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定年後再雇用が生む「残念なシニア」は全9種!

光文社新書10月刊の「失敗しない定年延長 『残念なシニア』をつくらないために」(著・石黒太郎)が、11月5日の日経新聞の書評に掲載され、一部で話題となりました(中沢孝夫先生選/4つ星)。本書のなかでも、的確すぎてパンチ力がすごい「残念なシニア9分類」が、「ウチの会社にも超いる! ホントになんとかしてほしい!」という若手からの恨み節や、「身につまされすぎてツライ……」というシニア当事者のつぶやき等、さまざまな感想を呼びました。そこで、今回は同書第1章より、「残念なシニアの分類」についての箇所を、以下に抜粋掲載いたします。

「残念なシニア」の3大系統
「迷惑系」「勘違い系」「無力系」

一言で残念なシニアと言ってもその種類は様々です。大きくは「迷惑系」「勘違い系」「無力系」の3系統に分類され、下の図表の通り、それぞれの系統でいくつかのタイプに類型化することができます。
この類型に基づき、残念なシニアについてイメージを確認していきましょう。それぞれのタイプについて簡単に説明しますので、読者の会社に該当するシニアがいるかどうか、実在の人物を思い浮かべてみてください。

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図表:『失敗しない定年延長 「残念なシニア」をつくらないために』(光文社新書)より

A 迷惑系の残念なシニア


迷惑系の特徴は、そのシニアが動けば動くほど周囲の同僚にとって余計な仕事が増えてしまう点にあります。

その1つ目、A―1の時間泥棒シニアは、細かな実務を独力で担うことができないシニアを指します。特にPCやICT機器の操作を苦手とする場合が多く、操作方法を何度教えても同僚に助けを求め、周囲の時間を奪います。また、話が長いことも多く、しかも同じ話を何度もするため、職場の同僚はうんざりしている傾向にあります。新型コロナウイルスの感染拡大防止のために多くの企業でテレワークが導入されましたが、時間泥棒シニアはテレワーク環境下において満足に仕事をすることすらままなりません。


2つ目のA―2騒音シニアは、シンプルに声の音量が非常に大きいシニアを意味します。加齢に伴って耳が遠くなってきた方にありがちですが、声の大きさが周囲にとって煩わしく、同僚の集中力を削いでしまいます。また、シニアはEメールやビジネスチャットツールなどでのやり取りよりも電話による会話を好む傾向にあります。相手や周囲の都合を考えず、ところかまわず電話をし、しかも大きな声で話すため、職場で騒音をまき散らす結果につながります。


迷惑系の最後、A―3は暴走シニアです。会社で失うものが何もなく、怖いものなしの状態をいいことに、やりたい放題するシニアを指します。このタイプに責任感の欠如が加わってしまうと、その尻拭いをしなければならない周囲の関係者はたまったものではありません。

以上が迷惑系の残念なシニアでした。皆さんの会社にも当てはまる人がいたのではないでしょうか。特にA―1の時間泥棒シニアはかなりの確率で存在していると想定されます。しかも本人には悪気がなかったりする(むしろPCやICT機器を操作できないことを誇りとしている)分、余計にやっかいです。

B 勘違い系の残念なシニア

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勘違い系の残念なシニアの特徴は、会社・組織・同僚などからの期待を都合よく自分勝手に解釈し、結果として期待に沿わない働きぶりを示すことにあります。

B―1の武勇伝シニアは、自らの昔の経験を美化し、あたかも武勇伝のように誇らしげに語り、過去の成功体験に固執するシニアです。もちろん、今でも通用する成功体験を適切な形で共有してもらえるのであれば、後進にとっても参考になります。しかし、事業を取り巻く環境が大きく変わり、昔のやり方が陳腐化しているにもかかわらず、「私が若かった頃は……」「今の若い人たちは……」と語ってしまうのが、残念な武勇伝シニアの残念たるゆえんです。

