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【45位】プリンスの1曲―運命の申し子、燃え上がる空のもとで紫の涙にむせぶ

「パープル・レイン」プリンス(1984年9月/Warner Bros./米)

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Genre: Rock, Gospel, R&B
Purple Rain - Prince and the Revolution (Sep. 84) Warner Bros., US
(Prince) Produced by Prince and the Revolution
(RS 144 / NME 123) 357 + 378 = 735

プリンス、これで3つ目。ランクイン曲数でザ・ビートルズと並び首位に躍り出た。そんな記念すべき1曲が「これ」だというのも、なにやら運命的なものを感じざるを得ない。いやオカルトではない。なぜならば、それがプリンスというアーティストだから。

この曲は、同名のメガヒット・アルバム(『教養としてのロック名盤ベスト100』では、奇しくも、当曲の順位とまったく同じ45位!)に、クロージング・ナンバーとして収録された。同名映画のサントラとして設計されたこのアルバムは、ビルボード・アルバム・チャートの首位を24週独占。シングル・カットされた2曲(「ホエン・ダブズ・クライ」「レッツ・ゴー・クレイジー」)は、どちらもビルボードHOT100で1位――。

と、そんな「すさまじい」状況下でリリースされたのが当曲のシングルで、惜しくも1位とはならなかったが(最高位2位)、しかしプリンスを知る人で、この曲を知らない人はいない。彼のテーマ・ソングと言うべき、一世一代の、パワー・バラッドだ。

とにかくこの曲は「エモーショナル」なのだ。冒頭から最後まで、情緒的な「高まり」が、山脈のようにつらなっていく。最初のコーラスで「僕はただ、あの紫の雨に濡れているきみに会いたかったんだ」と歌われるのだが、それを言っている語り手のほうがすでにびしょ濡れの様子で、魂の底までさらけ出そうと、もがく。この情熱、たたみかける口調は、ゴスペル由来のものだ。そこに「天井を破って突き抜けていく」ロックの感覚が加わる。プリンス自身の演奏によるギター・ソロが、そのクライマックスだ。ジミ・ヘンドリックスの遠い遺伝子が、ここで、俗世のベタな「泣きのソウル」とくんずほぐれつする。もちろん彼一流の、統御され、デザインされた、あでやかな紫色の空間のなかで……。

この「紫」、プリンスを象徴するカラーの意味とは、彼に言わせると「空に血が流れている」状態なのだという。青に赤で、混ぜると紫になる。だからパープル・レインとは、世界の終焉と関係している。すなわち、聖書的スケールの終末のもとで、それでも人は人を愛するし、清い真心を決して失いはしないのだ――つまりこれこそが、プリンスが「音楽をつうじて」地上で実証しようとしたことの核心で、ゆえに当曲は、彼にとってきわめて重要なナンバーとなった。名前を捨てた一時期を除いて、ほとんどのライヴで演奏された。だから伝説的な名演多数(そもそも、初出時のトラックすら基本的にライヴ録音されていた)。プリンスの生前最後のライヴの最終曲も、これだった。

(次回は44位、お楽しみに! 毎週火曜・金曜更新予定です)

※凡例:
●タイトル表記は、曲名、アーティスト名の順。括弧内は、オリジナル・シングル盤の発表年月、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●ソングライター名を英文の括弧内に、そのあとにプロデューサー名を記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
川崎大助(かわさきだいすけ)
1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌「ロッキング・オン」にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌「米国音楽」を創刊。執筆のほか、編集やデザイン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌「インザシティ」に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)、『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社新書)、訳書に『フレディ・マーキュリー 写真のなかの人生 ~The Great Pretender』(光文社)がある。
Twitterは@dsk_kawasaki


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