【名言集】光文社新書の「#コトバのチカラ」 vol.37
許光俊『世界最高のピアニスト』
単に達者なピアノを弾けばいいのではない。立派な演奏をすればいいのでもない。ここに聴きに来ているのは、数十年間、ずっとケンプを聴いてきた人たちだった。ケンプの老いは彼らの老いでもあった。そこには演奏家と聴衆の深い結びつきがあった。
宮元健次『月と日本建築』
未完成の美である「あわれ」「侘び」そして「幽玄」を表現する上でなぜ月が重視されるのか。月は、毎日満ち欠けを繰り返している。満月はほんのわずかで、そのほとんどが欠けた状態にある。要するに月そのものが未完成の美であると言えないだろうか。
大竹聡『ひとりふらブラ散歩酒』
私はそのとき、いい歳して夜中も仕事をするくらいなら、オレは意地でも酒を飲んでやるんだかんなと心に決めた。それは実に爽やかな決心であった。
水無田気流『黒山もこもこ、抜けたら荒野』
隣人の顔すらほとんど見ることもないのに、タレントの顔は毎日のように見ている。それが私たちの「普通の生活」である。「遠くの隣人より近くの芸能人」とでも言うべきだろうか。この異常さを、私たちは正常と認識して生活を送っている。
辻芳樹『すごい! 日本の食の底力』
現在の食の世界の主人公たちは、ネットワークを駆使したコミュニケーション力に長けている。かつてのようにピラミッド型の組織をつくって、ヒエラルキーを決めながら上意下達の情報伝達をするのではなく、フラットなコミュニティをつくって、縦横無尽に情報をやりとりをする。
宮脇修一『造形集団 海洋堂の発想』
イタコのようにゴジラになりきり、部屋を歩き回ることがゴジラ造形師の条件です。モスゴジはこう、キンゴジはこうと、歩き方を再現できるぐらいでないとゴジラは作れません。
川村俊一『昆虫採集の魅惑』
ある日突然、人は虫を嫌いになる。気持ち悪いと誰かに思い込まされる。子供の頃、あんなに興味深く観察していた芋虫を、今度は気持ち悪いと思う。だから大人になっても、子供の心を忘れなかった人が「虫屋」になったのだと言う。