2020年シーズンの巨人軍通信簿(投手編)
熱烈な巨人ファンで、多くの野球マニアや選手たちからフォローされるゴジキさん(@godziki_55)が巨人軍を分析。
今回は、2020年シーズンのジャイアンツ選手たちへの通信簿を送ります。期待通りのパフォーマンスを残した選手もいれば、課題の残った選手も。まずは投手編からです。
開幕13連勝を飾ったエース菅野智之と次期エース候補戸郷翔征
今年の菅野は、2017年から2018年のような球威や打者を圧倒する投球スタイルでこそなかったものの、前回登板時の課題や試合序盤のほころびを上手く修正し、試合の流れを作る「ゲームメイク力」が、今までのキャリアの中でも飛び抜けていた。
さらに、今シーズンはスラッターとスライダーを分けた上で球種ごとの配分も変化させており、より一層視座の高い投球ができていたように思う。そうしたことが、開幕13連勝をはじめとした好成績に繋がったのだろう。
また戸郷翔征も、昨年の課題だったストレートの質が向上し、規定投球回数にこそ未到達ながらも、防御率は2.76を記録した。勝ち星も二桁勝利間近の9つを2年目ながらあげており、来シーズンもローテーションの軸としての期待が高まる。当初は高卒2年目のため、球数制限を設けることと、チーム状況に余裕が生まれた際は登板間隔も空けていくことを推奨していたが、菅野を除いた先発陣では彼以上の投手がいない状況となった。
球審の判定によってランナーを出した際に、多少崩れやすい部分は戸郷の課題だろう。良くも悪くも「若さ」が出ているため、そうしたネガティブな局面でギアを引き上げられるかが、今後の更なる飛躍のポイントになっていくだろう。
シーズン中盤までトップクラスの枚数を誇ったブルペン陣
今シーズン、ブルペン陣の最大の功労者は中川皓太だ。昨シーズンから勝ちパターンの一角として台頭したが、今シーズンはそれ以上のパフォーマンスを見せた。昨シーズンと比較してスライダーやツーシーム等がクオリティアップ。懸念材料だった耐久性はもちろんのこと、メンタリティも向上しており、防御率0点台という圧倒的な成績を残している。実力的にはすでに日本代表クラスと言っていい。今後は、原巨人の第二次政権時にブルペン陣を支えていた山口鉄也のような、球界を代表する左のセットアッパーになっていくことに期待したい。
ベテランの大竹寛も、チームを大きく支えた。入団当初は先発ローテーションの一角だったが、移籍2年目以降はなかなか思うようなパフォーマンスを残せず、昨シーズンは戦力外候補とまでささやかれていた。しかし、そこから中継ぎの一角として復活し、プレミア12の日本代表にまで選出された。
今年のキャンプで怪我をしたためシーズン序盤は出遅れたものの、ストライクゾーンの両端を上手く活かし、ピンチの場面では得意のシュートで併殺打を量産する投球術は今シーズンも健在だった。中継ぎとして輝きを取り戻した大竹だが、広島時代にクローザーを任された時期があったので、その経験も活かされているのではないだろうか。
今シーズンの巨人軍はこのように盤石なブルペン陣を誇ったが、他にも急成長した若手と新戦力の2人の変速左腕投手の活躍が著しかった。
まずは4年目の大江竜聖だ。以前よりも腕を下げた投球フォームに変えた結果、投球の幅が広がり、一軍に定着するレベルになった。また、一軍昇格当初は大差の試合での登板や回跨ぎなどが主な役割だったが、実績を積み重ねていき、接戦の試合でも起用されるまで信頼度が高まった。今シーズンに限らず、来シーズン以降も投手陣の軸となることが期待される。
また、楽天からトレードで入団した高梨雄平も豊富なブルペン陣を支えてる1人だ。楽天時代から安定した投球で、3年連続40登板以上を記録し、2018年には日米野球の日本代表にも招集された実力者である。巨人軍に入団後は、ワンポイントから勝ちパターンまで任され、期待通りの投球で一時期コマ不足だったブルペン陣を支えた。さらに、13連戦ではクローザーを任されるなど対応力の高さも見せた。
各選手の評価(20イニング以上+a)
菅野智之:評価S。2017年から2018年のような圧倒さはなかったが、開幕13連勝の復活劇は見事だった。
戸郷翔征:評価A+。高卒2年目ながらもローテーションを担う活躍を見せた。次期エースの大本命だろう。
中川皓太:評価A+。離脱までは、かつての山口鉄也のように、圧倒的な実力で抑え込んでいた。
大竹寛:評価A。左の中川、右の大竹は中継ぎ陣で抜けていた。両端を活かした投球術は健在であり、来季も中継ぎ陣を引っ張っていくべき存在だ。
高梨雄平:評価A。加入後は、ワンポイントからリリーフまで器用に熟した。来季以降も期待は大きい。
鍵谷陽平:評価A。各場面で登板し、シーズン通してブルペン陣を支えた。来季も、数少ない右の中継ぎとして期待。
大江竜聖:評価A−。台頭した若手の1人。タフさは充分なレベルのため、来季は投げる場面を確立させていきたい。
エンジェル・サンチェス:評価A−。離脱はあったものの、8勝を挙げるなどの活躍を見せた。
畠世周:評価B+。シーズン終盤にかけて調子を上げていった。キャリアを見てもそろそろシーズンを通した活躍をしてほしいところ。
今村信貴:評価B。夏場の活躍で優勝に導き、日本シリーズでも登板した。波が激しいことが今後の課題。
C.C.メルセデス:評価B−。複数回の離脱は非常に痛手だった。来季はローテーションをシーズン通して、担ってほしい選手だ。
チアゴ・ビエイラ:評価B−。シーズン終盤に、かけて調子を上げた。来季も回跨ぎなどで穴を埋める形に期待したい。
田中豊樹:評価C+。シーズン途中に、育成から支配下に上がり各場面で登板した。来季は、与えられたポジションでの活躍に期待だ。
直江大輔:評価C+。怪我で離脱したものの、一軍で登板した投球内容を見ると、来季以降は非常に期待できる投手。
横川凱:評価C。左の先発として期待される若手。球速UPが、来季以降の鍵になっていくだろう。
高木京介:評価C。シーズン序盤にフル回転の活躍を見せた。怪我を完治させての復活が待たれる。
堀岡隼人:評価C−。打ち込まれる場面は多かったものの、素材としてはいいものがあるため、来季以降に期待できる投手。
高橋優貴:評価C−。怪我で出遅れていた。来季はシーズンの頭から一軍で投げられることを期待していきたい。
来シーズンへの課題と展望
今シーズンの巨人軍は、ブルペン陣の厚さで勝ち星を拾った試合が多い。しかし、開幕当初から一貫して言っている懸念事項がある。勝ちパターンや接戦試合に登板する「A級投手」と、大差の展開で投入する投手の起用法だ。
高梨や大江といった選手を大差のついた試合でも起用していることによって、一時的に彼らの状態が落ちてしまったこともある。各点差、各場面で投手起用をより丁寧にマネジメントし、「勝ち方」を意識していくことが、来シーズンに向けた鍵になっていくだろう。
具体的には、ブルペン陣で頭ひとつ抜けている大竹と中川を7回8回に置き、抑えにデラロサを固定し、勝ちパターンを確立することが求められる。とはいえずっと固定するのではなく、原辰徳第二次政権で「スコット鉄太朗」の山口を大事な試合で最終回で起用したように、今後も大事な試合では中川をクローザーにするといった柔軟な起用法も時には必要である。