわりに
【引用文献】
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著者紹介
岩田健太郎(いわたけんたろう)
1971年島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学。神戸大学都市安全研究センター感染症リスク・コミュニケーション研究分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。『予防接種は「効く」のか?』『ワクチンは怖くない』『「感染症パニック」を防げ!』『丁寧に考える新型コロナ』『99・9%が誤用の抗生物質』『実践 健康食』『ぼくが見つけたいじめを克服する方法』『1秒もムダに生きない』(以上、光文社新書)、『新型コロナウイルスの真実』(ベスト新書)、『絵でわかる感染症 with もやしもん』(講談社)など著書多数。
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