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ドムドム・パーティー。|パリッコの「つつまし酒」#61

人生は辛い。未来への不安は消えない。世の中って甘くない。けれども、そんな日々の中にだって「幸せ」は存在する。
いつでもどこでも、美味しいお酒とつまみがあればいい――。
混迷極まる令和の飲酒シーンに、颯爽と登場した酒場ライター・パリッコが、「お酒にまつわる、自分だけの、つつましくも幸せな時間」について丹念に紡いだエッセイ、noteで再始動! 
そろそろ飲みたくなる17時の更新です。

東京23区内唯一の「ドムドムハンバーガー」

ドムドムハンバーガー」をご存じでしょうか?
1970年に東京町田にオープンした日本最古のハンバーガーチェーンで、ピーク時には400店近くもあったというから、ある年齢以上の方々は懐かしく感じる名前かもしれません。が、現在の店舗数はわずか29。東京23区内には、なんとたった1店舗「マルエツ大泉学園店」を残すのみなんだそう。……ん? マルエツ大泉学園店? その貴重なドムドム、うちからそう遠くない場所にあるじゃん!
 と、わざとらしい寸劇から始めてしまいましたが、今住んでいる石神井公園の隣で、僕の実家がある大泉学園に、数少ないドムドムハンバーガーの生き残り店舗があることは、以前から知っていました。ただ、お店の所在地が「大泉学園町」といって、駅から割と離れたエリア。かつ、実家のある方面とは違うので、子供の頃よく行ったとかそういう記憶はありません。数年前に一度、妻となんとなく行ってみたことがあるくらい。そのときも、そんなにお腹が空いていたわけではなく、オーソドックスなハンバーガーを1個食べただけだったこともあり、あんまり強く印象には残っていませんでした。
 が、熱狂的なファンも多いうえ、全国のそういう方たちにしてみれば、ものすごく恵まれた環境に自分がいることは確か。「久々に行ってみっか」、そういう気持ちになってしまったんですよね。ふと。

ドムドムに浮かれ買いすぎる

 行く前に、ホームページでメニューをチェックします。オーソドックスな「ハンバーガー」「チーズバーガー」「てりやきバーガー」なんかに混じって、「ザクザクかき揚げバーガー」とか「お好み焼きバーガー」とか「手作り厚焼きたまごバーガー」なんていう攻めたメニューがちらほらと。これはひととおり味わってみたいぞ。サイドメニューにも「ポテトフライ」や「チキンナゲット」に続き、「バターコーン」や「ごぼうスティック」など、チェーン居酒屋の定番商品みたいなのが載ってて気になる。さらになごんだのが「かりんとう饅頭」。えぇ、知ってますよ。外側がかりかりと香ばしくて美味しい、あの和菓子ですよね。知ってるけど、「きみ、迷子になっちゃったの? おうちどこ?」感が半端ない。いいなぁ、この自由さ。
 ではでは、23区内最後のドムドムハンバーガーへ、自転車でゴー!

 到着したドムドムは、大きめのスーパーマーケットの1階にテナントとしてちょこんと入っている存在感と、失礼ながら色あせぎみな看板のせいで、ものすごくノスタルジックな雰囲気。外壁のいちばん目立つ位置には、「おうちでドムドムセット」なるポスターが貼られています。選べるハンバーガー3点、ポテトフライMサイズ3点、チキンナゲット10ピース、チーズポテト10ピースで1500円という、かなりお得そうな内容。どうやら、テイクアウト全盛のこのご時世ならではの期間限定品のようですね。が、今日は攻めたメニューをあれこれ試してみたい。初志貫徹で、すべて単品で注文。あきらかに浮かれていたようで、税込合計が2430円と、割ととんでもない金額になってしまいました。

今後は月一開催の方針で

 ハンバーガーが冷めないよう大急ぎで家に帰ったら、さっそくドムドム・パーティーを始めましょう! 今日のラインナップは以下です。

・ビッグドム トマト&チーズ
・ザクザクかき揚げバーガー
・お好み焼きバーガー
・手作り厚焼きたまごバーガー
・シャカリポ のり塩
・ごぼうスティック
・バターコーン

 気になるかりんとう饅頭に関しては、これらをつまみにお酒を飲みたい今回は、購入見送りとなりました。

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ひとつひとつにドムドムとした重量感あり

 袋から取りだす時点ですでに気がついたんですが、ドムドムのハンバーガー、1個1個がかなりでかいですね。日本のオーソドックスなバーガーチェーンのものと比べると、アメリカンな印象。すべてのハンバーガーを包丁で4等分に切り分け、家族でシェアしつつ食べていきます。お酒は気分的に、コークハイを合わせてみることに。

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レッツ、ドムパ!

