手作りマヨネーズでていねいな晩酌|パリッコの「つつまし酒」#118
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手作りマヨネーズでていねいな晩酌|パリッコの「つつまし酒」#118

ていねいな暮らしにあこがれて

 さて、またしばらくの間は、ひたすら家飲み向上の可能性を追求してゆくシリーズに突入しそうな本連載。日々の生活のなかで思い立ったことをどんどん試していこいうと思います。
 ところで「ていねいな暮らし」という言葉がありますね。朝起きたらまず庭の草花たちに水をやり、ついでに家庭菜園で食べごろの野菜を収穫。きゅうりとナスはぬか漬けにしておこうかな。たっぷりのおかずと今朝採れたトマトのおみそ汁、雑穀米ごはんをよ〜く噛んで食べ終えたら、豆から挽いたコーヒーを入れてゆっくりと味わう。それは、私だけの大切な時間……。てな感じで、1日1日をしっかりていねいに暮らしていきたいよね。というような。
 しかし現実は、どこにそんな余裕があるんだと。朝は家族でバタバタと準備をし、子供は保育園に送り届けなきゃいけないし、差し迫った締め切りもあれこれあるし、そもそも昨日の酒が抜けきってなくて体が重だるいし、あ〜、もう。なんて、常になにかに追いたてられるような日々を送っている僕は、ついそういう話を聞くと「ケッ」なんて思ってしまう節があります。きっと時間の使いかたがヘタクソで、かついろんな作業の効率が悪いだけなんですけどね。
 ただやっぱり、そういう豊かな生活に憧れはある。ほんの“さわり”だけでもいいから、ていねいな暮らし気分を味わってみたい。なにかないかなぁ? あ、そうだ、「マヨネーズ」を手作りするなんてどうだろう!?

マヨネーズってこんな簡単に作れるんだ

 大好物なので冷蔵庫には常にストックのあるマヨネーズ。手作りもできると聞いたことがあります。買い物のついでにポイっとカゴにほうりこんでしまえばすむマヨネーズを、あえて手作りする。これはけっこうていねいと言えません?
 さっそくネットで検索してみると、料理家のコウケンテツさんのレシピが特に簡単そう。特に簡単そうなレシピを選ぶあたり、「どこがていねいなんだ!」とお叱りを受けそうではありますが、こちとらとり急ぎ気分を味わいたいだけっすからね。それに、コウケンテツさんなら間違いないし。
 詳細は各自調べてもらうとして、レシピはざっとこんな感じ。

・卵黄2個、塩小さじ1、酢大さじ2、サラダ油1カップをよく混ぜる

 以上! どうです? めちゃ簡単そうじゃないですか? マヨネーズって、混ぜるだけでできるんだ。火とか使わなくていーんだ。これなら、家にあるもので今すぐ作れるじゃん! というわけで、さっそく実践。

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作るぞ〜、マヨネーズ!

 材料は、家にあったなかからなるべく良さそうなものをと、卵かけご飯用に奮発して買ってあった「ヨード卵光」、宮古島の「雪塩」、ミツカンの「純米酢金封」、AJINOMOTOの「健康こめ油」を使用。
 手順としては、まずは油以外の材料を、もったりとするまで泡だて器でよく混ぜます。ステンレス製のボウルで作業を始めたところ、腕を動かすたびにガチャンガチャンとものすごい騒音が。そっこうでプラ製のボウルに変更しましたが、こんなことすらもやってみないと気づかないのがまた、日常生活のおもしろさですよね。
 しばらく混ぜていると、もったりというよりはしゃばしゃば、泡泡な感じにしかならないんだけど……もういいや! と、そこに油を加えてゆきます。
 で、ここがマヨネーズ作り最大のポイント。油はなるべくちょっとずつ、たらーっと加えては混ぜ、加えては混ぜをくり返すこと。そうすることで、その他の材料と油が均一に混ざった、いわゆる「乳化」状態になり、独特のとろみが生まれるらしいんですね。

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だんだんそれっぽくなってきた

 その他の材料に比べ圧倒的な油の量におののきつつ、最後まで混ぜきると、おー! これは完全にマヨネーズだ! 本当にこんな簡単にできてしまうとは。

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初めての自家製マヨネーズ

単純な料理がごちそうに

 長々と書いてきましたが、かかった手間はほんのちょっと。それでも、目の前に瓶入りの手作りマヨネーズがある光景はじゅうぶん悦に入れるもの。労力に対する満足度高いな、これは。
 さてさて、あとはマヨネーズ三昧の晩酌をしていくだけ。あー楽しみ!
 と、まずは少しだけ、マヨネーズをぺろっとそのまま舐めてみます。あ、これは市販品とはぜんぜん違うぞ。具体的に言うと、お酢の味、香りがダイレクトにくる。そりゃそうか、材料を考えたら味のメインはほぼお酢だもんな。市販品のよくまとまった味わいとは違う、どこかクセがあるんだけれどもそこが嬉しい美味しさ。
 では1品め、シンプルに「野菜スティック」からいきますか。

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キュウリ、ニンジン、ピーマン

 するとですね、これがびっくり! 単体で味わった時は先ほどのような感想でしたが、食材と合わさると相乗効果が生まれ、野菜本来の風味がものすごく引き立ちます。そして、マヨネーズのコクもしっかりと感じられる。ちょっとすごいかもしれないぞ、手作りマヨネーズ。

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これだけで大ごちそう

 お次は贅沢に、値引き品だったので買ってあったブラックタイガーで「ゆで海老」いっちゃいましょう。

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ゆでたての海老にどばっと

 うわー! これまた! 素材がいいってのも大きいんでしょうが、ものすごく海老の甘さが引き立つ。混ぜただけのマヨネーズ、ゆでただけの海老、それだけでこんなに美味しいなんて。もしかして今僕、「ていねい」の真理の一端に手が届きはじめてません?

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お次はじゃがいも

 続いて、じゃがいもをこふきいもにし、ここにもマヨネーズをとろ〜り。わああ、じゃがいもの、洗練と野暮ったさを兼ね備えたような、粉っぽいんだけどみずみずしいような、あの独特の美味しさ、そして豊かな栄養素が、体じゅうに染みわたるよう! なんだこのうまい料理は!

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翌日は……

 最後はちょっと手をかけて、たっぷりと作ったこふきいもの残り、刻んで炒めたベーコン、家にあったカシス風味のマスタード、それからマヨネーズを食品用ビニール袋に入れ、手で潰しながら混ぜて冷蔵庫で冷やしておいた「ポテトサラダ」。いわゆるちょっと小粋な居酒屋なんかで出てきそうな、おつまみ特化型を意識したポテサラを作っておきました。
 翌日、こいつをつまみにハイボールをやってみたんですが……はっきり言ってこれ、「店で出てきたら絶対にまた頼む」やつ! ふだんの僕の料理は「店で出てきたらクスッと笑っちゃう」やつが多いんですが、久々に自分の手料理にうっとりしてしまいましたよ。
 手作りマヨネーズで、ほんのりていねいな暮らし気分。おすすめです。

パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。
2020年9月には『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)という2冊の新刊が発売。『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。Twitter @paricco


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