勘違い系の2つ目、B―2の先輩面シニアは、自分の上司が元部下や後輩であることをいいことに、偉ぶった態度を取るシニアです。自分より年齢が若い上司を遠くから「おーい、〇〇君」と呼びつけるのは序の口で、「私が部長だったら、こんなことはしない」など、現職の管理職を上から目線で批判する傾向にあります。
この先輩面シニアの存在について、「今の時代、若い上司が年上の部下を管理するのは当たり前」といった話を、現場のことが分かっていない人事部員から聞くことがあります。確かに、職場の上司と部下の年齢が逆転することが珍しい事象ではなくなった日本企業も多いことでしょう。しかし、シニア雇用における年下上司・年上部下の関係は生易しいものではありません。なぜならば、単に部下が年上というだけでなく、自分の元上司が部下になってしまうことが多いからです。極端に言えば、昨日まで自分に指示を出していた部長が、今日から実務を担うプレーヤーとして自分の部下になり、自分が元上司に指示を出さないといけない、そんな厄介な状況が現実のものとなります。そういった現場の生々しい実情を正しく認識しておかないと、定年延長の検討はうまくいきません。

B―3の毒吐きシニアは、60歳前に比べて給与が下がったことに文句を言い、仕事の手を抜き、それを悪いこととも思わずに開き直るシニアです。「給与が下がったのだから、給与分の仕事しかしない」という主張をしながら、実際には給与分の仕事すらできていないことがほとんどです。そのうえ、この毒吐きシニアは数も多いのです。彼らよりも給与水準の低い若手同僚にとっては、その存在自体がやる気を失わせる要因になってしまいます。
こういった勘違い系の残念なシニアに共通して言えるのは、口は出すが手は出さないという点です。プロジェクト会議などで、懸念・留意事項や取り組まなければならないこと、念のための確認項目を口頭で並べ立て、並べ立てるだけで自分は行動しないという傾向にあります。総じて、勘違い系の残念なシニアのスタンスは批評家的なため、職場の同僚にとって、一緒に働いていて気持ちの良い存在ではありません。

C 無力系の残念なシニア

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残念なシニアの3つ目の系統である無力系には、そもそも職務遂行に必要な知識や能力が足りない、または知識や能力があっても引き出せないという特徴があります。

まず、C―1のルーティンシニアは、就労年数は長いものの、誰でも担える簡単な業務しか経験しておらず、キャリアの核となるような職業的専門性を有していないタイプです。サポート的な事務職の社員コースを歩んできた人だけでなく、総合職であってもこれに当てはまる人材が日本企業では多々見受けられます。

C―2の暗黙知シニアは、本人に熟達した知識や能力があったとしても、それを言葉で表現できない、または表現しようとしないシニアです。本来、シニアには高度な技術・技能の次世代への伝承が期待されるのですが、暗黙知シニアの存在によって、その断絶が生じてしまう可能性があります。それどころか、言葉で表さないことを誇りにし、「背中を見て学べ」と若手に言い放つことすらある始末です。
最後はC―3の抜け殻シニアです。年齢を理由にチャレンジすることから逃げ、覇気がなく、与えられた職務だけをこなそうとします。A―1からC―2までのシニアは、うまく付き合うことでやる気や能力を引き出すことも可能ですが、C―3の抜け殻シニアはそれすら難しい状態になってしまっています。自分が担うべき職務の幅をなるべく狭くしようとするので、周囲の同僚がその矮小化分をカバーしなければなりません。
無力系の残念なシニアがいる職場においては、周囲がその存在を必要悪として受け入れてしまい、シニアが十分な役割を担っていないことに職場全体が見て見ぬふりをしてしまいがちです。そのため、このタイプのシニアは就業時間を目立たぬご隠居のように悠々自適に過ごし、時間を潰すためにネットサーフィンにいそしんだり、社内のあちこちを散歩して回ったりしています。

ここまで3系統/9タイプの残念なシニアを簡単に紹介しました。皆さんの企業にもこれらに当てはまるシニアがいるのではないでしょうか。このような残念なシニアが数多く生み出されている理由は様々ありますが、主たる理由はシニア本人ではなく会社側にあることを認識する必要があります。つまり、日本企業のシニアに対する処遇の実態が、残念なシニア創出の温床になっているのです。そのあたりを続いて確認していきましょう。
(引用終わり)

終わりに


当記事の読後に涙したあなたも、どうか安心してください。気鋭の人事コンサルタントである著者がこの類型を見出した意図は、シニアを揶揄することではもちろんなく、「残念なシニア」をつくらないためにどうするかを真剣に考えること。本書では、残念なシニアの生産理由と対処法を、60点以上もの図表を駆使して丁寧に解説しております。「残念なシニア」は、シニア自身のせいではなく、安易な定年後再雇用制度が生みだしているという衝撃の事実……。

続きはぜひ、本書でお読みください!(担当編集より)


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