 まずは「ビッグドム トマト&チーズ」から。パティが2枚入る、マックでいうところの「ビッグマック」みたいな商品なのかな。ガンダムのモビルスーツで出てきそうなネーミングでもありますね。これにおもむろにかぶりつき、かなりの衝撃を受けてしまいましたよ。シンプルに、うまい! まず、肉にビーフ感がしっかりとある。そこに、シャキシャキのレタスをはじめとした、玉ネギ、トマトなどの野菜が、ものすごいジューシー感をプラスしている。チーズもピクルスもはっきりと主張がある。パンがふかふか。単品で450円はちょっとお高めかと思いきや、巷の1000円前後の高級バーガーとも張りあえる美味しさだと感じました。ドムドム、お前、すごいやつだったんだな! コークハイとの相性? 説明不要でしょう。

 続いてサイドメニューもいってみます。「シャカリポ」は、フレーバーの粉を袋に入れてシャカシャカと振るタイプのポテトフライ。意外だったのが、注文を待っている時に厨房からシャカシャカと音が聞こえたので、もしや? と思ってたら、店員さんがあらかじめシャカシャカしてくれるものだったこと。本音を言うと、まずはプレーンの味を確認してから、自分でシャカシャカしたかった。頼めばそのようにもできるのかな? とはいえ、強めの塩気と、ポテチを思わせる海苔の風味で、酒のつまみにはばっちりです。3歳にはちょっと味が濃いかな……と心配しつつ、マクドナルドのことを「ポテトナルド」と間違えて覚えてしまっているほどポテト好きの娘も、ご満悦で食べています。
「ごぼうスティック」は、僕からしたらまさに居酒屋のおつまみ。「バターコーン」の素材本来の甘みをいかした仕上がりもいい感じです。

 いよいよ変わり種バーガーゾーンに突入していきましょう。いちばん気になる「ザクザクかき揚げバーガー」、これ、信じられないことに、ビッグなかき揚げだけじゃなく、その下にパティも挟まっているという、言葉は悪いけどなかなかのバカバーガー。ザクザク食感のかき揚げは和風でありながらどこかオニオンフライを思わせもするようで違和感なし。その強力さが若干パティの存在感を薄くはしていますが、パンチのある味で、はい。大好きです。
「お好み焼きバーガー」、潔いまでの炭水化物コンビ。「お好み焼きをおかずにご飯を食べる」の亜種ともいえるか。このお好み焼きが、これまたきちんと美味しく、バンズの間から抜き出してそのまま食べてみたいほど。とはいえ、ハンバーガーにしてある意味もちゃんと感じる全体のマッチっぷりです。
「手作り厚焼きたまごバーガー」がすごい。ドムドム通たちの間では人気のバーガーなんだそうですが、信じられないくらいフワッフワでダシの効いた厚焼き玉子が、これだけはその他の具の力も借りず、単にパンに挟まっている。アクセントはカラシマヨのみ。なんていうんでしょうか。これ、そもそもハンバーガーじゃないよね。むしろ京都風の玉子サンドイッチに近い。ただポイントはまだ熱々なことで、口の中に優しい~世界が広がっていきます。卵好きの娘はこちらにもご満悦。これで税込300円か……。可能な方にはぜひ一度味わってほしい美味しさでした。

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はたしてこれはハンバーガーなのでしょうか

 さて、サイドメニューをちょこちょこつまみつつ、バーガー4種を1/4カットずつ、つまり、都合1個分のハンバーガーを食べたところで、完全に満腹になってしまいました。残りはラップをしておいて、明日の朝ごはんにでもしようかな。

 始めてきちんと向き合ってみたドムドムハンバーガーは、僕のバーガーチェーン観を変えてしまうほどにチャレンジングで、何より美味しかったです。そして満足感とパンチのある味がお酒のつまみにもぴったり! 次はこの半分くらいの量で良さそうですけれども、月一くらいで開催していきたいパーティーとなりました。
 最後に臨むことはたったひとつ。23区内最後のドムドム、どうか末長く営業を続けてくれますように。

パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。著書に『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)など。Twitter @paricco


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