見出し画像

巨人軍、セリーグ2連覇の違いはどこに? 2019・2020シーズンの比較分析

熱烈な巨人ファンで、多くの野球マニアや選手たちからフォローされるゴジキさん(@godziki_55)が巨人軍を徹底分析。
先日、リーグ2連覇を決めたジャイアンツ。昨年と今年の優勝にはどういった違いがあるのでしょうか?比べてみてもらいました。

2020年シーズン前半に見られた「終盤力」と得点の効率化

2020年シーズン序盤は、2019年のシーズン中盤から見られた終盤力の高さが随所に見られた。
開幕当初は坂本・丸が不調ながらも、終盤での得点力やリーグトップクラスの得点圏打率の高さをもって勝利を積み重ね、2014年を彷彿とさせる「試合巧者」ぶりを見せた。

それが顕著に現れた試合のひとつが7月19日のDeNA戦である。
巨人の先発は桜井俊貴でDeNAの先発は今永昇太だったが、DeNAは初回から桜井を攻め立てて1点を先制。
その後は桜井も粘りの投球を見せ、巨人はビハインドながらも2番手以降の強力な中継ぎ陣によって2対3の1点差で試合展開をコントロールする。

そして、9回に劇的な逆転劇が訪れる。1死から坂本勇人が内野安打で出塁し、代走の切り札である増田大輝を投入後、すかさず盗塁成功。ぜラス・ウィーラーが倒れて2死2塁の場面で丸佳浩が一、二塁間に打球を放ち、柴田竜拓が捕球するものの、増田は快速を飛ばしてホームに生還し追いつく。

さらに、岡本和真がライトスタンドにホームランを放り込み勝ち越した。この試合はまさに今シーズンの巨人軍に特有の「終盤力」が発揮されたと言える。不調だった坂本・丸・岡本のコアが要所で打ったことはもちろん、代走の切り札である増田も活きており、「大技」と「小技」がうまく合わさった試合だった。

投手陣の起用法とマネジメントの相違点

昨シーズンと今シーズンは、共に分厚いブルペン陣の起用が目立ったが、投手運用には相違点があった。

2019年は、中川皓太が抑えと中継ぎの両役を担いながら16試合連続無失点を含む、自己最多の67試合に登板し、4勝3敗 16S 17H 防御率2.37の成績を残した。また、巨人に移籍後は不甲斐ない成績だった大竹寛も、シーズン途中から中継ぎの一角として復活を遂げた。
加えて、昨シーズン途中から勝ちパターンに定着したのが、元々は先発ローテーションとしての実績もある澤村拓一と田口麗斗であった。両投手は何度もチームのピンチを凌ぎ、復活を遂げる活躍を見せた。そして、シーズン途中に加入したルビー・デラロサがなかなか固定できなかったクローザーを勤めた。

その他の投手では、戸根千明が貴重な左の中継ぎとしてキャリアハイとなる防御率1.99を記録し、随所でチームのピンチを救った。高木京介もシーズンを通してロングリリーフからワンポイントまで担って、自己最多の55試合に登板した。

こうした2019年シーズンの投手陣の運用力やマネジメント面を総括すると、元々は先発ローテーション級であった大竹、澤村、田口といった投手を中継ぎに回したことによって全体的な出力が上がり、勝ちパターンとして活躍したように思えた。また、夏場に調子が下降気味であった中川や高木ら救援陣のカバーもできた上でコマ不足を解消できたたシーズンだった。

一方、2020年を見てみると開幕当初は、中川と高木以外に左の救援投手がいなかった。さらに大竹は怪我の影響で出遅れ、澤村も不調。7月までは救援陣が確立されない状況だった。
しかし、大竹が復帰して、楽天から高梨雄大が加入したり大江竜聖が一軍に台頭してからは盤石な体制が整備された。一時期は、各投手の無失点記録も取り上げられるぐらいの圧倒的なブルペン陣が確立された。

だが、開幕当初から適材適所とは言い難い起用法に加え、余裕がある展開でも上記の主力投手を注ぎ込むなどした結果、9月後半から全体的に状態が下がり、チームとしてのピークは過ぎてしまった。

原因としては、おそらく今シーズン特有の「試合数短縮」を意識すぎた可能性もあるだろう。しかし、シーズン短縮されたといっても120試合もあるため、登板過多の運用方法になると息切れしてしまうリスクはあった。一時は昨シーズンよりもブルペン陣が整備されていたが、シーズン終盤になっていくにつれて、パフォーマンスの低下はもちろんのこと、怪我や故障による離脱も目立った。

これだけ豊富な救援投手の枚数を維持できるのであれば、来シーズンの課題は勝ちながら選手起用をマネジメントしていくことだろう。

シーズン終盤における戦い方は2019年の方が上

シーズン終盤の戦い方に関しては、率直に2019年の方が上だっただろう。選手のピーキングの持っていき方はもちろんだが、起用法に関しても昨年の方が上回っていた。

2019年のシーズン終盤は、たとえば9月10日のDeNA戦(先発はライアン・クック対今永昇太)で巧みな継投術と岡本の2ホーマーで勝利するなど、勝負強さが見られた。さらに、アレックス・ゲレーロが夏場に復帰してからは打線の火力も上がり、試合終盤の1発で勝利することもあった。

今年は大型連戦で圧倒的な勝率を誇り、他球団とゲーム差がついていたが、ピークに達していたのは9月中盤までである。優勝に近づくにつれて試合運びは雑になり、不必要な動きやミスが増えていった。

打順の起用法や投手力・ディフェンス力の低下はもちろんだが、代走の切り札である増田大輝も、塁上にいてプレッシャーを与えるなどの深い狙いではなく、出場したらとにかく走るスタンスで刺される場面も目立った。

細かい点でもあるが、このように戦い方が雑になってしまった状況から今後の日本シリーズや来シーズンに向けて、どれだけクオリティを戻せていけるかに注目したい。

光文社新書ではTwitterで毎日情報を発信しています。ぜひフォローしてみてください!