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【69位】ダフト・パンクの1曲―アニメ魂のロボ声で、もう一度、童心の恒星間旅行を

「ワン・モア・タイム」ダフト・パンク(2000年11月/Virgin/英)

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Genre: French House
One More Time - Daft Punk (Nov. 00) Virgin, UK
(Thomas Bangalter • Guy-Manuel de Homem-Christo • Anthony Moore) Produced by Daft Punk
(RS 307 / NME 52) 194 + 449 = 643

21世紀初頭のポップ音楽界に起きた地殻変動の一端を知りたければ、この1曲は外せない。突如として、フランス人が大活躍を始めたのだ。「フェット」という家飲み会でも踊りまくるのがフランス人(実話)だから、ダンス音楽に本気出したらすごかった。一躍「フレンチ・ハウス」が時代の先端に立って――そして「クラブの外でも」流行する一大ポピュラー・ヒットとなったのが、多幸感あふれるこのナンバーだった。

パリのエレクトロ音楽デュオ、ダフト・パンクがこの曲を制作した。知る人ぞ知るフレンチ・ディスコ・シンガー、エディー・ジョンズの「モア・スペル・オン・ユー」(79年)をサンプリングして細かく組み替え、そこにアメリカ人のDJ/シンガーであるロマンソニーの歌を乗せた。ただしその声は、いわゆる「ロボ声」にした。音程補正ソフトウェアである「オートチューン」をエフェクターのように使ったのだが、この曲のヒットのあと、近い手法で「声をいじる」曲が雨後の筍のように増えた。まさに流行の先駆けとして当曲は大ヒット。ビルボードHOT100は61位ながら、米英のダンス・シングル・チャートはもちろん1位。全英は2位。フランスとカナダで1位を奪取。かくしてダフト・パンクの名前と顔を全世界に知らしめることになった。

といっても、ご存じのとおり、彼らの素顔はつねにヘルメットの奥に隠されている。スタジオの事故でアンドロイド化したからだ、という設定で、日本の特撮番組(宇宙刑事ギャバンとか)めいた被りモノを2人は装着している。さらにこの曲のMVでは日本の漫画家・松本零士を起用。『キャプテン・ハーロック』のアニメが大好きだったからだ。

という彼らの「童心忘れなさ」が、この曲の愛らしさにつながっている。歌詞はたぶん、英語を知って三日目の人が三回聴く前に暗記できるほどの語彙で、ただただ「歓び」を歌う。音楽を聴くこと、踊ることの歓びをお祝いしよう。それを「もう一度、もう一度」と、幾度でも繰り返す……この無垢かつ情熱的な「押しの強さ」が、20世紀型ポップ音楽が追いつめられていた袋小路に風穴を開けた。この地点から、10年代における「ユーロが主役」のEDM大騒動、新時代のディスコ・ブームへとつながっていく。

彼らと松本零士との共同作業は続き、03年の映画『インターステラ5555』に結実する。60分超の同作は、この曲も収録した第2作アルバム『ディスカバリー』(01年)の公式映像作品という位置づけで、同年のカンヌ映画祭監督週間で特別上映された。

(次回は68位、お楽しみに! 毎週火曜・金曜更新予定です)

※凡例:
●タイトル表記は、曲名、アーティスト名の順。括弧内は、オリジナル・シングル盤の発表年月、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●ソングライター名を英文の括弧内に、そのあとにプロデューサー名を記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
川崎大助(かわさきだいすけ)
1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌「ロッキング・オン」にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌「米国音楽」を創刊。執筆のほか、編集やデザイン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌「インザシティ」に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)、『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社新書)、訳書に『フレディ・マーキュリー 写真のなかの人生 ~The Great Pretender』(光文社)がある。
Twitterは@dsk_kawasaki


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